131, 0-76 幕間・双子エルフの感動

・イフリンとディーヌの感動


前回のあらすじ

 めでたしめでたし



森に小さな広場が出来た頃――ヘルガとセリーナが戻ってきました。

「なんかでっけぇ~音がしたけど、大丈夫か?」

「ソーニャ!無事かソーニャ!?」

「やーーー!」

「なんで逃げるんだ!」

「やぁーーー!!」

ソーニャとセリーナの追いかけっ子を見ながらジョニーは言いました。

「もう暗い、今日はここで野営しよう」

「あーー野宿か~~。ま、仕方ねぇけど・・・飯はどうする?」

「簡易調理用の魔法具を買っておいた。これでスープを作る」

「用意がいいなジョニー!」

まるで、こうなることを見越していたかのように5本もの魔法具を取り出すジョニー。

「いつ購入されたのですか?」

「昨日、街で買っておいた」

(さすが聖者様です)

ジョニーは美味しいスープを作り――皆に振る舞います。



食事の後――セリーナが地面を見ながら言います。

「土の上に寝るのは流石に・・・シーツを敷こう」

「いや、テントがある」

「テント?」

「魔法具のテントだ」

ジョニーは球体の魔法具を取り出し――魔力を流して地面に放れば――それは一瞬にして大きなテントに――。

「よくこんな物持っていたな・・・」

「今日のために買ったと言っても過言ではない」

(さすが聖者様です)


ソーニャはテントを見て喜び――中に入ろうと――けれどジョニーに止められます。

「靴を脱ぎなさい」

「わかったーー」

靴を脱ぎ――テントに入ってはしゃぐソーニャ。

「ひろひろーーー!」

「これならみんなで横になれそうですね」

「おっ、ジョニーも一緒か?」

「いや、俺は見張りをしよう」

「見張り?んなもん必要ねぇって」

「念の為だ」

(聖者様に見張りをさせるわけには――)

「私達が見張りを・・・」

「・・・派手な魔法を使って疲れているだろう、休んでおけ」

「ではせめて、交代しましょうか?」

「たった一晩だ、交代は必要ない。モンスターが出たら起こしてやる」

ジョニーの献身的な精神に双子エルフは感動します。



テントの中――疲れていたソーニャは眠り――女性4人はジョニーについて話します。

「ジョニー様は凄い人ですね」

「ジョニー様?」

「聖者・ジョニー様です」

「ジョニーの奴、いつの間に聖者になったんだ?」

「ヘルガさんは、知っていたのではないのですか?」

「いや、知らねぇよ」

「ですが、ジョニー様を凄いお人だと・・・」

「聖者かどうかはわかんねぇけど、ジョニーは凄い奴だぜ」

「そうだな、ジョニーは凄い奴だ」

(聖者様だと知らなくとも・・・、隠すことの出来ない偉大さから、凄いお人だと判断したのですね)

双子エルフはまた感動し――見張りをする偉大な聖者・ジョニーに感謝の念を捧げながら眠りにつきました―――。



「チュンチュンチュン」

翌朝―――小鳥のさえずりで目を覚ますと――ソーニャがいません。

ジョニーなら知っているだろうとテントを出ると――ジョニーの姿もありません。

「ソーニャーーー!いるなら返事をするんだーーー!」

「落ち着けよ・・・。ジョニーもいないし、トイレかなんかだろ。ちょっと待ってみようぜ」

「そうですね」


ジョニーとソーニャを待つ間、テント上部の起動球に魔力を流して回収し――聖者様に失礼がないようにと身だしなみを整えます。

しかし、二人が戻ってくる気配はありません。

双子エルフは魔力感知をしてみますが――感じるのは小型モンスターの魔力だけ――感知範囲を広げてみれば―――エルフの魔力を複数感じます。

「近くに集落があるようです」

「どうして分かるんだ?」

「エルフの種族特性を使いました」

「それ、昨日使えばよかったんじゃね?」

「こんなに近くだとは思わず・・・すみません」

「まぁいいや、そこにジョニーもいるんじゃねぇの?」

「行ってみましょう」



魔力を感じた方へ進めば――木々の間に畑がいくつか――大きな木の上には家、ツリーハウスです。

「どうやらここが集落だな」

ジョニーやソーニャはいるだろうかと周りを見ると――弓を持った男が近づいてきます。

「お前たち・・・なにか集落に用か?」

少し警戒した様子、自警団か何かでしょう――セリーナは尋ねます。

「普人の男とエルフの子供を知らないか?エルフの子はソーニャという名で集落の子供だ」

「あいつか・・・」

「おっ、いるみてぇだな」

「あの家にいる、あそこがソーニャの家だ」

男は指を差し、どこか苦々しい表情で言いました。

「まぁ、あれだ・・・悪かったと、伝えておいてくれ」

「何かあったのか?」

「ちょっとした行き違いだ」

そう言って、男は逃げるように去っていきました。

その様子から双子エルフは思います。

(聖者様に不敬を働き、それを後悔しているのでしょう)

「なんだーありゃ~~?」

「どうせまた、ジョニーが何かやったんだろう」

セリーナは呆れた顔でジョニーが居るであろうツリーハウスを見ました―――。

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