130,すばな通り!
「いやあ、水族館楽しかったですなあ! これだけで一日終わる!」
イルカショーやコツメカワウソを見て水族館を出た私たちは人混みの中、江ノ島を右手に片瀬川に架かる橋を渡っていた。
「次はどこ行くの?」
「江ノ電にでも乗らないかい? この辺はだいたい自転車で通るから、なかなか乗らないであろう?」
「そうだね、江ノ島駅から? それとも
「江ノ島か腰越か、それが問題だ」
ここから江ノ島駅と腰越駅までの距離はあまり変わらない。腰越駅のほうが鎌倉寄りではあるけど、特にリードする理由がないし、どちらの駅でも乗る電車はきっと同じ。
「どっちにしろちょっと歩くけど、江ノ島からが無難かな」
「うむ、そうしよう」
地下道に入り、国道134号線を潜って交番の脇へ出る。そのまま片瀬すばな通り商店街に入って直進すれば江ノ電の江ノ島駅に辿り着く。
若者を中心とした観光客でごった返しているすばな通り。土産物屋、ラーメン屋、プリン屋、旅館、カフェなどで構成されている観光客をメインターゲットにした商店街。八百屋、魚屋、肉屋、みたいな一般的な商店街とは趣が大きく異なるお洒落志向。
茅ヶ崎のサザン通りも一見観光客をターゲットに店を並べたように見えるが、サザン神社を除けば居酒屋、焼肉屋、バナナジュース屋、洋菓子屋、本屋、ふとん屋など、ほぼ市民向けの店で構成されている。市民の生活空間を観光客が楽しんでいる格好。
アトラクションを楽しむ藤沢に対して、生活空間を楽しむのが茅ヶ崎の観光。隣町でありながら趣向が180度違う。
そんなことを思っている間に、江ノ電の江ノ島駅前に辿り着いた。
「やあピコリーノ、元気かい?」
沙希が話しかけたのは、江ノ島駅の出入口前に設置された金属製の車止めと一体になった四羽の小鳥、ピコリーノ。茅ヶ崎やその他の土地でも見られるけど、ここのピコリーノは服を毛糸の服を着ている。しかも毎月着替えるらしい。
「可愛い」
つぐみが微笑んで、ピコリーノの帽子に人差し指でちょこんと触れた。自由電子くんもそれを真似た。しかし無表情。私も心の中で「ちゅんちゅん」と言いながら続いて鳥の頭を撫でた。
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