Intermezzo [2]
Intermezzo [2]
その日、夫婦はこの世に一つの生を授かった。
ポケットに入れたくなりそうなくらい小さく愛おしい体。興奮の涙を流し続ける真っ赤な顔。部屋中を満たす生まれ落ちた証明としての泣き声。
夫婦は、世界で一番穏やかな表情でその姿を見つめる。ずっと分かち合ってきた苦労、積み重ねてきた痛み、そうしたものの答えが、こんな愛らしい結晶という形をとって示された。
気付けば二人は、小指を結び合わせていた。
分かち合う熱は、妻が夫に伝える信頼、夫が妻に伝える労い。
なかなか子を授からなかった辛さも、一昨日にした喧嘩も、絡めた感触が和らげていく。
一つの大きな感情が、母親の中に閃いた。
彼女にとってそれは、月の満ち欠けに潮が呼応するように、夏のヒマワリが太陽の方を向くように、自然なことのように思えた。
生まれたばかりの我が子を見つめる。まだ疲労の残った声で、だけど春の陽のように温かな気持ちで、彼女は優しく呟いた。
「あなたは、魔法使いだね」
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