この未来《さき》ずっと~指輪が導く物語~
Jinmrai
第1話 プロローグ
七月七日――
『七夕祭り』の夜、彼と並んで人混みを歩く。
神社へと続く大通りに垂らされた無数の提灯が、列を為して夜暗を淡い橙色に灯す。
夏の熱気よりも、祭りに集まった客達の熱気よりも、熱く紅潮する頬。
浴衣の上からでも判るほどに跳ねて止まない心臓の鼓動が緊張を煽る。
思わず握り締めた左手で、キラリと指輪が光った。
涙が出そうだった。
彼が隣にいる。その嬉しさと、緊張と、そしてやはり嬉しさで。
いまはただそれだけで胸がいっぱいになって、目の奥から熱いものがこみ上げてきた。
人混みに流されそうになって、思わず彼の裾を掴んでしまった。
慌てて手を離そうとすると、逃げる手を追い掛けて、彼が手を繋いでくれた。
彼と手を繋いだことなんて初めてだったから驚いたけど、嬉しかった。
私の手を握る彼の左手の中で、キラリと指輪が光った。
だから今夜、伝えようと思った。
自分の想いを。
抑えきれないほどに募ったこの想いを。
伝えることを許してくれる距離に、私達は近づけたと思った。
だから、伝えるんだ。
この、たったひとつの願いを。
――私は
――この
――……
――……
――……めん
――え?
――ごめん
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます