助太刀行きます異世界まで!

浅見一

第1話 悪友との出会い

カチカチカチカチ、ジリジリジリ!

僕は目覚ましの音で目を覚ました。

「は~!!よく寝た!さて」

僕は顔を洗い、家を出る。皆さんは日課と言うものはありますか?これをやらないと気分が悪いなど、様々な理由で日課があると思います。

僕、海藤アツキの日課は、まず毎朝お風呂掃除から始まります!と言っても皆さんが思うお風呂掃除ではありません。分かりやすく言うと温泉の浴槽掃除です。僕の家はここ、温泉、泉の湯の二階にあります。でもなぜ掃除をしてるかって?それは毎朝掃除をすれば家賃は払わなくて済むからです!ゴシゴシゴシ、僕がいつも通り掃除をしていると。

ガラガラガラ!扉が開き

「おはようございます!アツキさん」

この人がいずみさん、歳は14歳で可愛らしい笑顔が売りだ。驚きなのがこの人がここ、温泉の泉の湯の女将なのだ。

「おはようございます!いずみさん」

「毎朝ありがとうございます!おかげで私も楽になりましたよ~」

「いえ、家賃只にしてもらってるのでこのくらい当たり前ですよ!」

「ありがとうございます、では私は仕事に戻りますね!」

そう言っていずみさんは風呂場から出て行った。僕は残りの掃除をし、二階に戻るがまだ朝ごはんは食べない、僕にはまだやるべき事がある。それは木刀で素振りをするのだ。

僕がいる世界は江戸時代でも皆が思う江戸とは違うと思う。スマホはあるし、ビルもある。電車や車も走っている。でも僕が住んでる所は、そこまで近代的な家じゃないかな。

僕の両親は小さい時に辻斬りに斬られて死んだらしい。らしいと言うのは記憶にないからだ。

後で親戚に教えてもらったのだが、その話によると、夜3人で外に食べに行った帰りに辻斬りにあったのだ。

両親が斬られたのに僕だけのなぜが一切斬られていなかったらしい。それどころか、その場に両親以外にも死体があったらしい。おそらく辻斬りの死体だったそうだ。誰かが僕を助け、辻斬りを殺したのだ。分かるのは結局これだけだ。

僕はそんな話を聞き、人を助ける事に憧れた。結果的に辿り着いたのは侍だった。僕は侍になるため、毎日こうして素振りをしているのだ。

素振りを終えた僕は朝ごはんを食べ、外に出掛ける。仕事探しだ!服を着替え家を出て階段を下りる、すると泉の湯の入り口で何やら怒鳴り声が聞こえる。

「おいコラ!温泉なのに入れてくれねーとはどうゆう事だ!」

「すみません!営業時間外なので、準備も何も出来てないんです」

どうやら3人組の男達が温泉に入れろと文句を言ってるらしい、当然朝はやっていないので、いずみさんが対応している。

「こっちはよ、昨日から飲んでて体中ベタベタなんだよ!風呂入ってサッパリしたいんだよ!温泉は良いとしてシャワーくらいいいだろ?」

「すみません、お客様のような酔っぱらいは入れることも出来ません」

相変わらず、いずみさんは見た目に反して強気だなぁ~。

いずみの胸ぐら掴み、ぶちギレる男達。

「あんま調子乗るなよ!チビ人間が」

「チビ、チビ、チビ人間ですって……」

あのバカ共が!!!いずみさんにそれは禁句だろーが!そう、いずみさんにチビやロリッ子など、見た目をバカにするような事を言うと大変な事になるのだ。

いずみが男の腕を掴んだ。

「手を離して下さい」

「離さなかったら、どうなんだよ?」

「手を、手を離しなさい!」

怖えーー!!なんて殺気だ!こっから見ててもチビりそうだ。

それにあの目付き、完全に人を殺そうとしてる目じゃーか!逃げて、早く土下座していずみさんから逃げて。

男はビビったのかいずみから手を離す、すると。

「調子乗るんじゃねー!クソガキが!」

なんと!いずみに殴りかかったのだ。

「ガキですって…」

いずみはパンチを避け銃剣を顔に向け撃った。弾は男の頬を掠めた。

「う、撃ちやがった。お…お前頭おかしいんじゃねーか?」

「ん?何か言いました?」

「いえ、何でもありません」

そう、いずみさんは銃剣使いのプロなのだ。

銃剣とは長い銃の先端に剣があり、剣としても使えて銃としても使える物だ。なんでそんな物を極めたのか、前に本人に聞いた事がある。

「あのいずみさん、なんで銃剣なんか極めたんですか?」

「銃剣にはこだわりはありません、たまたまテレビで重い棒を持ち、動く事で体感なとが強くなり痩せるって言ってたんで、何か無いかと探していたら押し入れに父の形見の銃剣があったので、それを使ってたら今に至りました」

そんなふざけた理由で、誰も手に終えない力を手に入れてしまったのだ。それに父の形見をダイエットに使うって、さすがだぁ~。

そんな事を考えている内に警察、つまり新撰組が来た。

ヤバイんじゃないのいずみさん、この状況どっから見てもいずみさんが撃ち殺ろそうとしか見えないんですけど。ん?ってもう銃剣隠したんかい!

いずみの銃剣は折り畳めるので普段は背中に隠している。駆け寄ってきた警察にいずみが説明をする。

「お疲れ様です」

「あのー、何があったんですか?」

「いきなり悲鳴が聞こえたので外に出たらこの二人が銃でこの男の人を撃ってました」

ガッツリぱちこいた!そんな理由通る訳ないだろ!それにその二人が本当の事言ったら。

「いや、僕達は」

「ん?何か言いました?」

いや、目で殺してる!なにあの目、言ったら殺すぞの目をしてるよいずみさん。

「いえ、何でもありません。僕達がやりました」

決着ついたー!僕は朝からとんでもないものを見せられた。

さて、気を取り直して仕事探しに出掛けよう。いくら家賃が只でも食費に電気代ガス代など、お金はたくさん掛かるから稼げる仕事をやりたい。

「なんか良い仕事ないかな~」

僕は電柱や壁に貼られた求人広告を見る。今はどこも不景気で時給が安すぎる。

「時給300円なんてバカにしてるだろ。やっぱないか~。今時給料が良い仕事なんて」

僕は今日もダメかと諦め、自宅方面に歩こうとした時、僕の目に一枚の求人が写った。

「月100万も夢じゃない!?なんだこれ!」

その求人広告に書かれていたのは、新規に募集、歩合制により月100万も夢じゃない!仕事内容は面接時に説明!面接希望の人は○月○日○時に競馬場に集合。

いやこれ…ブラック?説明浅すぎでしょ?金額しか表示してないんだけど。ん~、悩むな~。普通にヤバイ仕事なんだろうけど…給料がな~。悩んだ挙げく僕の答えは。

遅いな~。集合時間過ぎてるのに、それに競馬場に集合ってどんな面接だよ。

待っていると競馬場の中から一人の男が出て来て話し掛けてきた。

「悪いな待たせちまって、競馬で遊んでたら時間忘れててさ、面接の人だよな?」

「はい!」

「歩きながら話すから着いて来い!」

僕は腰に刀を差した男に着いて行く。

「お前名前何て言うの?」

「海藤アツキって言います」

「今時カタカタって…クス」

鼻で笑う男に僕は名前を聞き返した。

「俺は坂本竜真」

「いやあんたも人の事言えねーじゃん!」

「まぁいいや、仕事内容を先に言うぜ?しっかり聞いとけよ?」

この偉そうな男と一緒に働くのか~。

竜真はアツキ説明をしだした。

「簡単に言うとな。昔、人類はこの世界で変なリングを4つ見つけたんだよ。それでそのリングを調べると他の世界に行けることが判明したんだ!」

他の世界?一体何の事だろーか?さっぱり分からない。

「しかし人類はそのリングを使えなかった。そこでそのリングをコピーし、使えるリングを作った」

竜真は説明を続ける。

「それでそのリングを使い異世界に行った。そこで気付いた事が、リングはどうもこの世界にしか無いらしく、他の世界にはリングはない。だから他の世界の人間がこっちの世界には来れない事が分かった。それで人類はこの世界にしかリングが無いのなら、他の世界を助けよと言う神のお告げではないかと考えた」

段々話が見えてきた。

「人類はリングを量産し、兵士に配り、様々な異世界に派遣して異世界を救う事を決めた。それが今に繋がり、俺達の仕事って訳だ」

僕は言葉が出なかった、僕の知らない事がこんなにたくさんあったなんて。

「つ…つまりリングを使って様々な異世界の人々を危機から救うって事ですか?」

「そうそう!だから今から登録に行くぞ!」

登録?何の登録?僕が不思議そうな顔をしていると竜真さんが

「登録って行ったら登録だろ!リングを貰うには色々登録しないと貰えないんだよ。リングは着けた人間が使えるから寝てる間に盗られたりしたら大変だろ?だから身元とかを書類に書くんだよ」

僕は納得した。それに今の話を聞いて気付いた事があった。

「竜真さん、その指に着けてるのって」

竜真さんの指にはリングが着いていた。

「あ~これがリングだよ、俺達は転移リングって呼んでる」

転移リング。これを着けて異世界に行って人助けをするんだ。

そんな話をしているうちに目的地に着いたらしい。

「よーし到着!」

竜真はクルりとアツキの方を向き、手を広げ

「ようこそ。コノハ横丁へ!!」

「な…なんじゃこりゃー!!」

僕はついつい叫んでしまった。そこはビルの地下なのに広過ぎる空間でおまけに人が多過ぎる。

「凄い!!こんなに広いんですね」

「そりゃそうだろ。この地下空間は町だからな」

「地下の町か~」

「それにここには病院や武器屋など様々な店が揃ってるからな。ここで異世界に行く準備をすればいい」

僕は元気良く、はい!と返事をした。男としてこうゆう場所はテンションが上がる。

「そういえば、コノハ横丁って言ってましたよね?なんでコノハなんですか?」

「それはこの地下空間を真上から見ると木葉の形をしているからなんだ。今から見に行くか?」

「え?木葉の形をしてる所を見れるんですか?」

「あそこに鉄塔があるの見えるか?」

竜真さんが指差す方向に鉄塔があるのが見える。

「あの鉄塔の一階がギルドだから、そこからエレベーターですぐだぜ」

「なら見たいです!」

「よし!着いて来い!」

そう言う竜真さんに着いて行く。

「ここがギルドだ!」

扉が開き、中へ入って行く二人。

「よっ!」

竜真が受付の人に挨拶をした。

「あら竜真さん、お疲れ様です~」

「新人登録出来るか?」

「はい大丈夫ですよ、その方ですか?」

そう言い僕の方を見る。

「初めまして、海藤アツキです!」

「初めまして海藤さん。私はコノハ横丁を仕切っていますお菊と申します。これからどうぞ宜しくお願い致します」

僕をお辞儀をして、宜しくお願いしますと言った。するとお菊さんは書類とペンを出し

「ここに名前と住所だけ書いてください」

僕が書類を書いていると、竜真さんが

「俺、お前が説明とか聞いてる間に、武器買ってきてやるよ」

「え?!買ってくれるんですか?」

「もちろんだぜ、俺を誰だと思ってるんだ?あの竜真さんだぞ?」

「いや、あのとか言われても知らないんですけど」

「ったく。真剣でいいか?銃とか使わねーだろ?」

そっか、銃とかもあるんだ。

まぁでも竜真さんも刀しか持ってないし、僕も銃なんか使えないから刀でいいか。

「はい、お願いします!」

竜真さんはギルドを出ていった。僕を書類を書き終え、お菊さんに渡す。

「ありがとうございます!今海藤さんの転移リングを制作中ですのでお待ち下さい」

「制作?そんなすぐに作れるんですか?」

異世界に行けるようなリングをそんなにすぐ作れちゃっていいのかよ。

「はい、すぐ作れますよ?竜真さんに聞いたかも知れませんが、昔見つかったリングのデータがあるので、それを使ってコピー出来るんですよ」

「コピーって…進んでますねこの世界は」

「しかし、その原型の4つのリングはある時無くなってしまったみたいで、今でも行方不明なんですよ。でもデータは残っているので、こうして私達まで受け継がれてきました」

「そうだったんですね。4つのリングが今でも行方不明ってどこにあるんでしょうね?」

「さぁ~どこにあるかは神様しか知らないんじゃないですか?」

そんな話をしていると、お菊さんが立ち上がり、裏に行った。どうやら転移リングが完成したらしい。表に戻ってきたお菊さんの手の上にはリングが乗っていた。おそらくこれが、転移リングだと思った。

「海藤さん、これが転移リングになります。これを好きな指に着けて下さい」

僕は転移リングを受け取り、左手の人差し指に着けた。

「おーー!なんか、カッコいいっすね!」

何故だか久しぶりに中二心をくすぐられた。

「あーそうだ、海藤さん!一つ言い忘れてた事がありました」

そう言うお菊さんの話を聞くと、何やらルールがあるらしく、そのルールと言うのが、異世界に行った際に異世界の住人に僕達が他の世界から来たことはバレてはいけないらしい。設定として、どの世界でも僕らは冒険者と名乗らなければいけないらしい。冒険者か、悪くない。

「以上説明は終わりになります!気をつけて帰って下さいね!」

やっと僕の仕事が決まった!ちょっと変わった仕事だけど、僕は頑張ろうと心に決めた。

そういえば竜真さんが帰ってこない。仕方がないのでギルドで待ってる事にした。数十分後

「うーす!遅くなって悪りー。ほらこれ!」

竜真さんが僕に刀を渡してきた。

「おーー!これが僕の剣!」

僕は自分の剣をキラキラした目で見ていた。

「よし!装備も揃ったし。登録も終わったみたいだから、ここの鉄塔上るぞ!」

ギルドの中にある展望台エレベーターに二人で乗り、展望台を目指す。物凄い速さで上がっていくエレベーター。ほんの数十秒で到着したみたいだ。

扉が開いた。そこは一面に広がった白くて真っ平らな広場だった。

「どうだ?悪くないだろ、この場所は」

「はい。なんかこの世じゃないみたいです」

この場所は全面真っ白であり、円形の形をしているのだ。さらに真ん中にある噴水が、また雰囲気を醸し出している。

「まぁこの場所もいいが、ここから見る景色が一番だぜ!」

そう言う竜真さんと共に端っこの方へ歩いて行く。驚きなのが、ここはフェンスなどの落下防止アイテムがないのだ。仮に足を滑らせて落ちてしまったら間違えなく死ぬ高さだ。僕と竜真さんは下を覗きこんだ。

「わぁ~~~~~~!!!」

その木の葉の様な形をした町は広く、天井は暗いのに建物一つ一つが光を放ち、賑わっている。町全体が生き物の様に生き生きしており、とても地下の町とは思えない!空が無いのに人々は上を向き生きている。なんて綺麗な町なんだろうと、僕は思ってしまった。

「この町があるから生きていける。そう何度思ったか。ここで働いてる奴らはな俺も含め行く場所がねーんだ。そんな連中が集まって出来た町だ。町ってのは、町があるから人が集まるんじゃねー、人が集まるから町や国になるんだよ。俺はそう思ってるがな。その言葉を俺はここへ来る度に思い出す」

竜真さんの話を僕は真剣に聞く。

「町があるから人が集まるじゃなくて、人が集まるから町になる…か、確かにそうかも知れませんね!」

僕は納得してした。

「だから俺は人の集まる場所を壊す奴らが許せねー。だからここで働いてんだ。色んな世界の色んな町や村、様々な人との出会い。すべての記憶が今の俺を形作ってる。この身を犠牲にしても、守り続けないきゃいけねーんだ。それが俺に与えられた罰だ」

竜真さんが言っている罰とは、なんの事か分からなかったが、今の僕にそれを聞く度胸がない。でもいつか竜真さんの過去とか色々聞きたいって思う。

すると竜真さんが下を覗き込む僕の背中に手を当てた。誰かに背中を触られると言うのは、なにか落ち着く。ん?なんか、僕の背中を触る竜真さんの手が、僕を押している気がする。

「あの…竜真さん?何やってるんですか?絶対押さないで下さいね?」

「大丈夫大丈夫、分かってるって。ここはお前に譲ってやるからさ、芸人の力見せてこいよ!」

「何も分かってねーじゃねーか!!ヤバイですってこの高さは!芸人のノリでやる高さじゃないですよ!落ちたら間違えなく明日の新聞の一面ですって!」

アツキと竜馬さんが揉めていると、エレベーターの到着の音が鳴った。が二人は気づかなかった。

「ちょっと貴方達何やってるのよ?」

「え?」

僕と竜真さんは、後ろからの声に驚き振り返る。するとそこには腰に刀を差した侍が居た。

「え~~と…」

僕が言葉に詰まっていると、竜真さんが

「税金泥棒が何の用だよ?」

税金泥棒?

「貴方は相変わらず口が悪いわね、一回死んであの世で心を綺麗にしてもらった方がいいんじゃないの?」

「そんな理由で死ねるか!」

「まぁまぁ二人ともその辺で」

竜真さんと一人の女性がめっちゃメンチ切りあってる。どんだけこの男は嫌われてんだ。

「で、今回俺達がここに来たのは、旦那に新しい仲間が出来たって言うから見に来たんすよ。今まで旦那の仲間はロクな奴が居なかったすっからね。詐欺師に殺し屋、しまいには危険指定動物のガルルすら仲間にしようとしてましたからね」

いや、竜真さん、どんだけ友達居ないですか!詐欺師と殺し屋なんて完全に契約的な奴でしょ。おまけに何だよ危険指定動物ガルルってそんなヤバそうな動物聞いたこともねーよ。この人どんだけ危ない橋渡ってんだよ。

「まぁ~今回はしっかりとした仲間を見つけられたそうで何よりっす」

「でさー結局おたくら何の用?新聞?家いらないよ?」

「な訳ないでしょ?ホントバカなの?竜真はどんだけバカなの?新聞なんか誰が売りに来るのよ、あたし達はセールスを」ボコ!

「それも違うわ。バカが」

「痛ったーい。ったく何するのよ!」

「このバカはほっといて、簡潔に言うと自己紹介をしにたのよ」

僕と竜真さんは二人で口を合わせ

「自己紹介?」と言った。

「そ、自己紹介。私達は今回初登場だし。そこの彼とも初めてだから丁度良いかなって思って」

「あーそうゆう事なんですね。わざわざありがとうございます」

僕が礼を言うと、一人の男が前へ出て来た。

「じゃーまず俺からっす。新撰組二番隊隊長!永倉真二(ながくら、しんじ)。よろしくっす!」

「次は私です、私は…私は……地球人です!」

「知っとるわ!!」

思わず竜真さんと一緒にツッコんでしまった。

「どこの国の自己紹介?完全にドラゴン◯◯◯の自己紹介だろそれ!ドラゴン◯◯◯の世界だったら分かるよ?あの世界は野菜人だの、破壊神だのたくさんの種族がいるもんな。でもここは地球人しか居ないからやめてくれるか?その自己紹介」

「そうっすよ!名前言うだけて良いんすよ!難しく考えないでください」

「じゃ、じゃあー改めまして、一番隊隊長の沖田一星(おきた、いちか)です。皆さんよろしくです」

一星は基本的に表情が読みにくい少女である。

「次はこのあたしかしら!待ってました。よってらっしゃい見てらっしゃい、世界一美しいこのあたしの自己紹介よ!」

その女性は自信満々に両手を広げ

「あたしはプリンセスアリス」

ボコ!すかさずゲンコツをする竜真。

「てめー、アツキに何パチこいてんだ!何がプリンセスだよ。何がアリスだよ。お前の頭の中が不思議の国だろ!!!!」

「皆さ、あたしの頭叩きすぎじゃない?バカになりそうなんですけど」

「お前の頭はもう、叩くしか修復手段がねーんだよ」

「そうっすよ!しっかり自己紹介してください」

「まったく、しょうがないわねー、あたしは新撰組副長、土方月菜(ひじかた、つきな)。は仮の名前、本当の名は」

終わり!!と皆に言われた月菜だった。

「最後は私ね。私は新撰組局長、近藤日咲(こんどう、ひより)、よろしくね」

新撰組の自己紹介を聞いた僕は、自分の自己紹介をしてこれにて自己紹介会を終わりにした、すると竜真さんが

「税金泥棒達の自己紹介なんぞ聞きたくないっつうの。アツキこいつら新撰組はな~、俺らと給料の貰い方が違くてさ。俺らはクエストを受け達成すると報酬が出る。たが新撰組はギルドから安定した給料が毎月入り、働こうがサボろうが同じ給料が入るんだよ」

「人聞きの悪い事言わないでくれる?しっかり働いてるわよ、貴方と違って。現に今だって自己紹介がてら事情聴取に来たんだから」

「え?事情聴取?」

日咲さんは話続ける。

「実はさっき、下の路地で大富豪の息子のカダルが襲撃されたのよ」

「襲撃?そんな事件があったんですか?」

「そう、カダルはここ、コノハ横丁で刀を買いたいらしくこの町にやって来たの。それで私達新撰組に護衛任務が与えられた。私は、一番隊隊長の一星と隊士5人にこの任務を任せた。でもこの子が…」

一星さんの方を見る日咲さん。何かあったんだろうか?

「しょうがないじゃないですか。いくら護衛中だとしても、目の前でお菓子の処分セールやってたら、誰だってダイブしますよ」

「ダイブするのは貴方だけでしょ?」

「は?お菓子セールなんてやってたの?どうしてあたしを呼ばないのよ一星!」

日咲さんがやれやれとした顔をしている。この人も大変だなーって僕は思ってしまった。

「それでどうなったんですか?」

「この子がお菓子にダイブしている間に何者かが、隊士5人とカダルを襲って、全員気絶させられてたみたい、天下の新撰組の隊士を五人も倒すなんて、中々の相手だわ」

「そんな事が!犯人の狙いはなんなんですか?」

僕が立て続けに質問をする。

「狙いは恐らく、カダルの刀だと思うわ!」

「刀?」

「犯行現場からカダルの刀だけが無くなってたらしいの。と言うのもその刀、コノハ横丁の武器屋で一番高い刀らしいの。恐らくコノハ横丁の武器屋で刀を買ったカダルはその帰り道で何者かに襲われたと思うのよ」

