第14話 駆け引きは苦手だけど・・・・・

執務室で汗を拭き準備していた新しい服に着替えたセバスチャンは朝、ターシャ

には手紙を二つ頼んでおり一つは父上でもう一つはハイクレア男爵宛てに頼んで

いたのだ。伺うのに汚れた格好で行くわけにはいかないので身だしなみを整えて

外に出るとミシェルとタイムが冷やかしてきたが適当に「そうだよ」と答えて

馬に乗りハイクレア男爵邸に向かう




十五分程でハイクレア男爵邸に到着したセバスチャンは勝手知ったる他人の家で

男爵の厩舎に馬を預け玄関をノックするとハイクレア男爵自身が待ち構えていた



「やあ、セバスチャン。遂にミソラルを貰いに来てくれたのかな?ルイス殿も

ミカエル様も何時でも身一つで嫁入りして良いと言っていたから今朝の手紙が

来た時に遂にと思っていたのだがな」




「フリート様お戯れを。そんなに私を虐めて楽しいですか。一応独立してはいますがまだ実家暮らしですのでもう少し叙爵してからと考えていますので今しばらくお待ちください」





「そなたはいつもそう言って逃げているではないか。それとも例の噂話が本当なら

流石に嫁に出す訳にはいかないからな」




多分、噂話でなく確信しているから話してくるのだろう。男爵は噂話位では絶対に

話してこない方で何事も下調べを行い慎重に行動を移す方である。




「戯れはここまでにして早速手紙の話をしようではないか。話は妻やミソラルが

聞いても問題ない内容だと思うのだが?」





「大丈夫です。少し難しい話ではありますが密室で行わないと行けない内容では

ありませんので私も楽に話たいです。特にフリート様の前で話すのには・・・・・」




「ハハハハハ」




大きな笑い声を上げて食堂に引っ張られていくのであった




食堂に入るとミソラルとフリート様の妻であるビアンカ様が食前酒を飲みながら

話をしており少し酔っているのかミソラルは頬を赤く染めていた。




「セブ遅かったじゃないの。私、お母様に揶揄われて大変でしたのよ」




「セバスチャン様お久しぶりですね。ずいぶん雰囲気が変わった様に見えますが

何かありましたか?」




流石、結婚前は母上の筆頭侍女として王宮に仕えていただけあるので王宮に独自の

人脈があり以前のセバスチャンの行動は筒抜けのはずなのでここは誤魔化さずに

他の人にも話している内容で話さないと何所かでボロが出そうなので




「ビアンカ様、私に様は要らないですと何度も話しているではないですか。最近

皆に雰囲気が変わったと良く言われますがそれは今度の王妃様主催の競馬で良い

成績を残せないと取り潰されてしまう話が出ていますのでそうなると厩舎の従業員

の生活が出来なくなり私も家から追放されますので自分の為よりも厩舎の者を大切

にしたい気持ちがあります。今日来たのはこの話に関係がある事です」




席に着き今回の競馬に対して厩舎に資金援助をして欲しい事を話す。内容は調教設備

の設置、飼い葉代の二つである事。今回の競馬でも貴族内で賭け事が行われるのは

公然の秘密であるので投資者に少しでも多くの利益を出す為に馬と騎手を鍛える事

を話し最終的には現在ある三つの厩舎全てを自分の管理下に置き、貴族の方々に馬

を預けてもらい競馬を継続的に行い貴族内で争い自身のステータス向上の為に競馬を盛んにしたいと話す。同じ内容を父上、母上にも手紙で知らせている事まで伝える




「セバスチャン分かりました。かなり壮大な計画ですが上手くいきそうな気がします。この話に乗って欲しいのと貴族の間に話を広めて欲しいのですね」




「はい、ビアンカ様。話は二~三日後に母上が必ず帰って来ると思っていますので

それからでお願い致します。詳しい話は私がしますので広めて頂くだけで大丈夫です」





そこから食事をしながらアーサー近衛騎士団長に調教設備建築の話をした事を話すとビアンカ様から「その話、王妃様に直接話をした方が良いわ。その方が必ず上手くいくから。明日、私からアーサー近衛騎士団長宛てに手紙を出すから呼ばれたら

直ぐに話に行って下さいね」




母上の懐刀と言われた人の言う事なので従う事に決め食後、ミソラルとお茶をしながら少し話をして男爵邸を後にした

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