25話〜シロポメと黒い影
ここはシャインスプラウト城の医務室。そして、サラディアーナ全土を襲った揺れは、まだ続いていた。
そんな中、ブラットはベッドの上で身体中に、ものすごい量の汗をかきながら、もがき苦しんでいた。
フェリアはブラットの身体の上に覆い被さり、この揺れから守りながら、時折チラチラと顔を見ては様子を確認し、今なにが起きているのかを考えていた。
すると杖が更に黒い光を放ち、ブラットの辺りを旋回し始め、フェリアはそれを確認する為、そのままの体勢で顔を横にし、その杖に視線を向けた。
(これはいったい、ブラットの身に何が……)
フェリアは不安になり、そのままの体勢でブラットに思念を送ると、何が起きているのかを調べ始めた。
……そして、ここはブラットの意識世界。
その頃ブラットは、何故か黒い影に追われていて、そしてひたすら、その影から逃げていた。
その黒い影は、コウモリのような羽と、細くて長い尻尾が生えている。そしてその姿は、恐ろしい悪魔のような形をしていた。
“ちょっ!?待て!何であの影は、俺を追いかけてくるんだぁ〜”
“仕方ないのでは?あれは本来……”
ブラットの頭ぐらいの白いマシュマロに、獣耳と目と口がある、奇妙な物体?生き物?がそう言った。
そして、その白いマシュマロは眩い光を放ちながら、白い天使のような羽をはばたかせブラットの側で、ふわふわと飛んでいる。
“……てか何で俺は、アイツに追いかけられてるんだ?”
“はぁ?……ホントに呆れますねぇ。今までも、何度も何度も、君がここに来るたびに説明しているのですが”
“何度も?って、どういう事なんだ!それにここって?”
“ふぅ〜、仕方ありませんねぇ。今から改めて、御説明させて頂きますが、もう流石に疲れますので、今度は忘れないでください!
白いマシュマロがそう言うと、ブラットは軽く頷いた。
すると、白いマシュマロは説明を始めた。
ここはブラットの意識世界である事。今、追いかけて来ている者は、ブラットの本来の力である事。
そして、なぜ逃げているのかを白いマシュマロは話した。
“……って、事は自分の力に追いかけられ、俺はその力から逃げている。それも、その理由が……”
“そう、君が最初ここに来たとき、あの影が発した言葉とその姿を怖がり逃げた”
“それ以来、俺は何度かここに来ても、それを受け入れる事ができず逃げ続けてるってことか”
“ええ、そうなります。あっ!そうそう、ボクの名前も忘れているんでしたね”
白いマシュマロは、ふわふわとブラットの周りを一周すると、
“ボクは、シロポメと申します。本当はボクには名前はありませんでした。ですが、ブラット。最初にここに来たときに、君がボクにこの名前をくれました”
“俺が、お前に名前を?”
“ええ、詳しく話せば長くなりますが、君が最初にここに来たのは、つい最近の事です。そして、ボクとあの影が生まれたのも”
“つい最近って、それって……?”
“そうそれは、君があの杖を作り出した直後です。そしてあの杖は、ボクとあの影なのです”
そう言われたがブラットは、その意味がよく理解できないでいた。
“あの杖がシロポメとあの影って、意味が分からないんだけど?”
“ふぅ、そこまで話さなければならないとは”
そう言うとシロポメは、杖の事について説明を始めた。
あの杖はブラットの力の象徴である事。
そしてマリアンヌの水晶は元々、その者の天職と現職と更に能力について調べる事ができた為、そのように杖が変化し作られた。
その為この杖は、ブラットの現在の力を測る事ができ、元々持っている潜在能力を引き出す事が可能である。
普通に杖として使え、特に補助系魔法などに適しているが、威力が上がるわけではないので、攻撃には適さない。
シロポメは、ブラットの力により突然変異で作り出された。そしてシロポメの能力は、主に補助的な力をブラットにのみ与える事ができる。
現在、追いかけて来ている黒い影の方は、元々ブラットに備わっている能力の象徴である。
シロポメが話し終えると、ブラットは更に不思議に思い。
“今の話はなんとなくわかった。だけど、何で俺は、自分のその力から逃げてるんだ?”
“それは、ボクが聞きたいです!……”
そう言うとシロポメは、ブラットが最初ここに来て怯えながら黒い影と話をしていた事。
そして黒い影が発した言葉と、何らかの力に対しブラットは怯えその場から逃げ出した。
その後、この意識世界に二度来るも、前の記憶がなくシロポメに、黒い影になぜ自分が、追われているのかを聞いた。
そして、追われている理由を知りその後、黒い影に自分の事について聞くが、やはりその事をブラットは受け入れる事が出来なかった。
現在、まだ黒い影はブラットを追いかけている。
それを聞きブラットは考えた。なぜ自分の力から逃げているのか、その力を何故そこまで拒否するのかと考えを巡らせていた。
“じゃ、それを知るためには、やっぱ逃げてちゃダメだよな”
“ええ、そうですが。ただ、前にも同じ事を言い話をしたのですが?今度は大丈夫でしょうか”
“それは、分からない。だけど、このまま逃げてても、何も解決できない”
そう言うとブラットは立ち止まり、
“それに、もしかしたら今ならあの影を受け入れる事ができる。多分だけど、そんな気がするんだ!”
そう言いブラットは追いかけてくる黒い影の方をみた。
そしてその黒い影は、ブラットの側まで近付いて来ていた。
(自分の力の正体。その事を忘れていたのは、俺がそれを拒否したからなのか?その事も、あの影が全て知っているはず)
ブラットは不安に思いながらも、迫り来るその黒い影をシロポメと共に待った。
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