桜の記憶

「あるって言っても俺個人のもんじゃないから。リビングに置いてあるパソコンでスカイプなんかやってたら、あの馬鹿姉貴に何言われるかわかったもんじゃねぇよ」


 ため息をついて、俺は肩を竦めた。


「ノートで良いからパソコン買えりゃ、無線飛ばして部屋で使えるんだけどな」


「無線?」


 どうやら、桜はパソコンに関する知識はまだ浅いらしい。


 意味が理解できずに首を傾げる悪魔へ、俺は無線と有線について簡単に説明をしてやった。


「あー……、はいはい。何となくわかった」


 ひょっとしたらまた直接頭を読まれるかと警戒もしたが、さすがに人前では自重したか、桜は終始話を素直に聞いていた。


「要はあれね。あたしの能力の原理と似てるってことなのね」


「は?」


 うんうんと一人首肯しながら告げた桜の言葉に、今度は俺が疑問符を浮かべる。


「お前の能力と似てるって、記憶操る能力とパソコン接続がどう共通するんだよ?」


 桜の能力に関しては、正直なところどういう理屈で作用しているのか自分の中では謎でしかなかった。

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