116, 5-05 格差社会

前回のあらすじ

 考えるな、感じろ!



早起きしてこっそり玄関に向かう。

急にいなくなると美脚エルフが心配するかもしれないので書き置きを残す。

家出令嬢に見つかると殴られそうだし、痴女銀狼は襲ってきそうだし、単独調査だ。


家を出ようとするとロリエルフに見つかった。早起きだな。

「ジョニーどこいくの?」

「散歩だ」

子供に嘘を付く俺。

「いっしょに行くーー」

無茶を言うロリエルフ。

娼館調査に子供を連れて行くのはな・・・。

「勝手に出かけると心配されるだろう。大人しく家にいなさい」

「ジョニー、きえちゃうの?」

ションボリするロリエルフ。

無視して出ていくと泣き出すかもしれない。

泣き出せば家出令嬢が起きて殴ってくるかもしれない。

置いていくか連れて行くか悩み、仕方なく連れて行く。

なんか可愛そうだし、娼館調査と言っても娼館に入るわけではない。

娼館があるかどうかの調査だ。

手を差し出してやると、嬉しそうに走ってきて繋ぐ。

「ジョニー、お腹へった」

空腹を訴えるロリエルフ。

じゃあ家にいろよ、と思うが相手は子供だ。

俺も腹減ってるのでなにか買食いしよう。



朝早いが結構な人通りなので、ロリエルフと繋ぐ手の力を少し強め、はぐれないように歩く。

エルフの国なので見かける人々はエルフばかり。

美人とイケメンの群れだ。

皆ローブを着ている。

眼光エルフもローブを着ていたがエルフはこういうファッションなのだろうか?


バターの匂いに惹かれパン屋でちょっと硬いスティックパンを買う。

看板娘は純朴な町娘ではなく前世のモデルも顔負けの美人だ。


屋台で野鳥の串焼きが売られていたので買う。

屋台の店主もイケメンでキラッと爽やかな笑顔。

普人の国ならオッサンなんだがな。いろいろ格差を感じる。


俺一人なら歩きながら食うところだが、小さな子供も一緒にいるので休める場所を探す。

少し歩くと広場があり、周りには白く綺麗な花が咲いた木々、地面は様々な薄い色のタイルが模様を作り、中央には噴水、魔力感知をしてみると魔力の反応があるので魔法具の噴水だろう。

噴水近くにベンチが並び、美男美女のカップル達が座っている。オシャレ感がすごい。

まぁ、実際はカップルかどうかはわからない。市場帰りの中年の商人仲間かもしれないし、親子かもしれない。この世界のエルフは老化しない。

ベンチに座り、ロリエルフにパンを渡してやる。

モグモグと食い始めたので、ロリエルフとの間にパンの入った袋と紙で包まれた串焼きの束を置き、俺も食事を始める。

串焼きが気になり食ってみると、油はあまりなく、味付けはちょっとスパイシーな感じだ。

朝から食う料理ではないが、俺は気にしない。美味けりゃいい。

ロリエルフも串焼きを掴みかじりついた。

「辛くないか?」

「おいしい!」

美味しいと元気よく食べ始めたが、少しずつ食べる速度が遅くなり、口の動きが止まる。

やっぱ辛かったんだろう。

魔法の袋からコップと水筒を出して水を注ぐ。

渡してやるとコクコクと飲み始める。

子供のエルフと一緒にベンチで食事する普人の男。

なんかちょっと浮いてる気がするが、あまり気にしないようにしよう。



食事も終わり、ロリエルフと店に入る。

娼館ではない。魔法具店だ。

カナリッジだと金貨50枚の携帯調理用魔法具。

この店ではちょっと大きいサイズで金貨10枚。

安いので5本買う。

俺一人なら5本もいらないのだが、痴女銀狼がいるからな・・・。

あいつ大食いだし、なんで痴女銀狼のために魔法具買わなきゃならんのかという気もするが、温かいスープを一人で飲んでいたらどんな反応をするか想像すれば買うしかない。



武器屋に入る。

魔法杖は売られているが魔剣はない。

無いものは仕方ない。



服屋に入る。

ローブがどんなものか興味がある。

ロリエルフもローブを着ているが、街中で幼女のローブをめくる気はない。

「ジョニーいやー」と叫ばれたらどうなるか。

最悪、衛兵に連行されるだろう。

幼女のローブを脱がそうとして奴隷落ち、ド変態だ。俺は変態ではない。


たたまれて置かれた見本のローブを手に取る。薄手のローブだ。

ルービアス大陸は温暖なので厚手のローブなんて羽織ったら汗だくになる。

ただ、薄手だとしてもローブは暑くないのか?

ローブの内側を見てみると魔法刻印が刻まれていた。

普通の服屋に来たはずだが・・・。

無駄にイケメンの店員に聞いてみると、魔法の効果は冷却。

魔力を流すとちょっと涼しくなるそうだ。

暑いなら脱げばいいだろ、と思うのだが、これは訓練の一環でもあるという。

ローブを着て魔力を流すと涼しくなる。

これを子供の頃から繰り返して魔力コントロールを学ぶのがエルフの文化らしい。

「お客さんは普人だよね。ずっと身体強化を使っているけれど・・・冒険者かな?」

「はい、そうです」

娼館調査の予定だったので革鎧は着ていない。

「ずいぶん魔力が安定してるね」

(魔力安定で俺スゲェ!なのか?!)

「ま、エルフなら普通だけどね」

(普通なのかよ)

上げて落とす、という嫌がらせのようなイケメン店員の接客にテンション下がり店を出る。



いろいろな店を回り、商品を見ながらそれとなく店員に聞いてみた感じだと本当に娼館はないらしい。

なんのためにエルフの国に来たというのか。

ロリエルフがちょっとウトウトし始めたので美脚エルフの家に帰る。

魔剣も売ってないし、ロリエルフを親元に届けてドワーフの国に行こう。

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