第62話 周回調教コースの建設始まる

統括厩舎長になってからのセバスチャンの仕事が激変した。朝の厩舎活動は皆からしなくてもいいと言われているが必ず一緒に行うけどその後が第一、第二厩舎への巡回とアーサー近衛騎士団長との人事の話し合いを行い現在、決定しているのはスタッフの厩舎間移動と現在ある三厩舎を二つに減らして減らした分を馬を預けたい貴族の厩舎に変更する事である。その為に馬を減らす事になるがそれに関してはイルメス馬具商会に委託して販売する事が決定済である。後、スタッフの人事に関しては厩舎長のすぐ下に厩舎リーダーなる職を作りリーダー一名に対して十名のスタッフが付き二十頭の馬を管理するシステムを構築していく。将来、騎手は専門職として育成学校を設立したい考えを二人で話し合っておりその為にまずは乗り方から指導出来るようにライアンとミシェルが他の厩舎の騎手を相手に指導している(いきなり馬は難しいので木馬で練習して少しずつ馴らしている)


「セバスチャン、宰相様から周回コースの建設許可が出たぞ。明日から建設の為に測量を行うそうだ」

「予想より許可が早かったですね。作成した図面があるのでそれに沿ってくれたら問題無いと思いますが建設中に問題が出る事が当たり前だから現場には必ず顔を出します」


「けどセバスチャン、周回コースの建設が始まるのはいいが組織の問題はどうする?まだ立案だけで組織図が出来て無いぞ」


「建設には約一年は掛かりますのでそれまでには出来ますよ。と言うより出来ないと困ります。私は統括厩舎長としての仕事以外に騎手の育成、馬を預けたい貴族との交渉等ありますしアーサー様も近衛騎士団長の仕事以外にこちらの仕事にも関わって頂いているので組織の構築は早急の懸案です」


二人は溜息をつきながら書類と睨めっこしながら話し合いを続ける



「セバスチャン様、久しぶりですな。今回もよろしくお願いしますぜえ」

「ビーア監督宜しく頼みます。渡してある図面を見て測量と新たな図面を起こしてから建設でお願いします」


「任せてくれ!前回の坂路だったかな?あれは本当に大変だったが今回は平地だから時間は掛からないと思うがな」


「監督、この平地は元は湿原だった場所もありますので注意して下さい。それに三つのコースを作るので広さがキングダム競馬場の五倍になりますのでその点は考えて下さい。それと一週間に一回は必ず休みを入れて下さい。作業員の方も飲む以外の楽しみが無いと長期の作業に着いて来れなくなったりすると思いますから」


「ありがてぇぜセバスチャン様。約束は必ず守るから宜しく頼むぜ!」


挨拶が終わるとビーア監督はロバ?に近い我々が乗っている馬より小さな馬に跨り調教コース建設現場の視察を始めた


測量班の作業員達は地球で言うメジャーの様な紐で長さを計りそれをボードに書き込みながら測定が済んだ場所に杭を打ち込み、杭と杭の間にロープを張る。この作業だけで三~四日は掛かりそうなペースである


一通り見た後、セバスチャンは第三厩舎に戻りライアンとミシェルを呼び、モンキースタイル乗りの講師として他の厩舎のスタッフに指導する事を伝え再度、乗り方の復習と指導方法を文面にして報告するように伝える。これによって厩舎内での地位と給料が高くなる事を付け加える。



次に王妃宮に向かい王妃様との面会を求めると直ぐに侍女が迎えに来て何時ものサロンに通され王妃様が来るのを待つと直ぐに王妃様が現れ、厩舎人事と新たな枠組みの構築そして再編を纏めた書類を渡し話しを行う。


「セバスチャン、厩舎人事は中々上手く行かない様子みたいですね。やはり人員不足ですか?」

「いえ王妃様、人員は足りていますが技術の習得が進んでいないのとその技術を教える先生が不足しているので人材育成からスタートしないと事が進みません」


「なるほどのう。馬の乗り方一つでも大変な訳だなセバスチャン」

「はい王妃様。王妃様がその点は一番お分かりだと思いますが・・・・・」

「そうですねあの乗り方は直ぐに出来る物では無いです。それに練習をした後は皆の前に出たく無かったですからねセバスチャン。貴方はあのような事になると知っていたのではないですか?幸いスカートで足元は見えませんが歩く姿を見て可笑しいと思った臣下は居たはずです。それに陛下の前に出れませんでしたわ」


セバスチャンは言葉に出来ないので静かに沈黙するしかなかった

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