ボクがいつ、女の子だって言った?

葉月 僅

第1話

 ちょうどいい温度の、心地良い春風が桜の花びらを舞わせる。

そんな、最高の始まりを迎えられそうなとある春の日、ボクの学校で入学式があった。


 入学式終わりの簡単なホームルーム。クラスメイトの顔をとりあえず頭に刷り込んでおく。

初めて会う人たちばかりだからか、みんな少し緊張しているような顔をしている。


「まぁ……ボクよりかわいい人はいないかなっ」


 と満足気に、けれど人に聞こえないように呟く。とは言っても、滅多にボクよりかわいい人なんていないんだけど。


そんな調子で色々考えているうちに、退屈なホームルームは終わった。


「「さようならー」」


一斉に挨拶をして、ばらばらに帰る。

チラチラと他の人からの視線を感じて、別に見られて悪い気はしないけど、なんとなく勘違いされてるところがあるなー……と思いながら家に帰った。


家についてゲームをして、兄さんと晩ご飯を食べていた。

ちなみにゲームをするようになったのも兄さんの影響だった。すっかりはまって勉強とのバランスを保つのが大変。


「んでさー、兄さん。全然かわいい人がいなくて」


「まぁお前は見た目いいもんな」


「そういう兄さんこそ見た目はいいよね。中身は難ありだけど」


「む、ただ少しアニメやゲームにハマりすぎただけだし、お金も自分で少しは稼いでそこから出すときもあるんだからいいだろ」


「……うん、ソウダネ」


「なんでそんなに棒読みなんだ……」


そんな会話を兄さんとしていた。

両親は毎日家には帰ってくるが、夜は遅い。朝も遅いが。

ボクが小さい頃からそうだったから寂しいとは特に思わないし、朝ごはんと晩ご飯を当番制で作ることにも慣れた。お陰でだいぶ料理が上手くなった気がする。

ちなみに今日は兄さんが作った料理だ。

ふわふわ卵のオムライス(デミグラスソース)と、ぱぱっと作れるコンソメベースの野菜スープだ。

味は美味しい。たぶんそこら辺のファミレスより美味しい。


「あと、このオムライス美味しい」


とボクが言うと、兄さんは少し照れたように


「……ならよかった」


と言った。相変わらず褒められ慣れてないみたいだ。

そんな兄さんの反応を少しからかってから、晩ご飯の片付けをした。





「おやすみ、ブルウ」


夕飯を食べ終わり、ゲームを再びして、お風呂も何もかも済ませてから、ベッドの上に置いてあるウサギのぬいぐるみ(青色)におやすみの挨拶をして眠りについた。




その次の日の朝。

朝は割と早く起きる。というのも、色々と準備があるから。特に髪型に時間がかかる。

ふわふわのツインテールにするために、何かと気を使うのだ。

髪型に30分かけた後、日焼け止めなどを顔に塗って完了。

その後に朝ごはんを食べて、家を出た。

朝ごはんは各自簡単なものを作って食べている。


ちなみに今日の朝ご飯はサラダとハムエッグトースト。



「いってきまーす、兄さん」


「んー……いってらっしゃいぃぃ………」


眠け眼で見送る兄さんだったけど、遅刻しないか少しだけ心配だった。

結果見事に遅刻したらしいけど。


学校について、割とすぐチャイムが鳴った。

朝は早いんだな、この高校。と思いながらも先生の話を聞いた。


「今日は自己紹介をしたいと思いま〜す。内容は自由でいいですよ〜」


昨日もそうだったけど、随分と間延びした話し方をする先生だな、と思いつつも内容を考える。


(んー……名前と、好きな食べ物でいっか。あとはよろしくお願いします、でいいかな)


内容も大体決まったところで、順番がきた。


「ボクの名前は柊つかさ。好きな食べ物はポッキーとかの甘いものと、……オムライスです。よろしくお願いします」


昨日の晩ご飯に出てきたオムライスを思い浮かべながら行った。別に別に、兄さんが作ったものって限定してないし。


ちなみに自己紹介の後に、「かわいー」「肌白いなー」などの歓声を浴びて、少しにやけそうになったが抑えた。


高校生活スタートはいい感じ。

これからもかわいいで通せるようにがんばろっと♪

と上機嫌でこれからへの決意を固めた。




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