130, 0-75 幕間・双子エルフの鑑賞

・イフリンとディーヌの鑑賞


前回のあらすじ

 お菓子買ってーーー




『お菓子買ってーーー』


小さきエルフの子、ロリエルフは駄菓子屋の前で駄々をこねる―――


『この前買ったばかりでしょう。お家へ帰りますよ』


赤エルフがそう言うも――諦めないロリエルフ。


『お菓子食べたい・・・』


シュンとした子供の顔――だが心を鬼にして、青エルフは言う。


『今度買ってあげますから、今日は我慢しなさい』

『やーーー』


我慢なんて出来ないと――ロリエルフは暗い洞窟に入り――岩戸を閉じてしまった。


その岩戸は魔法では決して破壊できないことで有名で――子供がわがままを言って閉じこもり――保護者に要求を突きつける厄介な洞窟。

駄菓子屋の近くになぜ洞窟があるのか――そんな疑問はさておいて――双子エルフは説得を試みる。



❖❖❖❖❖❖は❖い❖ジ❖ョ❖ニ❖ー❖❖❖❖❖❖



赤いフリンジ付きビキニとミニスカートの衣装に着替えた赤エルフは、軽快な音楽に合わせて炎を使った魅惑のダンス―――


紐の先に燃える球をつけ振り回す――赤い円を描く美しい炎の軌跡――手首の動きで変化し生き物のように躍動する。

見るものを圧倒させるその光景――しかし、岩戸は開かない。


それならばと持ち出した長い棒に火を付け水平に渡し――シンプルなリズムの音楽に合わせ――上体を後ろへそらし、棒に触れないよう、のけぞりながらくぐる。

ひらひらと揺れるスカートはどこかエッチだ。



見ていた者はハラハラするも――ロリエルフは出てこない。



❖❖❖❖❖❖そ❖う❖ジ❖ョ❖ニ❖ー❖❖❖❖❖❖



見かねた青エルフはノースリーブワンピースの青い衣装に着替え、地面を凍らせその上を滑り踊った―――


優雅な旋律せんりつに合わせた流れるような動き――曲のテンポは次第に速く――回転しながら大きく跳び――美しく着地する。

その姿はまるで妖精のよう――しかし、岩戸は開かない。


思い切って衣装をチェンジ――生地の薄い水色の浴衣へと着替え、両手には扇子――幻想的な音楽の中、掲げた扇子から水が出る。

掛け声とともに花々から水が飛び出し――扇子を向けた先からも――青エルフを中心にまるで噴水のよう。

当然青エルフは水に濡れ――浴衣が透けてエチエチだ。



見ていた者をドキドキさせるも――ロリエルフは出てこない。



❖❖❖❖❖え❖っ❖ジ❖ョ❖ニ❖ー❖?❖❖❖❖❖



ロリエルフは洞窟の中、一人寂しくねていた―――


そもそも岩戸はしっかり閉じていて、外は全く見えない。

双子エルフのダンスに意味はなく――かすかに聞こえる音楽が伝わるだけ。


『お菓子食べたい・・・』


とにかくお菓子が食べたかった―――



❖❖❖❖な❖る❖ほ❖ど❖ジ❖ョ❖ニ❖ー❖❖❖❖



楽しい気持ちにさせればきっと出てきてくれる――そんな想いで踊ったダンスはロリエルフに届くことなく――双子エルフはブチ切れる。


『偉大なる火の精霊・イフリートン様の魔法です』

赤エルフが火球を当てるも――岩戸には焦げ跡すら付かない。


『偉大なる水の精霊・ウンディーヌン様の魔法です』

青エルフが水球を当てるも――岩戸はびくともしない。



普通ならば諦めるところ――だが双子は魔法を放ち続ける―――

岩戸の温度は上がっては下がり――下がっては上がる――それを繰り返していると――魔法では決して破壊できないはずの岩戸にヒビが―――

温度変化による膨張と収縮の結果である。



ヒビの入った岩戸は簡単に壊れ――驚くロリエルフがそこに―――


『お菓子・・・おかし・・・』

『ワガママは許しません!!』


双子エルフはロリエルフの手を握り――引きずって家へと帰る。



喧嘩をするより協力したほうが強い結果が生まれるのだ。


めでたしめでたし―――




突然おかしな事を言い出したジョニー。

赤エルフと青エルフは自分たちのことで――ロリエルフとはソーニャのことでしょう。


「ソーニャ、わがまま言わないよ?」

ソーニャも自分のことを言われているのでは――と考えたようで、珍しく困った顔をしています。

そんなソーニャの頭をなでながらジョニーは言います。


「喧嘩はやめろ」

「先程のお話は・・・」

「力を合わせれば大きな事が出来るという話だ」

(まさか・・・本当に―――)

「お話の中で出てきた破壊の魔法は、実現できる魔法なのですか?」

「魔法・・・まぁ、魔法でいいか。物を熱すると膨らみ、冷やせば縮む。これを繰り返せば大抵の物は壊れる」

「すごい魔法ですね」

「ガラスのコップに熱湯を注いだ後、水で冷やせば割れるのと同じ仕組みだ。そもそも温度変化というのは分子が激しく動くか、停止するかの違いだったはず・・・俺も詳しくは知らないが」

「分子とは・・・」

「この世界にあるものは全て分子でできている・・・?」

「「世界・・・!?」」

「まぁ、あれだ・・・とにかく、協力して荒れた森を綺麗にしなさい」


自分たちには理解できない世界のことわりを知るジョニー、双子エルフは憧憬しょうけいの念を禁じ得ません。

荒れた森を綺麗にしながら確信します―――。


(ジョニーさんは・・・いいえ、ジョニー様は・・・、聖者様です!!!!)

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