003, 1-02 怒りの三歳児
前回のあらすじ
きゃーーー
きっとこれは、異世界転生というやつだろう。
なぜ言葉がわかるのか。なぜ三歳で記憶が戻ったのか。
そんなことはどうでもよかった。俺は怒りに震えていた。
朝起きて、怒りに震えて幸薄女が用意した飯を食う。
不味くもないが、美味くもない。だからまた怒る。
朝飯を食い終わると、優男は家を出ていく。
幸薄女は家の掃除をした後、内職のようなことをしている。
俺はじっと座って怒っていた。
トイレに行きたくなったが、家にはないようなので、仕方なく家を出てトイレを探す。
何処にあるかなどわからなかったが、人と話したくなかった。
周りの景色は怒りでよく見えない。
臭い建物を見つけたので入る。
ボットン便所だ。なんで水洗じゃねぇんだよ!俺は怒る。
仕方なく用を足し、家に戻っても怒り続ける。
気づくと夕方になっており、優男が帰ってきた。
幸薄女が作った夕飯を食う。
どうやら食事は一日二回のようだ。なんで三食じゃねぇんだよ!俺は怒る。
布団を敷いて眠りにつく。こんなに怒っていて眠れるのかと思ったが、そこは三歳児、自然とまぶたが重くなる。
次の日も、朝起きて、怒りに震えて幸薄女が用意した朝飯を食い、一日中怒りに震え、トイレでも怒って、夕飯を食って眠りにつくまで怒る。
そんな生活を3日も続けていれば多少冷静になって俺は思うのだ。これはまずい。
怒りが収まる気配が全くない。
人の怒りなど長く続かないと聞いたことがあるが、3日前よりひどくなっている気がする。
なんとかしなければ。人に当たるわけにもいかないし、となると物に当たるべきか。
しかし家の中で暴れるのはまずい。俺は家を出る。
そこには畑があり、優男が土をいじっていた。うちは農家だったようだ。
周りを見渡すと家の近くには森があった。俺は石を拾い、森に向かって投げる。
少しだけスッキリした。石を拾い、森に投げる。
殺しやがって・・・。よくも俺を殺しやがって・・・。
記憶を探るも、俺を轢き殺した運転手の顔は、女性を轢く瞬間だったため見えなかった。
男だったのか。女だったのか。耄碌爺の暴走運転か。若者の無免許運転か。
飲酒運転や居眠り運転、もしかしたら病気の発作など止むに止まれぬ事情があったのかもしれない。
だが怒りは収まらない。俺は石を投げる。
殺しやがって・・・。よくも俺を殺しやがって・・・。
朝起きて、飯を食い、家の外に出て石を拾う。それを森に向かって投げる。三歳児なので体力はない。
疲れたら、家に戻って昼寝をし、起きたらまた石を拾って、森に投げる。
そんな生活を続けていれば当然、家の周りの石がなくなる。
なんで石がないんだよ!俺は怒る。
仕方がないので村を徘徊し石を拾う。たまに誰かが話しかけてくるが無視する。それどころではないのだ。
森に石を投げるとたまに木に当たる。
なんで木に当たるんだよ!俺は怒る。
木に怒りをぶつけようと木に向かって石を投げると外れる。
なんで外れるんだよ!俺は怒る。
そうして俺は怒り続ける。ある朝、幸薄女が言ったのだ。
「今日から四歳ね」
俺は四歳になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます