027, 2-03 冒険者ギルドと親切爺
前回のあらすじ
イケメンに
冒険者か・・・俺強えぇ!するなら、やっぱり冒険者だろうか。
冒険者ギルドは広く、酒場も併設されているようで、中々の賑わいだ。
受付カウンターには受付のお姉さんが5人いた。
受付のお姉さん、なんだか響きがエロい。
そして俺の妄想が始まる。
「あらボクどうしたの?」
「道に迷っちゃったんだ。グスン」
(ああ・・・なんて可愛い男の子なの)
「お姉さんとちょっと奥で休憩しない」
「でもシスターが知らない人について行っちゃダメって・・・」
「大丈夫。こうして仲良くお話をしているんだから、もう立派な知り合いよ。それに・・・お菓子をあげるわ」
「お菓子?ホント!」
「ええ、とっても美味しいお菓子よ。とってもね♥」
俺が、そんな妄想をしながら覗いていると、おそらく魔物の鱗を使ったんだろうスケイルアーマーを着て、でかいハンマーを持ったデカイじいさんが話しかけてきた。
「おい坊主、そんなところにいると危ないぞ」
「ここって冒険者ギルド?」
「ああ、そうだ。興味があるのか」
「うん!僕、将来冒険者になるんだ」
「そうか・・・その歳から冒険者を目指すのはどうかと思うが・・・まあ人それぞれか」
ん?どういう事だ。冒険者の評価は低いのだろうか・・・。
気になって色々質問していくと、じいさんは親切に教えてくれた。
ファンタジー作品に登場する冒険者は、低ランクは日雇い労働者みたいな扱いだが、ランクが上がると貴族や王族とつながりを持って一定の評価を受ける、成り上がりの登竜門!みたいな職業だが、この世界では全く違うようだ。
この世界の冒険者は、魔法具を使うための魔石集め要員、その他、細かいモンスター関係の仕事をする人という職業であり、ランクにあまり意味はない。
Sランクが最上級
Aランクが上級
Bランクが中級上位
Cランクが中級
Dランクが中級下位、下級上位
Eランクが下級
Fランクは登録したての新人
ランクによって受けられる依頼が違う、なんてことはなく、依頼票にあるランクはあくまで冒険者ギルドが目安として設定しているもので、受けて失敗しても自己責任。失敗とは大抵死ぬことを意味する。
このランクの昇格条件もギルドが設定しているが、前衛の戦闘職と後衛の支援職が同じ戦闘力のはずもなく、パーティで昇格条件達成しても昇格できるため、その評価はかなり曖昧だ。
貴族が騎士を引き連れて登録し、パーティを組んでその日のうちにAランクに!ということも出来てしまう。
まぁ、この世界の貴族はそんなことしないようだが。冒険者の地位にそんな価値はない。
だから、依頼票ランクもパーティーで昇格したなら達成できるでしょう、というものでしかなく、下位だから受けられないということはない。
そして当然、上位だからといって報酬が変わることもない。
じゃあなんのための冒険者ランクだと思うかもしれないが、パーティを組むときの目安にはなる。
そんな職業のため、いろんな街に行きたい人、モンスターと戦いたい人、冒険したい人、なんの技能も持っていない人、などがなる職業だそうだ。
荒事を生業にしているため血の気が多いものもいると言うが、街の人に迷惑をかけるようなことはなく、酒場で酒を飲んで冒険者同士がちょっと殴り合いをする程度だとか。酒を飲んで殴り合いをするなら飲むなよ・・・。
街には必要だけど、別に好かれても嫌われてもいない命がけの危険な職業。それがこの世界の冒険者だ。
命がけなのに尊敬されないのか?と思い聞いてみるも「街に必要な仕事なんてたくさんある。別に命をかけるから偉いなんてことはないし、街壁の外の仕事は基本危ない」と言われてしまった。
そして驚くべきことに、この冒険者という仕事を作ったのは異世界転生者だという。まぁ、俺だけが特別だなんて訳ないよな。
1200年ぐらい前に、冒険者ギルドと商人ギルドを作り、今残っているのは冒険者ギルドだけ。
商人ギルドがなくなった理由は、街ごとに利権があるのに、商人ギルドなど作っても利権争いで全く共同体としての力を発揮せず、誰も利用しなくなったのだとか。
街ごとに商工会があり、街の商人が困ればそこを頼る。街の外から来た商人が伝手なく商品を売りたいときも、客を探すため商工会を訪ねる。街の外から来た商人が困ったら?自己責任です。
冒険者ギルドが残った理由は、当然モンスターが居る世界だからだ。みんなでモンスター狩りましょう、という価値観で残っている。モンスターには街とか国とか種族とか関係ない。この世界の人間の敵だ。
冒険者について話してくれた親切なじいさん、親切爺は言う。
「坊主は頭がいいようだし、外の世界が見たいなら、行商人にでもなったほうがいいんじゃないか」
しかし俺は、俺強えぇ!してみたいのだ。
「う~ん、僕はモンスターと戦いたいんだ。強くなりたいんだ!」
「そうか、じゃあ今のうちから訓練しておくんだな。入口の近くでウロチョロすると危なから、そんなに気になるなら中に入ってしまえ」
そう言うと親切爺は冒険者ギルドに入っていった。
別に、今すぐ冒険者になるわけでもないので、冒険者ギルドには入らず俺は帰ることにした。
