第42話 王家主催晩餐会(後編)

緊迫したあいさつの後、考え事をしているとよいよ最後の入場になる呼び出しが始まる


「ルクレール公爵家よりルイス・ルクレール公爵、ミカエル夫人、セバスチャン騎士伯、エリータ嬢おつきでございます!これにて全五十家お揃いです」


時計回りで席に案内され中央の国王一族の前の席にルクレール家は座るとバルト宰相から挨拶が始まる

「王家主催晩餐会を開催します。まずは全貴族が揃われた事に対して皆の並みならぬ国に対しての忠義を感じています。では国王陛下にお言葉を賜りますようお願い申し上げます」


バルト宰相の挨拶の後、国王様の挨拶が始まるので会場の緊張が一気に高まる


「皆の者、今宵は晩餐会に集まってくれて心から感謝する。今日が社交界シーズンの始まりだが民あっての貴族だと言う事を忘れない事だ。それと今日は我が国の

学園に留学に来ているリッピング王国の第一王子、アクエリアス皇太子殿の歓迎会

も含まれているので私の挨拶はこの位にしてアクエリアス皇太子に挨拶と乾杯の音頭を取ってもらおうではないか」


打ち合わせも無くいきなり決められたので困惑されているが一息ついて挨拶を始める


「国王陛下にご紹介されましたリッピング王国の第一王子、アクエリアスで御座います。留学に来て早一年が経ちますがもはや国に帰るのが辛くなるほどこの国が好きになりました。残り一年ございますが楽しく、そして実りのある留学にしたいと思います。それでは乾杯!」


「「「「「「「乾杯!!!!!!!」」」」」」」


乾杯と同時にオーケストラの演奏が始まり晩餐会が始まると同時にルクレール家全員が立ち上がり国王陛下に挨拶に行く。これからは王家の方々との挨拶が始まるので五十家で一番位の高いルクレール家からスタートして次々と貴族達は王家の皆様の前に進んでいく


ルイスが国王陛下の前に立つと陛下が先に声を掛ける

「ルイス、久しぶりだな!」

「国王陛下も相変わらずお元気で」

「報告を受けているぞ。今後も一層民の為、国の為に尽くして欲しい」

「この命に代えましても」


国王陛下とルイスの話が終わるとミカエル、次にセバスチャンの番が来て国王陛下は「セバスチャン、今宵は最後に行うので十分に身を引き締めておれ。ダイアナに

任せてはいたが最後はキッチリ行うのでな」


「畏まりました」


国王陛下の言葉でセバスチャンは言葉通り身が引き締まるのであった


一貴族が国王陛下との謁見にだいたい十秒前後で陛下が言葉を掛けなければ長くなる事はないので全ての貴族が終えるのに一時間弱で済んだ。それからは食事と会話

に充てられて国王陛下一家も一度下がられる。同時にルイス、ミカエル、セバスチャンは指定された控え室に向かう。エリータは万が一を考えケビンの元に向かわせる



王宮の一室。ルイス達は侍女に案内された一室で国王陛下、王妃陛下と最後の打ち合わせを行っていた


「ルイス、ここまでの告発資料集めてくれて感謝する。本当にお前が敵で無い事に対してホッとするよ」

「陛下、私の力では無く圧政に苦しむ民や逆らえず従う従者達からの悲痛な叫びが

あったからこそ私は纏める事が出来ただけです。あやつの最大のミスはミカエルを

襲撃した事です。ルクレールが力をより一層付けていると勘違いなどしなければもう少し長生きできたのでしょうがね」


「後はセバスチャンとメリアの件を言われた時にどう対応するかだがダイアナ、ミカエルはどう思うかな?」

「大丈夫でしょう。先程セバスチャンに何かしらのサインを送っていましたので保身に走る事より利用したい事が見えていますしメリア夫人の男性関係は把握していますので利用させてもらいます。なのでセバスチャンとの待ち合わせ場所にはメリアと

