113, 5-02 途切れた道
前回のあらすじ
親父にも殴られたことないのに
ミリアというエルフの国境の街にやって来た。
前世なら城塞都市のように堅牢になるのだろうが普通の街だ。
壁はあるが、これはモンスターへの備えでどの街にもある。
大きさはカナリッジの4倍、ヘブリッジの2倍といったところで、今まで見た街と変わらない。
開拓村は内戦孤児を集めて作ったと眼光エルフは言っていたので、物騒な世界なのかと歴史書を読んだこともあるのだが、この世界の戦争はルールを決めて平原で戦うのが一般的らしい。
なんだかしょぼい気もするが、この世界の人間の歴史は2千年程度。
前世の戦争もいきなり三国志や戦国時代のように天才軍師が活躍するようなものではなく、兵隊を並べてまっすぐ突っ込ませる、というシンプルなものが発展していったと聞いたことがある。当然詳しくは知らないが。
そもそもこの世界はモンスターとの戦いで忙しく、人間同士で争う余裕がない。
街の周りにはやはり畑があり、エルフが農作業をしている。
まぁ、エルフだって
しかし、そんな農民エルフ達に護衛はいない。
普人の国なら必ず武装した人間がいたのだが・・・。
農民エルフAが指差し農民エルフBに話しかけている。
指差した先を見てみると、そこには虎のような生き物がいた。
ちょっと遠いのでモンスターなのか動物なのかはわからない。
畑に視線を戻すと5人の農民エルフが空中に1メートルほどの石槍を5本作り出していた。
その石槍は高速で飛んでいき、虎を串刺しにした。
そして何事もなかったかのように農作業に戻る農民エルフ達。
普人の冒険者よりエルフの農民のほうが強そうだ。
あれなら護衛など必要ないだろう。
街壁を見てみると魔法具が埋め込まれている。
淡く光を放っているがランプの魔法具ではない。
(なんだろなあれ)
魔力感知をしてみれば魔力の流れがあるので間違いなく魔法具だが今まで感じたことのない魔法だ。
普人の国にある魔法具はドワーフ製。なんか条約を結んでいると商人が言っていた。
エルフも魔法具を作っているのだがドワーフ達が作る魔法具のほうが優れている。
(う~ん、気になる)
気になることは人に聞こう。
街門には普人の国と同じく衛兵が待機していた。
そのうちの一人は女性だった。エルフの女衛兵だ。
ベリーショートの金髪の女性。
俺は、ここまで髪が短い女性というのは好みではないのだが、エルフはやはり美形だからかベリーショートも似合う。
ハリウッド女優みたいだ。
そんな美人の女性に話しかけてみる。
「すみません。ちょっといいですか?」
「はい、なんでしょう」
「あれは魔法具ですか?」
「あれはこの街で開発された魔除けの魔法具です!」
どことなく誇らしげに言うエルフの女衛兵。
「魔除けの魔法具?」
「ちょっとだけモンスターが寄ってこないのです!」
「ちょっとだけ・・・ですか?」
「ちょ、ちょっとだけでも凄いんです!凄いことですよ!!やはり魔法具づくりはエルフ!!ドワーフよりエルフのほうが凄いんです!!!」
グーにした手を上下に動かし必死な様子で言うエルフの女衛兵。
(なんかこの人かわいいな)
ちょっとだけ、というのがどの程度なのかわからないが、本当にモンスターを寄せ付けない効果があるならかなり凄い魔法具だ。
街壁に埋め込むぐらいだし、それなりの効果はあるんだろう。
魔除けの魔法具の開発が進めば人間の生活圏は大きく広がる。
だからそんなアピールしなくても凄いとわかるのだが、エルフの女衛兵は必死だ。
美人で衛兵だからとっつきにくい感じかと思ったが、ちょっと天然っぽい。
いい感じにおだてればエッチな事も出来るかもしれない。エロフかもしれない。
「凄いですね。やっぱりエルフですね!」
「そうです!凄いんですよ!!」
「もうちょっとエルフの凄さを聞きたいので一緒に食事でも―――」
俺がエルフの女衛兵をナンパしていると、家出令嬢が殴ってくる。痛い。
「何を言っているんだお前は!」
「情報収集だ」
「食事に誘おうとしていただろう!」
「それの何が悪いんだ」
「悪いに決まっている!!」
(決まってはないだろ・・・)
「おい!そこ、何をしている」
家出令嬢の暴力に気づいたのか、男の衛兵が注意してくる。
(言ってやってください)
「そこの普人二人、街の入口で騒ぎを起こすのは犯罪だ!奴隷落ちしたくなければやめなさい」
(同罪にされた・・・)
エルフの国でも犯罪者は奴隷になるようだ。
奴隷は嫌なので冒険者ギルドの場所を聞いてエルフの女衛兵と別れる。
冒険者ギルドへの道すがら、家出令嬢がグチグチと文句を言ってくる。
「全くお前は、ちょっと目を離すとおかしな事をする・・・」
おかしな事など何もしていない。エッチな事を出来るかもしれないと期待しただけだ。
だが俺を絶望に突き落とすようなことを痴女銀狼が言った。
「大丈夫だろ。エルフは普人との結婚禁止してるし、性欲が薄い連中だからな~。娼館もない国だぜ」
(なん・・・だと・・・!?)
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