桜の記憶

 部屋の一つ一つは、ほとんど何も残されていないため中はがらんとしている。


 そのために、探し物をするにはそれほど手間がかかるわけでもなくスムーズに進んではいるのだが。


 これで最終的にどこにもありませんでしたとなったら、明日にでも悪友達を締め上げるしか選択肢はない。


(運が悪いのか何なのか……。そろそろ見つかってくれても良さそうなもんだけど)


 残り半分の通路を見つめ、一人肩を竦める。


 もう、さっさと終わらせてしまおう。


 そう思い再び足を動かしかけたときだった。


 どこか、すぐ近くの部屋からコトリッという僅かな物音が鳴ったのが耳に届いた。


(何だ……?)


 既に探索を済ませた方向ではない。


 まだ自分が調べていない部屋のどこか。


 それも、かなり近い。せいぜい、二つか三つ先の部屋からだ。


 まさか、誰かいるのだろうか。


 そんな不安が胸に広がる。


 懐中電灯の明かりを消して、しばらく気配を探ってみる。


 だが、一分ほど動くことなく立ち尽くしていても、特別何も異変は起こらない。

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