まったくこの町は物騒過ぎないか?買った瞬間奪われるなんて。買って貰ったゲームを帰り道に落として壊す位ヤバイぞ。

「それでこれが奪われた刀の写真なんだけど、見覚えない?」

そう言いながら、僕と竜真さんに刀の写真見せてくれる日咲さん。僕らはその写真を見て冷や汗が止まらなくなった。

なぜならその刀を見たことがあるからだ。いや、厳密に言うと、現在進行形で僕の鞘の中に入っている。

「りゅ…りゅ…りゅりゅりゅりゅ竜真さん」

僕の口を手で押さえてきた竜真さん、そして

「すいませーん。その刀見覚えあるか無いか、アツキと話し合うので」

そう言い、僕と竜真さんは新撰組の皆さんと距離を取った。

「竜真さん!僕が持ってる刀なんですが…完全に竜真さんやりましたよね?完全に竜真さんが犯人ですよね?どうするんですか?!」

「仕方ないだろ。たまたま高そうな刀持ってる奴が居たから、奪い取った」

「そんな理由通る訳ないじゃないですか!」

「通る訳ないって言っても仕方ねーだろ!とりあえず、あいつらはまだ気付いてないらしい。だからアツキ!男の剣は抜いても絶ってーその剣だけは抜くなよ?」

「分かってます!この刀だけは抜きません」

「よし!行くぞ」

僕達二人は覚悟を決め、新撰組の所へ近づくのであった。

「あー…待たせちまって悪りーな」

「それは大丈夫だけど、心当たりはあったかしら?」

竜真さんは首を左右に振りまくり

「ちっとも!見たことも触ったこともねーよ。な!アツキ!」

「そ…そうですね。そんな高い刀、僕達には縁もゆかりもありませんよ」

「そ…悪かったわね時間取らせて」

「全然全然!暇だから気にすんな」

「でも犯人もバカよねー。カダルを襲うなんて、犯人は打ち首獄門よね日咲!」

月菜が日咲に聞く。

「そうね。それは逃れないわね」

首打ち獄門!!!僕と竜真さんは全身の震えを抑え、我慢していた。

「さて、事情聴取も終わったから下りるわよ」

新撰組はエレベーターに乗った。一星が日咲の裾をちょんちょんと引っ張り

「日咲、あの人達は来ないんですか?」

アツキ達の方を指差す一星、アツキ達は震えるあまり周りが見えなくなっていた。

「竜とアツキ!何やってるの?早く下りるわよ?」

その声に気が付いた僕達は

「はい!ただいま!」と言いながらエレベーターに駆け込んだ。

エレベーターを下りると、何やら人がいっぱまい居て、ざわざわしていた。僕らがどうしたのだろうと、あたりをキョロキョロしていると、一人の新撰組隊士が来た。

「日咲局長!大変です」

「どうしたの?」

その隊士は息を切らしていて、凄い慌てた感じで

「実はそこの路地で刀を奪われたカダル様はこの全責任を新撰組にあるとし、新撰組の解散及び全隊士の処刑を命じ。3日後に異世界グルデール島にて処刑を開始するとの事です。自分は逃げ切ったのですが、現時点で、各地にいる隊士達が捕まり強制的にグルデール島に飛ばされています」

日咲さんの顔が険しくなっている。

「強制的に?そんな事は出来ないはずよ。転移リングは着けた人が行きたい異世界の名前を思う事で飛ぶ事が出来る物よ?」

「そうっすよね。そんな他人を好きな所に飛ばすようなリングなんかないっすからね」

転移リングは他人を好きな所飛ばせないらしい。それもそうだ。もし飛ばせたら大変なことになる。じゃ~彼等は一体どうやって?悩んでいると一星さんが

「私、知っています」と言った。

「知ってるって何を知ってるんすか!」

「実は護衛を任された時、一人の隊士にカダルの調査をお願いしたんです。そしたらカダル達は転移リングの研究をしてるらしく、その研究の過程で、作り出しものが2つあるみたいです」

「2つ?その2つって何かしら?もったいぶらないで言いなさいよ」

月菜さんに急かされ、一星さんは話を続ける。

「一つはこの世界にもある、転移バリア装置」

「あれを…まかさカダル達も開発したと言うの?」

転移バリア装置って何だろう?

「あの…すいません。転移バリア装置って何ですか?」

「まったく。そんな事も知らないの?これだから童貞は!」

「童貞関係ないでしょ」

「まぁ要するに転移バリア装置って言うのは…あれをあれするあれだわ!!」

「いや!あれしか言ってないだろ!」

僕らの話をずっと黙って聞いていた竜真さんがここで口を開いた。

「転移バリア装置って言うのはな、この世界だとコノハ横丁以外のすべての場所に張り巡らされているものだよ」

「コノハ横丁以外のすべての場所?」

「そうだ。バリアがある場所では転移リング使えないし、そこから異世界に行くことも、逆に異世界から帰ってくる時もその場所には戻れない。行くのも帰ってくるもの、この世界では唯一バリアがないコノハ横丁だけなんだ。まぁ簡単に言えば仕事の直行直帰禁止って感じだな」

コノハ横丁、ここはすごい特別は場所なんだ。確かにいきなり地上で、人が消えたり現れたりしたら問題になるな。あくまで僕達の職業は裏の仕事なのだ。

「まさかカダルが転移バリアを開発するなんて…それでもうひとつは?」

「もうひとつは、私達のの世界にはない。特殊はリングが作られたそうで、そのリングを着けた人間はすべてカダルの思い通りに異世界に飛ばせるようです」

「そんな、好きな世界に飛ばすですって、そんなリング表に出たら大変な事になるじゃない」

確かにそんなリングが出回ったら大変だ。着けた人間はをカダルは思いのままの世界に飛ばせるし、国を滅ぼすのも簡単に出来てしまう。そのリングを出回ってしまったら。

「でも一星、そのリング外せば関係無いんじゃないっすか?」

「いや、それは出来きないです」なぜ?と日咲さんが聞く。

「そのリングは指に着けられたら、もう自分の意思では外す事が出来ないそうです。当然壊すことも。もし外す方法があるとするならば、一つはカダルがリングが外れるように思う事です。そしてもうひとつは…カダルの命を絶つこと」

