115, 5-04 小さきエルフと双子エルフ

前回のあらすじ

 大丈夫だ、問題ない



小さきエルフはピョンっと椅子から降り、トトトッと走ってくる。

そして手のひらを突き出す。

何度も何度も突き出してくる。

「500歳・・・ですか?」

「そんなわけあるかっ!」

(痛い)

小さきエルフは元気よく言った。

「5歳!」

普通の子供だった。

なんか雰囲気あるし、ポーション作ってるし、てっきりファンタジーにありがちなロリババア的な人物かと思ったら違った。



そんなやり取りをしていると、二人のエルフが階段から降りてきた。

「何を騒いでいるのですか?」

ショートカットで薄い赤色と青色の髪と瞳をした二人のエルフは髪色に合わせたローブを着ている。

ローブのたけは短く、ミニスカでニーソックスを履いている。美脚アピールか?この世界にもニーソックスってあったんだな。

小さきエルフ、ロリエルフと同じようなミニハットを頭に載せており、ザ・魔法使いです!といった感じの木製の杖を持っている。

1メートルほどの長さで、魔法刻印もなく、起動球も付いていない。ただの木の杖だろう。

髪色だけ違う美人の同じ顔が並んでいると人形のような印象を受ける。姉妹だろうか。



「じゃあ自己紹介をしましょう」と美脚エルフが言う。

言われてみれば名乗っていなかったなと名乗る。

赤エルフと青エルフは美脚エルフの娘で双子だそうだ。

男はいない。離婚したのか亡くなったのかわからない。

亡くなったのなら美脚エルフは未亡人か・・・。未亡人、響きがエロい。

だが妄想しようとすれば家出令嬢が殴ってくるので我慢する。

美脚エルフは若く見えるが、まぁエルフだからな。

全員数百歳という可能性もある。

女性に年齢をたずねるのは失礼だろうと聞かない。

ロリエルフに聞いたのは例外だ。


双子エルフが夕食を作るため部屋を出ていく。

夕食が出来るまでの間、依頼内容を聞く。

ロリエルフは森に住んでいる森エルフなのだが、一人で街まで来てしまったので、親元に送り届けるという簡単な依頼だった。

簡単な依頼だがエルフ以外の冒険者が街にやってくるのを待っていたという。

森エルフはエニュなんたら様を信仰しており、街に住んでいるエルフは精霊を信仰しているので、街の冒険者に依頼して送り届けた時トラブルになってしまうかもしれない。

エルフ以外なら信仰の違いで揉めることはないだろう、という考えだ。

ロリエルフは親元から離れ二週間も街に滞在している。

他の種族の冒険者が来なかったらどうするつもりなのか聞いてみれば、交流村と呼ばれる場所で一月に一度交流があるため最悪その時に森エルフに預ければいいと考えていたとか。

親が心配するだろう・・・多少のトラブルより早く送ってやれよ。


交流村から森エルフの集落までは徒歩半日なので、今日は美脚エルフの家に泊まり、明日交流村に泊まり、森の集落を目指すことになった。

双子エルフもロリエルフが心配だから一緒に行動するので娘達が暴走したら止めてくれと頼まれた。

落ち着いた感じの二人だったので安請け合いしておく。

暴走といってもいきなり暴れたりはしないだろう。



話が終わり部屋を移動する。

建物の右側が生活スペースで左側がポーション作りなどの作業場らしい。

結局そこそこの長話で夕食にちょうどいい時間になる。

暗くなる前の数時間が夕食の時間だ。

手を洗い、席につく。

パンにスープ、きのこと芋に熱々のチーズをのせた料理。

肉はないが、美味そうだな。

痴女銀狼は早速素手でガツガツと食い始めた。

熱々のチーズを素手で掴んでいる。

俺も熱耐性を付与するイメージで身体強化を使えば素手で食えるが、手が汚れるのでそんな事をする気はない。

飯を食おうとするとロリエルフが俺の膝の上に乗ってきた。

「ジョニー、おイモ」

(俺はお芋ではない)

