171,腰掛神社と七曲

 アオダイショウを仲間に加えて柳谷やなぎやとを歩く。田んぼを貫く砂利道を抜けたら細い坂道を上がって道路へ。地元ではそこそこ知れた腰掛こしかけ神社の前に出た。森の中にあって鬱蒼としている。夜はクルマで通っても怖いと思う。


 腰掛神社は基本無人の小さな神社。参道は50メートルくらい。通りかかった挨拶として参拝し、そこを後にした。


 歩道のない狭い切通を進む。ざわめく木々、緑が深くて木漏れ日は眩しくない。さらさらざわざわ、ぴよぴよホーホケキョ。


「うーん、空気が美味しいですなぁ」


「割とクルマ通り多いぞこの道」


「ゲホゲホ。ううっ、なんだか胸が苦しくなってきたぞい」


「市街地より余程マシだけどな」


「ワーテルロー(わかってるよ)、オーバーリアクション」


 そんなこんなで里山公園をクルマで出発。結局アオダイショウはまどかちゃんの首に巻き付いたまま。車内で流れる曲は森の静けさで癒されていた心をブッ壊すマキシマム ザ ホルモン。いまは『What's up people?!』が流れている。ヘビーなサウンドはヘビに迷惑。


 藤沢伊勢原線を少し藤沢方面へ進んだクルマは丁字路を右折して小出県道に入った。


 緩やかな下り坂とカーブ。


 その先急に、ヘビのように連続する急カーブと下り坂。


 市内随一の難所で事故多発エリア、七曲ななまがりだ。


 制限速度は時速40キロ。しかしそんな速度で走ったら下手すると事故る。


「なんだあのクソ四駆!! こっちはエンブレ使って安全運転してるってのによお!! ◯ねやマジ◯ねクズ!!」


 木々が生い茂る七曲を下っている最中、40キロくらいで上がってきた対向の大型四駆がセンターラインをはみ出してきたのでまみちゃん激怒。急カーブなので対向車の姿は擦れ違う直前まで視認できないから突如現れる。ぶつかる領域まではみ出してきても路側帯が僅少なので避けようがない。


「ブッ◯しに行く?」


 まどかちゃんがまみちゃんの殺意にノッてきた。


 私もブッ◯したいあのクソイキり四駆野郎。


「ここじゃ引き返して追っかけらんないからな。ドラレコの録画見て顔とナンバー覚えてこんど見かけたらシメとくわ。知り合いにバキュームカー持ってるヤツいるからよ」


 バキュームカーで何をするつもりなのかは知らんけど、深く突っ込まないでおく。

 

 続いて湘南台しょうなんだい駅行きのバスがゆっくり上がってきた。こちらもセンターラインをはみ出してるけど、大型車は物理的に仕方ない。ゆっくり走ってたからかまみちゃんも何も言わなかった。


 気性の荒い連中を乗せたクルマはなんとか無事故で七曲を抜け、右にガソリンスタンド、右斜め前にコンビニ、左にバス停、左斜め前に空き地がある堤坂下つつみさかした交差点に到達。信号待ち。『What's up people?!』が流れ終わった。


 七曲は歩道も路側帯もない区間があるから、徒歩や自転車での通行はとても危険だし自動車にとっては邪魔。里山公園や湘南ライフタウン、湘南台方面へ抜けるときはガソリンスタンドの裏手にある脇道を推奨。脇道は車一台が通れるほどの幅があり、ゆったり進める。七曲、七つのまとまったカーブを造成するくらいなので、急な坂がある。


 その後私たちは登夢道とむどうでラーメンを食べ、巡ちゃんの部屋に着いて街案内は終了。


 そして約3週間後、エンタメフェス本番を迎えるのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る