第23話  新たな問題



その晩、チェスは 『ごめんな、ちょっと気分が優れなくて。』と、言い、一人部屋へ戻っていった。


オスマンとレオは心配だったが、誰にでも言いたくないことはあるだろうということで、チェスに問い詰めることはなかった。



[翌日]



「みんな起きるパム!!」



パームの大声によりリズたちは目が覚めた。



「なんなんだよ……。」



レオが不機嫌そうに言葉を発した。



「パムからの重大発表を聞いて欲しいパム。」


「寝かせろ……。」


「次目指すところのことについてのことパム!」



レオが『こいつ…無視しやがった。』と、いっていることも耳に入っていないようで、パームは自分の重大発表を言っていった。



「天界に繋がるポータルの場所をパムは知ってるパム!」


「ほんと!?」



リズたちはびっくりした。


まさかパームがメリアたちの世界へ続くポータルの位置を知ってるとは知らなかったのだ。



「なんでそれをパームが知っているんだ?」



チェスがパームに問いかけた。



「それは…。」



パームはどこか言いずらそうにしている。


そんなパームをみてソレイユが…



「ひとまずそれは置いておきましょうよ!今は天界へのポータルの場所がわかっただけでいいじゃない!」


「そうだね。確か今日出発だったよね?」



オスマンがソレイユの発言に対して返し、質問を投げかけた。



「あぁ、今日オルムの世界から出る予定だ。」



レオがオスマンの質問に答えた。



「パーム、天界へのポータルはどこにあるの?」


「パム!ある場所は…」



パームの言葉を聞いたリズたちはびっくりした。



「ローズベルト学園、特別室の奥にあるパム!」


「ローズベルト学園!?あそこにあるって…。」



チェスはとても驚いていた。


チェスだけではない、そもそも、まさか自分たちの通っていた学園に目標のものがあるだなんて思わないだろう。



「あるもんはあるから仕方ないパム。」


「仕方ないっていったって…。」



パームはさらっといってはいるが、学園に行くまでに色々とリスクを犯さないといけないため、そうやすやすと行けるところではないのだ。



「そもそも僕たちは国を裏切ったも同然だし…もし見つかったらただじゃ済まないよ。」



オスマンの言うことはもっともである。


国を裏切ったので、国家反逆罪という罪を持っているリズたちは見つかったら終わりだ。



「でも行くしかないだろ?メリアを説得しに行かなきゃ元も子もない。」



やれやれといった表情でレオは言った。




言い争っていても何も進展はない。


それどころか時間を無駄にするだけである。




まさか国に戻るのがこんなに早くなるとは思ってもいなかった。


いや、そもそもこんなことを予想すらしていなかった。




一体どうなることやら、未来なんて確実なものがないから安心なんてできない。


しかし、心配しすぎて逆にハプニングが起こる可能性だってある。




とにかく、今はこの問題をどう切り抜けるか考えないと…




急に舞い込んできたことに混乱するリズたち、彼女らは国に帰っても犯罪者である。


考えないといけないことはそれだけではない。


リズとチェスの関係は元に戻るのだろうか?




その日の正午、リズたちはオルムの王に挨拶をしてからオルムの国を出た。



「うーん……。」



国を出たはいいが、これから先に向かう場所はとても注意が必要な場所だ。


リスクがとても大きいが、自国に戻らなければ目標は達成できない…


何かをする上で必ずリスクはついてくるものなのだと、リズは自己暗示した。



「どうする?きた道を戻ろうにも多分僕たちを探している兵士がいるかもしれないし…。」



そう、オスマンの言うことはもっともなことなのだ。


だからこそ悩んでいた。



「遠回りするしかないだろ、第一ここでリスクを背負ってもメリットがない。捕まる可能性が増えるだけだ。」



レオは困ったように言った。



「でも遠回りをするとだいぶ時間がかかるぞ?」



そこからチェスとレオは遠回りをするか否かで話し合い始めた。



「あ!」



ソレイユが何か思い出したように声を発した。



「遠回りをしなくてもいい道があるわ!」


「そんな道あったか?」



レオは自分の記憶の中から遠回りをしなくてもいい道を探し始めた。



「えぇ、ポータルを出たところに森があるでしょう?」



『ほら、エルフの森とは違う森。』と、ソレイユは言った。



「?………あぁ!あの森の事か!」



どうやらオスマンはソレイユの言っている森がどこかわかったようだ。



「でもあの道は危険だよ?もしものことがあったら…。」


「おい待て、俺らはまだなんのことかわかっていない。説明してくれ。」



チェスがオスマンとソレイユに言うと、二人はどこのことを指しているのか説明しだした。



「エルフの森の近くにはもう一つ森があるの。その森はあまり人が近づかないの。」



ソレイユの説明に続けてオスマンが説明しだした。



「その森にはドラゴンが住んでいると言われていて、危険だからあまり人が近寄らないんだ。」


「でもドラゴンが住んでるだけなんだろ?それのどこが危険なんだ?」



チェスは疑問をぶつけた。




確かに、なんでドラゴンがいるだけで危険って言われているんだろう?


ドラゴンがいても道を通れないことはないはずなのに…。



「詳しいことは僕にもわからない…けど噂によるとそのドラゴンは人間嫌いなんだとかなんとか。」


「噂なんてあてにしないほうがいいぞ。人間って生き物は嘘つきだからな。」



どこか哀愁漂う雰囲気でレオが言った。


彼はどこかで自分たちミスリルについての良からぬ噂でも聞いたことがあるのだろう。


大方、実際は違うのにまるでそれが真実かのように言いふらされていたのだろう。



「?でも嘘つきばかりってわけじゃないよ?」



リズがレオの言葉に対してそう発した。



「まぁ考え方によってはそうなるな。」



レオはリズに言った。



「今後のことも考えた上だと多少リスクはあるけどドラゴンのいる道を通ったほうがいいと思うわ。」



ソレイユの言うことはもっともであった。


時間的なことを考えると多少リスクを背負ってでも近道をしたほうがいい。


通り道をして目的を達成できないよりも、少し危険だが目的を達成できる道に行ったほうがいい。



今回は時間が足りないケースのため、近道をするほうがいいのだ。



リズたちはドラゴンのいる道に行くことに決めた。



故郷とはいえ自分たちは安心することができない立場であり、一刻も早く目的を達成しなければいけない立場であることを今一度実感したリズたちであった。

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