あなたが写る世界は
村濱よろず
第1話
人は事故に遭う瞬間冷静になるらしい。時が止まったみたいに。友達曰く、「多分成す術がないことを本能が自覚して巡り巡って冷静になるんだよ」だと。信憑性もなければ、実際事故に遭ったことなんてなかったし、実感出来なかったけれど。実際に経験してみると、友達のいうことも聞いておくもんだなっていうのが感想。
あ、やばい私死ぬかも。まぁ、平凡だったし、特別不幸なことがあった訳ではないしいっか。子供一人守って死ねるなら悪くない人生か。あー、でも、出来ればやっぱり、拓海の写真撮りたかったかもな。
今の私のこの考えている時間は、世界にとってはいつもと変わりのない平凡なごくありふれた1秒や2秒なのだろう。私にとっては今までに体験したことがないくらいに長い時間に感じているが。
子供を歩道へどうにか投げ飛ばす。やけに鮮明に聞こえるトラックのクラクションに、周りの悲鳴。泣け叫ぶ子供の声。ごめん。強く投げ飛ばしすぎた。泣かないで、あなたはもっと長生きして好きなことして生きていくんだよ。君なら大丈夫。
私はそこそこの人生だったよ。ちょっとの心残りだけは置いていきそうだけど。
覚悟を決めて迫ってくるトラックを最後に残し目を閉じる。
「華!!!!!!!!」
愛しい人の声を最期に私の意識は途切れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます