鑑識の鋏塚君の事件ファイル最終章~エピローグ2~入交俊彦

鑑識の鋏塚君の事件ファイルシリーズ

最終章~エピローグ~入交俊彦

『それぞれの道 Side入交俊彦<イリマジリトシヒコ>』

 先日起きたテロ事件によって刑事課の皆から『元組対四課の鬼瓦さん』と強面ながら親しまれた【鬼瓦権瓶<オニガワラゴンペイ>】が殉職した。その存在感は大きく佐波読課長体制に入ってからの刑事課の副官的ポジションにつく場面もあったりした。

 中でも特に喪失感にうちひしがれているのが鬼瓦と警察学校から同期で同世代の【入交俊彦<イリマジリトシヒコ>警部】である様に見受けられた。

 入交の隣にあった鬼瓦のデスクは新しいものに変わりかつての面影は既にない。


「鬼瓦…なんでお前が…」

 そう悔やみ続けて初七日・四十九日と法要が営まれていき、多くの人がショックから立ち直る中で入交は憔悴していった。


 四十九日の翌日から入交は休職することになった。

 そして、ショックから立ち直ることもないまま翌月には入交の妻【未来流<ミクル>】が佐波読課長に要件がある旨のアポイントをとって刑事課を訪れた。課長は未来流を別室に通した。


「主人が警察官の職を辞すると言っています。もうこれ以上警察官を続けたら精神的にまいってしまう。佐波読課長にこれを渡してもらえるかとこれを託されました。」

 未来流が渡そうとしているものの表面には『退職願』とだけ書かれている。これを受理したら入交警部まで刑事課から居なくなってしまう。警察も組織である以上欠員が出ればどこかから補充要員が送られて人数だけは元通りになるのだ。


 佐波読課長は唸って考え込んだ。しかし、本人の選択を尊重した。

「わかりました。退職願を受理致します。私個人の意見としてご主人にカウンセリングを受けられる様にすすめてあげてください。私個人からはその位のことしか…」

「いえ、ありがとうございます。早速主人にカウンセリングを受けさせてみます。短い間でしたが私もこの秋庭署で勤務できたことを入交俊彦共々誇りに思います。」


 後日知ったのは入交は精神的にまいっていたらしく『鬱病』の気配があった。早めにカウンセリングを受けて本格的に病になる前に快方に向かった。


 警察から離れた入交はその後有名警備会社に再就職して健康的なセカンドライフを送っている。


 「鋏塚君、俺は元気でやっている。今までありがとうな!」


 突然届いたハガキには満面の笑みをしている入交夫妻の写真がプリントされていた。

(Side 入交俊彦おわり)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る