孤児院に帰る道すがら街を見る。
この街の人口はわからない。人口調査などしていない。何となく俺は10万人ぐらいは住めそうな広さだなと思っているが、実際はその半分以下しか暮らしていない。
家と家の距離も、前世の日本の郊外住宅くらいで庭がある家もある。
じゃあ土地がたくさん余っているのかと言えば、それほど余っているわけでもない。
大部分は農場で家畜を育てたり、麦や米などの穀物を中心に育てている。
街には川も流れており、それも街壁で覆われている。もちろん流れをせき止めないようにだ。
街壁と川の境界は金属の棒で狭くしてあるが、小型のモンスターが入ってくることもあるので、常に衛兵が待機し警戒している。
近くには人工林がある。俺は最初、公園みたいなもんかな?と思っていた。子連れの家族がピクニックみたいなことしていたからだ。
しかし神父様が、あれは畑の栄養のためだ、と教えてくれた。
この世界は季節の変化がない。全く無いわけではないが、基本的に温暖で一年中農作物を育てることが出来る。
しかし一年中、麦や米を育てていれば畑に栄養がなくなる。普通なら肥料となるが、そこは魔法がある世界。
人工林や川の水や泥から栄養を移す魔法を使えば、あら不思議、土の栄養は回復し常に作物を育てることが出来る。土の濃度もおそらくこの魔法で調整しているのだろう。
そして魔法の力で多少成長促進も出来る。あくまで多少であり、使えばすぐさま収穫とはならない。
開拓村は俺の知らない農業知識で溢れていたが、肥料がなかったのはこのためだ。普人の国には畑に栄養が必要という知識はあるが、肥料はないようだ。
俺の生まれた村は色んな野菜を育てていたので、栄養がなくならないようなローテーションを組んでいたのだろう。
麦や米を育てている開拓村もあったはずなので、そういう村には魔法使いがいたのかもしれない。
街壁の外にも畑はあり、そっちは野菜を中心に育てているそうだ。街に入る時は暗かったし、街壁の大きさに注目していたので見逃したんだろう。
親切爺の言っていた『街壁の外の仕事は基本危ない』とはおそらくこの畑仕事のことだ。
一年中農作物を育て収穫して、なんとか少しだけ備蓄できるぐらいの余裕が生まれる。そりゃ開拓村も必要かもしれない。
壁で囲まれた街なんて、すぐ人口増加で対処できなくなりそうだが、人は驚くほどあっさり死ぬそうだ。
モンスターに殺されたり、病気で死んだりする。
公衆衛生にもかなり気を使っているし、開拓村でも手洗いとか徹底していた。うっかり騎士もうっかりなくせに、病気と言ったらすぐ村を出てくれたし、この世界の常識なのかもしれない。
ただ、街の人間が全滅するなんてことはなく、病気が流行っても魔法で治せる。予め病原菌を殺す魔法とかないのか。
そして、でかい街壁やコンクリートみたいな街道、あれも魔法で作っている。
街道を巡回する騎士などが補修点検し、大型モンスターやボスモンスターを警戒しているそうだ。
水や街壁なんかは魔法で生み出せるのに、農地の栄養は生み出せないのか。魔力量の問題か、イメージの問題か。
中途半端に現実的で、中途半端に魔法で解決する、この微妙なファンタジー世界。
しかし文句は言えない。俺は今生の両親を思い浮かべる。開拓村の魔法がない厳しい暮らしを。
俺は強く生きねばならない。この世界の人間も一人一人頑張って生きているのだから・・・。
強くなるためにはどうすればいいのか。
わからないことは人に聞こう。
俺は孤児院に帰り着く。もう随分と暗くなっている。
エロシスターは俺を心配して待っていたようなので、そのおっぱいに力強く飛び込むことにした。強く生きねば・・・。
「ジョニー今までどこに行っていたの?心配したのよ」
「シスター、僕、冒険者になるよ。どうやったら強くなれるかな」
「ジョニーは頭がいいから冒険者にならなくてもいいのよ」
「僕は冒険者になりたいんだ。だから強くなる方法を教えてよ」
俺の意志が固いと見たのか、何事か考え出すエロシスター。眉を寄せるその困った顔は非常にエロい。
そして少し悩んだと思ったら、パッと花のように笑う。笑った顔もなんかエロい。
「私にいい考えがあるわ。明日から訓練ね」
そういうエロシスターに俺の妄想は止まらない。
これはあれか。シスター師匠のムチムチ格闘教室!が始まってしまうのか!!
そして俺の妄想が始まる。
「さあ、どうしたのジョニー!拳を突き出すのよ」
「でもその・・・シスター・・・あの・・・」
「師匠と呼びなさい!どうして目をそらすの!ちゃんとこっちを見なさい!!」
「でもシスター師匠の・・・その・・・おっぱいが・・・えい!」
「おっぱい?キャッ!どうして早く言ってくれないのジョニー」
「だってシスター師匠が拳を突き出せって・・・」
「もう、ジョニーはエッチなんだから!」
そんな幸せな妄想を思い浮かべながら俺は眠るのだった。
しかし次の日、俺の前に現れたのはイケメン衛兵だった。
「よしジョニー、今日から俺と訓練だ。師匠と呼ぶように!」
一体どうしてこうなった!
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