バン!ギルドの入り口扉が凄い勢いで開いた。

「居たぞ!!!新撰組だ!全員捕らえよ」

「チッ、カダルの兵士達か。竜!私達は今から異世界グルデール島に飛んで新撰組隊士を一人残らず救出する。後は頼んだわよ」

そう言った日咲さん含め新撰組は転移リングを使い、グルデール島に飛んだ。

「逃げられたか、奴らはどこに飛んだんだ?」

「分かりません。他の世界に逃げられちゃ見つけようがありませんぜ?」

「いや案ずるな。奴等を見つけ出す方法はある」

一人の男が竜真さんに近づいてくる。そして刀を抜き刃を竜真さんの顔に向け。

「奴等は何処に逃げた?」と言った。

「言え。言わねば殺す。さぁ奴等は何処に飛んだ?」

何も答えない竜真さん。その目からは恐怖と呼べるものは一切感じ取れなかった。

「貴様!バカにしているのか!!私がお前を殺せないと。冗談じゃない。そこまで死にたいならお望み通り」

そう言いながら剣を振り上げるカダルの兵士。

「さらばだ」

竜真さんに剣を振り下ろした。しかし竜真さんは立っている。それどころが剣を振り下ろした男が血を流して崩れ落ちてゆく。

「悪いがお前の言葉さっぱり分からなかった。それに忠告しとくぞ。尖った物をむやみに人に向けるんじゃねー。そして他人の玉取りに行く時は、自分の玉も取られるかも知れねーって事をな」

一人の男を殺した竜真。アツキもそれを見て戦う覚悟を決め、剣を抜いた。

「おうアツキ、お前も自分の玉取られる覚悟は出来たみたいだな」

「そんなもん誰にもあげる気はありません。でもそれは竜真さんも同じでしょ?」

「いや、俺は女になら喜んで玉の1つや2つ出すぞ」

「いや何の話してるんですか?誰がそんな汚ねー玉の話してるんですか?命の話をしてるんですけど」

ここに居るカダルの兵士は残り二人、どうにかなりそうだ。

「貴、貴様ら!我等に歯向かってただで済むと思っているのか!」

「そんなもん知ったこっちゃねー。目の前に気に食わねー奴がいるならゲンコツくれてやるのが俺らのやり方だ!」

竜真とアツキ以外のギルドに居る人達も、それぞれ刀や銃、斧などそれぞれを武器を持ち先頭体制に入る。

「く、くそ、退くぞ」

戦況が、不利だと思った二人の兵士は転移リングを使い、逃げていった。

「なんとかなりましたね」

「まぁな」

「これから行くんでしょ?グルデール島に」

竜真さんは「あぁー」と言い、僕達は飛ぶ準備をした。

「おいおい、あんたらだけに良い所は持っていかせねーぜ?」

「そうだそうだ!新撰組は異世界だけでなく俺らの居るこの世界も守ってる連中だ。俺達皆がお世話になってるんだ」

「ここいらで恩返ししなくちゃ男じゃねー!行くぞお前ら!!」

なんとギルドに居る人達も行く気みたいだ。

「まったく、どいつもこいつもお節介が好きだねー」

日咲。お前ら新撰組が救ってきた人達が、今度はお前らを救う気でいるらしい。人の繋がりって言うのは、例え、世界が違っても切れねーみたいだぜ。

「よっしゃー行くぞ!てめーら!」と竜真が叫んだ。

「いやいや竜真さん、僕達だけは恩返しじゃなくて罪滅ぼしですよ」

「ギクッ、そ…そうだったな」

僕達は転移リングを使い、異世界グルデール島に飛ぶのであった。

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