118, 5-07 スケルトンとの戦い
前回のあらすじ
捕獲された宇宙人
小部屋に入るとスケルトンが20体、多いな。
スケルトン。
まぁ、骨だ。
ショートソードを持った人型の骨のモンスターだ。
ドクロに魔石があり、これを取ると活動停止する、という弱点はわかっている。
それ以外についてはよくわかっていない。
身体強化を使った普人と同等の力を持っているが、魔力では動いていない。
モンスターは人間より魔力を多く持っているとはいえ、筋肉もなにもない骨だ。強化しても力は出ない。
強度は上がるので剣で簡単に切ったり、素手で折ったり、という事は出来ないらしいが、魔法はそれだけ。
人間には感知できないよくわからない力で動いているということになる。
そんな力は俺が知る限り一つだけ、
つまり、チート持ちだ。
俺はチートを持っていないというのに。
すごいイラッとする。
はっ、雑魚モンスターが、
5体のスケルトンにすぐさま囲まれる俺。
人型だから大丈夫だろ、と適当に相手してみるが――やりにくい。
人型だが、腱や筋肉がないので可動域は広く、グネグネと気持ち悪い動きのくせにしっかりとした剣術で連携まで取ってくる。
この世界のモンスターは、俺から見るとゴブリンに限らず基本的に馬鹿だ。
しかしこの世界の人間からすると、ゴブリンは賢いモンスターだ。
人型モンスターは賢い、と言われている。
大型モンスターは強いが、連携をとったり群れを作ったりはしない。
基本的には単独で行動し、繁殖期に繁殖できそうな
ゴブリンは群れを作る。
ダンジョンは侵入者に向かってくるよう設定されているので別だが、ダンジョン外のゴブリンというのは実は臆病で警戒心が強い。
洞窟で遭遇するゴブリンはなんの考えもなく突っ込んでくるが、あれは拠点を守るための行動だったり、安心して無茶な行動をとっているだけだ。
俺も一度、森でゴブリンの群れに遭遇したことがある。
最初は「こいつボッチだぜ」といった感じで馬鹿にしてくる。
イラッとして剣で切りつけてやると「やっべ、ボッチ強えぇ」と逃げ出す。向かっては来ないのだ。
足はあまり速くないので追いかけながら倒せるが、森の中で散り散りに逃げるので全て倒すのに苦労した。取りこぼしたらはぐれゴブリンが誕生するんだろう。
開拓村での情報源、狩人男こと村人Aがたまに森で見かけ、すぐ逃げると言っていたやつだ。
布をナイフで切り、腰に巻いている。
道具を使い、布を加工する知能があり、移動時は警戒心が強く、群れで獲物を襲う。
こう考えると賢い気がしてくるので不思議だ。
表情も豊かで「ゴブゴブ」と会話をしているように聞こえる。
この世界の人間は神に知識を授かった状態で造られたので言語は一つだけだが、方言のようなものはあり、言語学も存在する。
魔物研究者の男もゴブリンは興味深いと研究し、意思疎通を図れないか試してみたようだが、結局あれは動物の鳴き声のようなもので言語ではないらしい。
俺も新人の面倒を見る時に色々実験をした。
洞窟のゴブリンに「あれはお前の親の仇だ」と言ってやると憎しみがこもった鳴き声を出し、新人に向かっていく。
まるでこちらの言っている事をわかっているような反応をするが、「あれは生き別れたお前の家族だよ」と言っても同じように向かっていく。
ゴブリンは人間の言葉は理解できない。
地球感覚でいえばゴリラが手話を覚えた賢い。タコが
こんな感覚だろう。
俺がカナリッジ周辺で相手にして賢いと思ったモンスターは犬型モンスターだ。
犬だから、賢い。
群れで行動し、農民を襲う時は遠くから観察し、斥候のような個体を放ってくることもある。
ゴブリンよりよほど賢いといえる。
まぁ、弱いけどな。
だから、人型は賢いと言われてもナメていた。
オーガも動き雑だったし、どうせ馬鹿だろ、と。
しかしスケルトン、こいつら賢いぞ。
左からくる剣を避け、右の剣を弾く。
前方のスケルトンに切りつけてやるも、少し骨に傷がつくだけ。
防御すらせずに肩の骨で攻撃を受けたスケルトンは、剣で切りつけてくる。
その剣を避けると、骨の隙間から突きを放ってくる別のスケルトン。
自分たちの構造を理解した攻撃だ。
(地味に強いな、逃げるか・・・)
俺一人ならすぐさま逃げ出すところだが、後ろにロリエルフがいる。
「ジョニー、かっこわるい」とか言われたらショックだ。
仕方ない。ここは魔法を使おう。
通常、モンスターに魔力干渉はしない。
普人の普通の魔法使いが他者へ魔力干渉出来ないのは魔力抵抗があるからだ。
