第5話 ザロちゃん
老人は困ったいう表情で少女、棺桶、俺を順番に見てシワだらけの顔に更にシワをつくり話し始める。
「なんじゃ、騒がしいのぉ。また死体でも拾ってきたのかのぉ」
「司祭様!拾ってきたなんて、死霊使いみたいに言わないでください!」
「頭が堅いのぉ。いつもやっておるではないか……」
老人の口から聞き捨てならないセリフが飛び出す。
「死体を拾ってきている?何それ……変わった趣味だな」
「拾ってきてません!この死体は今朝、村人が届けてくれたんです」
届けるって……宅配便かよ。
「ほほぅ。死体の宅配便みたいじゃな。この村には黒猫はおらんかったがのぉ」
見事に老人とシンクロした。
「それにしても……棺桶を突き破って出てくるとは活きのいい死体じゃのぉ」
「あんたにも俺が死体に見えるのか?あんたらおかしいんじゃないか?死体は歩いたり喋ったりしないだろ?俺は家で寝てたんだよ。起きたら何故か棺桶に入れられてただけなんだ。何かの間違いだと思うんだが、ドッキリか?これ」
「むぅ……一部の死体は歩くし喋る事もあるがのぉ。じゃが、お主は死体には見えないかのぉ。血色も良いしのぉ。今までのは乗っかってみただけなんだが……頭堅いのぉ」
この二人ふざけすぎだろ。早く帰りたい。
「あんたがここの責任者か?わるいけど、手違いで死んだことになったみたいなんだ。家族に迎えに来てもらうから電話を貸してくれないか?」
「あんたじゃなくてなくてザロモン司祭です!」
腰を抜かしていた金髪少女が心外とばかりに抗議する。まだコスプレごっこが続いているのかよ……
「ザロちゃんと呼んでもいいんじゃぞ?」
いや、どうでもいいし。
「では、ザロモン司祭。私は
「ほう……デンワを貸してくれとな?デンワ……デンワとは?アーシェ、そなたはデンワを知っておるか?」
いくら年寄りでもデンワくらいわかるだろぅ。
「いえ、ザロモン司祭。私も存じ上げません」
話を振られた金髪少女のアーシェもこたえる。
「あー。わかりました。もう茶番には付き合っていられないので、歩いて帰ります。出口はどこですか?」
「出口ならそこの扉じゃ」
ザロモン司祭が指差す扉に近づき、無駄に重厚な扉を押し開き……
閉める。
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