まぁ、お芋食べさせて、と言っているのだろう。

芋をフォークで刺し、チーズをクルクルと巻いてやる。

熱いのでフーフー息を吹きかけてもいいが、子供のためにそんな事をするのはなんか恥ずかしい。

魔法で冷たい風を生み出し、熱を冷ます。



この世界で風の魔法を覚える人は少ない。

漫画みたいに格好良くカマイタチを生み出しモンスターをバサッと斬り倒すつもりで風魔法を覚えたのだが、普人の魔力量ではそんな事はできない。

エルフも一度に使用できる魔力量は限られているので出来ないだろう。

銀狼族なら出来るかもしれないが、魔力効率は大変悪い。

農民エルフがやっていたように石槍でも生み出したほうがいい。

なぜわざわざ風で?という話になる。

生活の中でも風を使う機会はない。

ルービアス大陸は温暖なので部屋の温度を下げる魔法具もあるのだが、その魔法具で使われる魔法は、周りの温度を下げる、という魔法になる。

前世のエアコンのような工程は必要ない。魔法はイメージだ。

洗濯の魔法具はわざわざ水を出して洗っているが、汚れを判別してピンポイントで落とす、なんてやるほうが時間も魔力もかかる。

乾燥は乾かすイメージで一瞬なので風は必要ない。

風魔法はガッカリ魔法だ。

そんなガッカリ魔法が初めて役立った。

料理の温度を下げるイメージで魔法を使うより簡単だし、これぞ風魔法の使いみちだろう。

・・・まぁ、普通は魔法なんて使わないのでやっぱりガッカリ魔法だな。



温度が下がり、いい感じの熱さになった芋をロリエルフの口元に持っていけばパクっと食べる。

ロリエルフがもぐもぐしている間、俺も芋を食ってみる。

味付けは塩胡椒とシンプルだが美味い。

特にチーズが美味い。

カナリッジではあまり出回ってなかったし、高いので買おうと思わなかった。

きのこも自炊してからはあまり食ってない。

美味い美味いと食っているとロリエルフが言った。

「ジョニー、パン」

(俺はパンではない)

パンぐらい流石に自分で食えよ、とカゴから取って渡してやる。

パンを両手で持ってかじりつくロリエルフ。

ロリエルフがパンに夢中になっている間に飯を食う。

なぜ俺がロリエルフの面倒を見ているのか。

ついさっき会ったばかりだというのに。

だが、お前なんて知らん!あっちへ行け!、というのは可愛そうなので汚れた口元をきれいな布で拭ってやる。



食事が終わり、風呂に入る。

残念なことに美脚エルフとのラッキースケベ的なイベントは発生しなかった。

着替えている最中にうっかり、とか、入っているのに気づかなくて、というアレだ。

俺は、細い足よりむっちりした足のほうが好みなのだが、美脚エルフはなんかエロい。

同じ美脚だが双子エルフにはエロさを感じない。

違いは何なのかわからないが考えても仕方がない。

考えるな、感じろ!というやつだ。


そんな美脚エルフが近づいてきて、「お部屋はどうしますか?」と耳元でささやく。

痴女銀狼にやられるとビクッとするが、美脚エルフがしてくれるとドキッとする。

「出来れば別々の部屋でお願いします」

「あら、てっきりハーレムパーティーかと・・・」

「違います!」

ここは強く否定しておく。

仮にハーレムパーティーだったとしても、人の家に泊めてもらってエロい事はしないだろう。俺は常識人だ。

そんな常識人の俺のもとにロリエルフが挨拶に来た。

双子エルフに連れられて眠そうに目をこすりながら言う。

「ジョニー、おやすみ」

「おやすみ」

ロリエルフも常識を学んでいるのだろう。



部屋に一人、簡易ベッドに入る。

家出令嬢はいない。

そして俺の妄想が始まる。



「お願いします!どうか老師ジョニーの脚術きゃくじゅつをご指南ください」

「簡単に教えることはできん・・・」

「私には必要なのです・・・、亡き夫のかたきを討つために!」

「ふむ、修行は厳しいぞ」

「どんな修行にも耐えてみせます!!」

「ではまずこれに着替えなさい」

「この服は・・・」

「チャイナ服じゃ」

「脚の動きを妨げない武術着ですね」

「フッ、まるでわかっとらんの・・・」

「では、いったいどのような・・・?」

「ただのワシの趣味じゃ!!!!」



久しぶりの妄想に満足し眠りにつく。

明日は忙しくなる。娼館探しだ!!

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