057, 3-11 正しき選択

前回のあらすじ

 くっ、殺せぇ!!



生意気男子と涙目女子。

どうやら、孤児院を出たばかりらしい。

エロシスターが今どうしているのか気になるが、封印されし闇が怖い。

とりあえずゴブリン退治に連れて行き、様子を見る。

生意気男子は全く戦い方を知らない。涙目女子はナイフ投げの練習をしていたと言う。

俺は、剣術しか教えられないので、木の棒を使って基本を教える。

生意気男子は文字の読み書きすら出来なかった。ビブリチッタ様の孤児院にいたのに。理由と聞いてみると、みんなが勉強しないと言うから、勉強しなかったそうだ。

これは、あれだな。「テスト勉強何時間した?」「いやいや全然してないわ」というノリだ。実際はみんな勉強しているのだが、何故か勉強してないと嘘を付く。この世界にもあるのか。

文字の読み書きは出来た方がいいが、そこまで面倒見きれない。涙目女子に教えて貰えと言っておく。



ゴブリン討伐で稼いだ金を全部やったのに、無駄遣いをして金が無い、と腹を空かせた二人を注意し、仕方なく飯を奢ってやる。

給仕の女が、尻を振りながら、俺のスープを何度もこぼす。

その度にチップを払って、新しいスープを持って来てもらう。

(ボッタクりやがって・・・)

いっそ尻を触ってやろうかと思うが、殴られるのは嫌だ。

なんだかムラムラした俺は、涙目女子の胸を見る。

お椀型の・・・いい、おっぱいをしている・・・。

(えい!)

涙目女子の胸を触る俺。

生意気男子が騒ぐが、俺は変態ではない。これはやましい気持ちではない。善意の魔力感知だ。エロシスター直伝の巧妙なセクハラだ!

固まっていた涙目女子にそれを説明してやれば、「感じる・・・」と呟く。エロい意味ではなく、魔力を感じる、と言っているのだろう。

生意気男子にも、ついでに魔力感知をしてやる。

魔力感知で金を稼ぐなら、申請書出して教会で商売しないと駄目だが、無料なら別に問題ない。



封印されし闇のせいで最後まで妄想が出来ず、おっぱいを触り悶々とする俺は思った。

(そうだ、娼館へ行こう)

俺は15歳、まだ童貞だ。前世を含めると魔法使いになれる年齢を超えている。実際魔法を使える。しかし、童貞卒業したら魔法使えなくなります、とか、流石にないはずだ。

毒舌プリーストのストーキングを警戒し、娼館に入る俺。

身分証を求められたので、受付の男に冒険者証を渡すと、「こ、これは!?」みたいなリアクションをされる。

15歳でBランク冒険者の俺に驚いているのだろう。さすが異世界転生者、俺強えぇ!である。

しかし、違った。

「申し訳ありません。その、娼館の利用は16歳からでして・・・お客様は15歳ですので・・・その・・・」

(絶望した!冒険者登録した時の俺に絶望した!)

なぜ俺は年齢を偽らなかったのか!たった一歳ごまかしていれば娼館利用出来たというのに・・・。

娼館のシステムについて気になるが、なんか気まずい。

俺は娼館を出て、本屋に行く。わからない事は本で調べる。立ち読みは出来ないので、何冊か買う。



娼婦は、娼館でしか働けない。個人で客を取って、というのは違法だ。

俺も、道で売り込みする女なんて見たこと無い。

娼館に登録した娼婦は、魔力感知をしてもらえる。自己回復魔法が使えれば、性病をすぐ治せる。

娼館登録の理由も、たぶんこれだ。普人の国では病気関連の対策に気を使っている。

魔法の訓練をし、身体強化で客とのトラブルを防ぎ、避妊も魔法でする。つまり、娼婦は全員戦えるわけだ。ちょっと怖いな。

値段は娼婦の人気によって違うが、金貨が基本だ。プレゼントをすれば、サービスも良くなる。キャバクラみたいだ。キャバクラなんて、行ったこと無いが。

娯楽の少ない世界、体を売ることに抵抗がない美人は、結構、娼婦になるらしい。アイドルみたいなもんだ。嫌な客は拒否できる。花魁おいらんに似ている気がする。高収入だし、人気職だ。

そして、一番肝心なことだが、この国の成人年齢は16歳だった・・・。思えば、孤児院も16歳まで暮らしてよかった。

『娼館者への道~これは、伝説の物語だ~』という本に載っていた。



俺の全財産は約金貨1000枚。特に節約していないが、散財もしていない。

冒険者としては小金持ちだが、店持ちの商人なんかは一月ぐらいで稼ぐ額だ。店持ちは、悪徳領主にかなり搾取されるそうだが・・・。

散財しなかった理由は、魔剣を買おうと考えていたからだ。

魔剣を手に入れ、異世界転生俺強えぇ!の道。

娼館者への道・・・。

娼館者だな。娼館者一択だ。俺強えぇ!とか、どうでもいいだろ。伝説みたいだし、娼館者だ。



俺が娼館者を目指そう、と選択した数日後、無料で魔力感知をした噂が冒険者に広まったようで、魔法が使えない新人冒険者が度々訪ねて来る。

かなりウザイが、「おっぱいを触りたかっただけです」とは言えない。仕方なく魔力感知をしてやる。


そんな事をしていると、『恥知らず』の二つ名で呼ばれる冒険者が絡んでくる。

「ハッ、俺らの時代は必死に金を貯めて魔法を使えるようにしたもんだぜ。それを無料でだと・・・ふざけやがって・・・」

そう言い、近づいて来る恥知らず。

生意気男子が何故か向かって行くので止める。

俺は、こいつに勝てない・・・。というか、誰も勝てない。

新人冒険者に絡むテンプレ展開で付いた二つ名、ではない。

酒が弱いくせに酒を飲み、定期的に嘔吐して、床を汚す事で付いた二つ名だ。

千鳥足で向かって来た恥知らずは転び、床に手をついて胃の中のものをぶちまける。

汚くて近づく事すら出来ない、最強の男だ。

俺は、離れた位置から解毒魔法をかけてやる。

「すまん」と言い、床の掃除を始める恥知らず。

(酒に弱いなら、飲むなよ・・・)


汚いので入口近くの席に移動すると、俺が無料で魔力感知をしていると聞きつけた、冒険者ではない男がやって来た。

さすがに冒険者以外にまでやると切りが無い。

なにより魔力感知は教会の大事な収入源だ。

俺は、多少脚色を交えた孤児院生活を話し、男を撃退する。


次から次へと面倒くさい。俺が何をしたというのか。涙目女子の胸を、ちょっと触っただけだ。

しかし、これも娼館者への道に立ち塞がる試練だと考えて耐える事にした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る