2019/11/18 文則③

 こんばんは。ほぼ日刊カクヨムコン体験記の時間です、とそんな感じで昨年はお送りしておりました。

 昨年の読者のみなさん、お元気ですか?


 今日は天気が不安定ですね。まるで春の嵐のような。秋ですけども。初冬とも言える。

 雨に降られた皆さんにはお気の毒ですが、こんな日にはあまり冷え込まないので助かります。


 さて、文則も3回目。この先は縦読みでできればお願いします。

 というのも、横読みの場合、数字やアルファベットの表記は悩むことなくすればいいわけであって、問題は縦書きにあると思います。


【縦読み】

 まずはアルファベットの表記です。どうも基本的には作者に委ねられているようです。


 ですが一般的に全角で表示されているものには例えば、

『TV』、『RPG』、『AV』などがあります。全角のアルファベットが並んでいますよね? 『Tシャツ』や『BGM』なんかも同じかな、と思います。特にわたしは『Tシャツ』はすごく迷うところなので、これでスッキリ。




『罪の余白』(芦沢央著)ではパソコンのパスワードを探すシーンで、小文字で、

〈kana0412〉

 大文字でも小文字と同じく表記も横書きで、

〈KANA0412〉

 となっています。これはパスワードらしさを表現していますよね? 適切な表記だと思います。

 同じ本の中で、『iPhone』という言葉も使っています。横文字のワードなのでそのままの表記を用いてるんでしょうね。iPhoneはiPhoneということですね。




『86――エイティシックス――』(安里アサト著)では、


《システムスタート》

《RM1A4〈ジャガーノート〉 OS Ver8.15》

 ↑iPadの限界が……これが原文ではすべて縦書きになっています。


《RM1A4〈ジャガーノート〉 OS Ver8.15》

 ↑日本語キーボードから打つと、正しい表記に! 安里先生もきっと試行錯誤しているに違いありません。すごい! 自分のスタイルを崩さない工夫ですよね。


 また別のところでも、


《C1 シグナルロスト》

 ↑これは日本語入力で、《シー、1(全角)》で処理。


《B11》《B12》《B13》

 ↑これは日本語入力でアルファベットは大文字、数字は半角で処理しています。


 また、面白いなと思ったのは以前、一部で議論になっていた「「」」問題。あの議論がどこに行き着いたのか知りませんし、異世界ファンタジーものではちらりと見た感じ、普通に使われていそうだったんですけど、


「「「「「クレナったら、かーわいい」」」」」


 という表記にびっくり。「その場の全員に言われた」表現だそうです。異世界ファンタジー、強い。普段、あまり読まないのでぶっ飛びました。

 ちなみに読まないのは年齢的に卒業したからです。それ以上でもそれ以下でもないです。昔、たっぷり読んだので……。




 さて、江國香織さんに行きましょう。前回も出ました、『神様のボート』から。

 この作品には曲名がたくさん出てくるのですが、どの曲も大文字、横書き表記なんです。


 イーグルスのHEARTACHE TONIGHT だ。


 というように。ちなみにネットで調べると表記は「Heartache Tonight」になっております。

 ちなみに歌詞の表記も大文字で、

 WHEN I NEED YOU, I JUST CLOSE MY EYES ――

 と書かれています。これも何か意図があるのかなぁと。不思議。




 さて、いよいよ村上春樹さん。「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』から。

 村上さんと言えば、作品中にクラッシックの曲やジャズがふんだんに出てくるとのことでどきどき。


「フランツ・リストの『ル・マル・デュ・ペイ』です。『巡礼の年』という曲集の第一年、スイスの巻に入っています」

(中、省略)

「Le Mal Du Pays フランス語です。(以下略)」


 また別のところでは、


「会社の名前はBEYOND 。(以下略)」


 この二つのアルファベット表記の単語は共に斜体になっています。ところが別のシーンでは、


「右側のひとつにHaatainenと書かれていた。」


 と地名をボールド(太い文字)で書いています。


 しかしどうも村上さんは曲名についてできるだけカタカナ表記にしているようで、『1Q84』の中でも、


「その音楽がヤナーチェックの『シンフォニエッタ』だと(以下略)」


 と表記しています。

 他のシーンでも、


「ジョン・タウランドの器楽合奏曲『ラクリメ』を聴きながら(以下略)」


 とあります。

 気になっちゃったので、村上さんの処女作『風の歌を聴け』に当たると、


「〈カリフォルニア・ガールズ〉の入ったビーチ・ボーイズのLP。」


 とありました。びっくり! このころの村上さんは「。」を使っていたんですね? どきどき。


 ちなみに夏目漱石の『それから』では、


「どう云う訳で」


 とかぎかっこを閉じる前の文章の末尾に「。」はないんですね。どうなっているんだろう?




 というわけでいろいろ書きましたが、英語表記に関しては作者の表現したい方法を取るというのが一般的なようです。

 本当に枕元にある積読だけをテキストにしているので、偏っていて申し訳ありません。家の中にはあちこちにいろんな本が潜んでいるんですけど、取りに行くのが面倒で。


 本当はもう少しだけ、数字の扱いについて書きたかったんですけど、二時間書いたので今日はこの辺で。また余裕のある時にお願いします。


 わたし自身はアルファベット表記にあまり疑問を抱いてこなかったので、今回の調査は意外なことが多かったです。特に村上春樹さんの著作にはもっと横文字(アルファベット表記)が多いのかと思っていたんですけど、思い込みだったんですね……。でもアルファベット表記が少ないので文章を乱さず真っ直ぐに頭に入りやすい文章になっているのかもしれません。

 角度を変えて読むと、よく知っているはずの本も違う顔を見せるということですね!


 縦表記で読んでいただけましたか?


 それでは、また!

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