第31話 セバスチャンの勘が当たる

ターシャを出発させた後、セバスチャンは部屋に戻り万が一を考え革の鎧と篭手、脛あてを装備して待機する


「何も無ければ良いのだが胸騒ぎがする」


ルクレール家が領主不在時に緊急で出せる護衛は三名で+ターシャを同行させているので心配はないと思うが心配でならない


「セバスチャン、急いで母の元に行くのだ。場所は街と屋敷街の間にある市民街で

争いになっておる。二人で賊を相手にしているが数が多いので少しずつ追い詰められている。メイド達が探すのに手間が掛かっているので急ぐのだ!」


人馬神様からの神託が聞こえ急ぎ飛び出し馬を走らせる


「間に合ってくれよ」



人馬神様の言われた方向に馬を走らせていると護衛の一人と合流したので場所を

伝えたら発炎筒を持っていたので直ぐに上げさせセバスチャンは馬を走らせる



片手に松明たいまつを持ち馬を全速力で走らせているのでかなり不安定

であるが兎に角急いで合流して手助けしないと気だけが逸る



現場近くになると金属のぶつかる音と声が聞こえてきて近くと確信したセバスチャンは一段と馬を早く走らせ、姿が見えたので賊に向かって持っていた

松明たいまつを投げつけた

当たりはしないが周囲が少し明るくなりセバスチャンは馬を賊に向かって

走り体当たりをして排除する



「母上ご無事ですか!」


ミカエルとビアンカは二人で大人数を相手にする為、馬車を背にして戦っていた。馬で体当たりした者を入れ六人が地に伏せており残り5人が二人に

襲い掛かっていた



「ビアンカよお互い腕は鈍っていないようだな」

「姫様も相変わらずの剣捌き。お見事です」


二人は声を掛け合いながら複数の相手と剣を交えておりセバスチャンが到着

した時に動揺したのかミカエルの手によって一人片付けられる。

これで三対四になりミカエル、ビアンカに二人、セバスチャンに二人が対峙

する事になる


セバスチャンも剣の技術は持っているものも本当の戦闘はした事が無い

上に日本から来た和雄が人殺しなどした事もある訳なく極度の恐怖感に襲われており剣を振り回すだけしか出来ていなかった



「奥様!」


ターシャ達の声が聞こえてくると賊は不利だと考え急ぎ足で撤退をする


ミカエルは賊を追う事は無く「ふ~」と肩で息を付く


ターシャと護衛が到着するとセバスチャンは緊張の糸が切れたのか膝が折れ

座り込む


「奥様、ご無事で何よりです。お怪我はありませんか?」

「ターシャご苦労です。私もビアンカも擦り傷位ですから心配ないわ。でも

ターシャが来たと言う事はセバスチャン、貴方が指示を出したはずです。

それが何故、此処に居るのですか!屋敷を空ける事は些かお粗末な行動です

ので申し開きがあるなら話しなさい」


「母上、指示を出しながら現場に出て来た事に対する罰は受けます。申し開き出来ませんが後で報告が御座いますので処罰は屋敷にて」


市民街で騒ぎが起きたので最初は怖がって出てこなかった住民も時間が経つに連れて覗き込んでおりミカエルは全員に素早い撤収を行わさせる


「ターシャ、御者のドラムが討たれた。亡骸を自宅に運び事情を説明せよ。

夜が明けたら私がお悔やみに行き弔おう」


「畏まりました」


ターシャは護衛一人と一緒に御者の家に向かう。セバスチャンはその姿と家族の事を考えると胸が苦しくなり何とも言い難い嗚咽をする



「セバスチャン屋敷に戻るぞ。しゃんとせんか!貴族の男子たる者これ位

の事で怯むな!シャキッとせよ!」


ミカエルから叱咤されセバスチャンは漸く動き出し馬に乗る。そして護衛の

一人が御者になりもう一人の護衛とセバスチャンは両脇を固め屋敷に戻る



屋敷に戻る際にビアンカを送りハイクレア男爵に襲われた事と身の回りを

固める様に話し後日、会議を行うと伝える



屋敷に戻りミカエルは護衛に賊に襲われた事を騎士隊詰所に伝える様に指示した後、湯浴みを行い着換え執務室で話し合いを行う





「さてセバスチャン今回の事話してもらうぞ」





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