東京ストリートチルドレン

にーさん

第1話 残飯と猫と俺

ここは新宿の何処かそこらへん・・・


「天気の良い日は~♪ゴミ漁りが楽しいいや~♪」

「親が~居なくても~子は育つ~♪」


気分よく歌いながら、飲食店の路地裏でゴミ箱を漁っている10代の少年がいる。

ここはハンバーガーショップの廃棄処分置き場。残飯が捨てられている路地裏。


この少年は家なき子、孤児のストリートチルドレンだ。


この区域では、特に珍しくない。様々な家庭の事情で、この新宿のホームレス街に

大人も子供も辿り着く。


都会の仕事は、AIと外国人労働者が参入し、日本人の失業率は上がり、バイト

ですら探すのが大変な世の中になってしまった。


他人事ではなく、家賃を滞納して家を追い出される事など、誰がなっても決して

おかしくはないのだ。


「おっ!これはまだ食べれそうだな~、ポテトとバーガー今日も大漁だ♪」

「いや~ファーストフードは最高だよな!」

「ニャーッニャーッ!」

白と黒のまだら模様の野良猫が、食べ物欲しさに鳴いている。


「あ~しっしっ!何だよっ駄目だよ!これは俺の飯だからな・・・」


自分の取り分が減るのを嫌がるのは当然だ。明日は何も食べれないかも知れないの

だから。自分の生きていく為の食料は、自分で確保するのがホームレスの最低限の

ルール。


数分後、野良猫は残飯のハンバーガーをむさぼり食べている。

よっぽどお腹が空いていたのか、夢中で食べている。


「ったく・・しょうがねえな・・・」

「俺もお人好しだよな~」

「おい野良っ!こんなラッキー滅多に無いんだからな」

「次からは自分の力で食い物を見つけるんだぞ!」

「ニャ~ニャ~♪」


野良猫はお礼のつもりなのか、なびきの言葉に高い鳴き声で答えた。

なびきは呆れ顔だが、優しく野良猫を見つめていた。


この主人公の名前は、立花なびき15才、両親は居ない孤児のストリートチルドレンである。この新宿のホームレス街には数年前から、住み着いている。

この様な、少年少女が後を絶たない。


「くそっこんな残飯暮らしは、いつか足を洗ってやるからな!」

なびきは、鋭い目つきで、何かを睨みつける様な表情で残飯のバーガーを握り

締める。その表情からは、何かの決意に満ち溢れていた。


「いつか・・・いつかきっと!あの憧れのマイホームを手に入れるんだーっ!!」

「ホームレスを脱出して人生大逆転っ!!」

なびきの目には、遠い未来のマイホームがまるで鮮明に見えてる様な表情で

叫んでいた。彼は彼なりに、大きな夢を持っているのだ。


いつになるかは分からないが、この家無し生活からきっと抜け出し、安定した暮らが訪れる様に、夢に憧れながら、今日も力強く生きている。


どんな、過酷な環境でも決して諦めない心の持ち主が、この立花なびきという少年である。


「夢を持つのは良いが!勝手に店のゴミ箱を漁ってるんじゃねえぞっ!!」


「げっ!やばっ・・」

怒りに満ちた低い声が、なびきに向かって叫んでいる。ハンバーガーショップの店が現れたのだった。


「ごっごめんなさ~~~いっ!!」

ダッと勢いよく走って逃げる、なびきであった。

ゴミ箱を荒らされる事の多い飲食店は、マナーの悪いホームレスが寄り付かない様に

警戒しているのだ。

これで、なびきの食事場所が一つ無くなったのだった。


ホームレス街には縄張りと、暗黙のルールが数多くある。

簡単に、食事場所を確保する事は出来ない。争いの元となるからだ。


なびきは移動して、いつもの物乞いをする事にした。

道端で、通行人にアピールして、たまに物好きが現れてくれるのを待つのだ。


「この辺りが・・ホームレス街!?あっ!たしかにあの子ホームレスっぽい!」

メガホンと大きなリュックに、パジャマ姿でなびきを遠くから観察している、

若そうな美少女だが、この区域にはとても馴染んでいない。


なびきと、謎の少女は見えない運命によって引き寄せあう・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る