俺は魔力干渉出来るが、モンスターの持つ魔力は人間より多い。
抵抗も当然大きい。
例えば、スライムを一匹凍らせようと思ったらかなり時間を掛けて、俺の全魔力を使い、半分凍らせることが出来る。
モンスターへの魔力干渉はそんな感じだ。
しかし、スケルトンは骨が剥き出し。
骨の中や骨にかかっている強化魔法への干渉には抵抗があるが、関節部分に抵抗はない。
だから自由に魔法を使える。
動きは一気に遅くなり、
魔物図鑑を読んで、スケルトン相手ならこうだな、と考えていた魔法だ。
時間をかけると氷を砕いてしまうので一気に片付ける。
漫画なんかで盗賊キャラが「ふっ、お前の心臓は・・・ここにあるぜ」「い、いつの間に!?」というあれだ。
あんな気分でスケルトンを倒して俺強えぇ!感を味わう。
5体のスケルトンを倒し、後ろに下がる。
ロリエルフを見ると、キョトンとしている。
なんでもっと強い魔法使わないの?と思っているのだろう。
ロリエルフはエルフだ。
俺は普人です。
同じ普人の家出令嬢が「よし、私もやるぞ!」と俺の魔法をパクる。
普通は見ただけですぐさま魔法を使えたりはしないのだが、俺が使った魔法は氷の粒を作る魔法だ。製氷魔法を覚えていれば真似できる。
しかし、関節からずれている。魔力コントロールが下手なんだろう。
家出令嬢が特別下手というわけではなく、普人ならあんな感じだ。
だが、家出令嬢が持っているのはミスリルの剣だ。
氷とか関係なく、ミスリルの剣の力で骨を断ち斬り、スケルトン5体を倒す。
痴女銀狼が適当に歩いて近づいていく。
向かってきたスケルトンを素手で殴り、骨を砕き、10体倒す。
俺強えぇ!感が台無しである。
最近はずっとこんな感じだな、と落ち込みながら魔石と剣を回収する。
いくつか小部屋を周り、スケルトンがいたら倒す。
気持ち悪い動きをするスケルトンも、何度も相手をすればなんとなく動きが読める。
魔法を使うことなく攻撃を避けながらサッと魔石を引き抜く。
モンスターを倒しながら考えるのはダンジョンの事。
カナリッジ
ダンジョンは神が遊ぶために造ったアトラクション施設のようなものだと神モドキは言っていたが、カナリッジ
だがこれは、俺がRPGゲームの感覚で考えていたからだ。
神の遊びは、おそらくシューティングゲームに近いだろう。
敵は弱く、一発当てれば死ぬ。倒してポイントを重ね、ボスは何度か攻撃を当てると倒せる。そしてスコアを競う。
こう考えると、それなりの遊びが成立している。
時間経過でモンスターが増え、ダンジョンから溢れる。
ようはゲームオーバーの演出だ。
戦略ゲームのような遊びもしていたというし、攻める神と守る神がいて対戦していた可能性もある。
カナリッジ
俺からすればカナリッジ
ただ、オーガとスケルトンが戦ったらどうなるか想像すると、たぶんオーガが勝つ。
普人の力では簡単に砕けないスケルトンの骨も、オーガの力なら砕けるだろう。
逆にスケルトンが連携をとったところで、オーガに大した傷は負わせられないだろう。
冒険者基準で考えても、現役時代の親切爺がでかいハンマーを振り回せばスケルトンの骨も砕けそうだ。爺さん無双だ。
単純に俺とスケルトンの相性が悪いだけで、多くの冒険者にとっても、体が大きく、力が強く、動きも速いオーガより、スケルトンのほうが弱いと判断するに違いない。
モンスターの数が少ないカナリッジ
この世界の人間は弱く、モンスターが増えすぎないように間引き要員として造ったのならもっと強くしろよ、と考えたこともあるが、強い人間を造って人間が増え過ぎたら本末転倒なんだろう。
神モドキから聞いた印象だと、神は子供みたいな連中でかなり場当たり的だが、一応バランスは取れている。
自然豊かで環境破壊もなく、人間の増加は緩やかでモンスターの間引きも上手くいっている。
そんな無駄な神の気遣いのせいか俺は苦労している。
大抵のゲームなら雑魚モンスターのスケルトンにすら無双できない。
戦略魔法で地形を変えて動植物ごとモンスターを撃破し「またオレ何かやっちゃいました?」とか言ってみたいのに。
やっぱりチートがほしいな。
俺が信仰している神様、ビブリチッタ様は祈っても何もしてくれないケチな神様だから無理か・・・。
ビブリチッタ様への信仰が揺らいでも困るので、スケルトン退治は切り上げ宿に戻ることにした。
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