関係を持つコレーロス派の男爵に行かせる手筈が付いています」


セバスチャンの知らない間に話が進んでおりセバスチャンの役目は本当に無くあるのは残りの女性関係を終わらせる事だけであった


「セバスチャン、其方は分かっているだろうが今回が最初で最後のチャンスです。必ず全員との縁を切りなさい。いくら貴方の発明である蒸気機関をもっても処分は免れません。出来なければセバスチャン・ルクレールは貴族社会から消えて一生、国の管理下で国の奴隷として働く事になりますので」


「・・・・・畏まりました」


セバスチャンの思った以上に厳しい処分だった。セバスチャンの女性関係はまことしやかに社交界を楽しませているが事実関係は本人のみぞ知る所なので皆もそれ以上話さない。それは皆、叩けば埃が出るので敢て虎の尻尾を踏む事はしない


「国王陛下、王妃陛下、それでは私は戻りまして精算を致します。失礼します」

セバスチャンは一礼をして先に部屋より出てホールに戻る。自らの罪を清算する為に・・・・・



ホールに戻り晩餐会は食事から舞踏会に様代わりしておりダンスホールには多くの貴族が音楽に合わせ踊っていた。それに合わせセバスチャンは精算を始めたダンスの後

にテラスに出て話しをする。罵声を浴びらされるかと思ったがすんなりと別れる事が出来てホッとするセバスチャンの姿があり後はミソラルだけになる


「ミソラル嬢、私と一曲踊って頂けますか」

「お願いいたしますセバスチャン様」


二人はホール中央近くまで進み音楽が始まると踊りだす

「こうして踊るのはいつぶりかしら?」

「そうだねミソラルが成人した時以来かな。随分お待たせしたみたいでゴメンね」


二人は常に笑みを浮かべながら踊るがミソラルから突然、別れの言葉を掛けられる


「セバスチャン、自分の気持ちに気付いたのね。私ね少し前から貴方が変わっていく

姿を見てリン様と向き合う覚悟が出来たと思っていたの。だって私達は幼少の時から

の付き合いで王妃様、ミカエル様が爵位など関係なく私達を育ててくれたからこそお互いの気持ちを知っていたからね。リン様にも相談されていたから本当は苦しかったの。きっとセブは私を選んでくれるとずっと思っていたけど魔法は切れたみたいね。ありがとうセブ、この呼び方もこれで最後ね。これからも貴方の妹の一人、ミソラルとして接して欲しいわ。これは最後の我儘、聞いてねセブ」


「ああ、大切な妹の頼みだから約束するよミソラル・ハイクレア嬢。そして本当に御免なさい。弱い私を許してくれて」


曲が終わり二人は礼をして別れる。ミソラルは気丈に笑顔で家族の元に戻るとビアンカ様が馬車の手配をして先に屋敷に帰す。ミソラルは帰り着き部屋に戻ると線が

切れたように大声で泣き始めた「私じゃ駄目なのセバスチャン」


ホールからミソラルが退室したと同時にビアンカ様が来て「セバスチャン、当分貴方の事を恨むわ。本当はこの場で貴方を切り殺したい位だけどあの子はそんな事を望んでないから。中々治らない傷を付けたのだからミソラルの事をこれ以上に兄弟として接してあげてね。これが私から言える最大の譲歩ですからね」


「畏まりましたビアンカ様。一生涯この事を忘れません」


一礼してビアンカ様と別れるとセバスチャンはテラスに出て涙を流す

「苦しいなセバスチャン。私も君の気持ちに沿って行くから二人で乗り越えよう」


セバスチャンが精算している頃、ルイス達が動き出してセバスチャンとの密会場所に現れたメリア夫人は別の貴族と同衾している所を近衛騎士団に踏み込まれ捕らえられ会場に戻られた国王陛下はメリア夫人の犯した罪をコレーロス侯爵に追及し、その場で近衛騎士団に連れて行かれる。その後、ルイスが提出した報告書と関係者が

供述した証拠によって余罪や賄賂、犯罪が明るみになりコレーロス侯爵一派十二貴族は取り潰しになりコレーロスとメリアは処刑、その他の貴族は犯罪奴隷として一生涯鉱山で強制労働の刑になった


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これで晩餐会編は終わりです。本当はもっと詳しく書きたかったのですが本線の競馬

から大分ずれたのもありますが中世の貴族にありがちな話しなのでここまで続きました。次回からはよいよ競馬回になります

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