第2話

生身の男どもと待ち合わせをしているお店に着いた。

通されたテーブルにはまだ誰もいなかった。


「とりあえず、座って待ってよっか」


理沙子が右端の椅子に座った。


「え、わたしも端っこがいい」


「何言ってんの。あんたは主役なんだから、真ん中よ。もう一人私の友達が来るけど、彼氏持ちだから。安心して」


「え、ていうか、彼氏持ちの女子が合コンなんて来ていいの?彼氏に怒られないの?」


どうにかして帰れないかなあ、なんて思いながらわたしは理沙子に問いかけ続けた。

理沙子は察しているのか、きっぱりとした口調で言った。


「異文化交流会だから」


はい、わたしのターン終わり。

もう大人しく座って待つことしかできない。


待ち合わせ五分前になって理沙子の友人がやってきた。

息を切らせながら、「ごめーん」とゆるふわにカールされた髪を揺らして。

見るからに化粧もバッチリと決めている。

理沙子の説明によると、この友人の会社の同僚とその友人たちが来るらしい。

商社マンに銀行マン、そして、広告マンのメンツとのことだ。


わたしは興味がなさそうに友人の話を聞いていた。

実際に興味なんてなかった。


それよりも早く帰ってゲームがしたい。

最近ハマっているのがオトナ女子のための恋愛ゲームだ。

わたしの心の彼氏は、ジュンという名前の大手IT企業の社長だ。

ジュンはいつでも優しい。

昨日は残業して疲れたわたしのためにマッサージをしてくれて、お風呂上がりにはホットレモンティーを入れてくれた。

あー、早くジュンに会いたい。


「遅いわね」


理沙子の言葉で現実に戻ってきた。

時計を見ると、二十時十五分だった。約束の時間を十五分も過ぎている。


「さすがに心配だからわたし連絡してくるね」


そう言って友人は席を立った。


はあ、とわたしは大きくため息をついた。

これだから現実の男はダメんなだ。

まず、女の子を待たせることがアウト。

次に、遅刻したのに連絡を入れないなんて社会人としてアウト。

紳士たるもの、約束の十五分前には来て、女の子が急いできて「待った?」っていうセリフに「俺も今来たとこだよ」って返す一択しかない。

ジュンだったら、絶対にこんなことはあり得ない。



しばらくして戻ってきた友人の後ろには男が三人いた。

友人の同僚であり男性陣の取りまとめと思われる商社マンの男が「ごめん、待ったよね?」と訊いてきた。


え?バカなの?待ったに決まってるだろ。この男、何を涼しい顔して訊いとるんだ?!申し訳なさそうな顔を作っているのバレバレだからな!!!


心の中で毒づくわたしをよそに、理沙子が「全然平気だよ」なんて笑って返している。

わたしに対して圧をかけていたときの理沙子はどこにもいない。

男性陣は口先だけの「ごめんね」を言いながら席に着いた。

いざ目の前に若い男が来ると、キラキラと眩し過ぎて、わたしは直視することができなかった。

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