第82話 レイド戦①

レイドバトル。


「来なさい!!『闇カワウソの群れ』」


 スキルの発動とともに、ボスの足元に広がる巨大な影から無数の魔法生物が襲ってきた。影で作られたカワウソだ。


「ちっ!範囲攻撃か?気をつけろよ!」


「は、はい!……って何か私の方が襲ってくる数多くないですかっ!?」


「気のせいだろ?とにかく迎撃するぞ!『疾風』」


 こちらもスキルを発動して、パーティーの素早さを上げる。

 数は多いが、こちらは素早さを上げてあるので、囲まれないよう冷静に対処していく。


「14……15……16匹!これでラスト!そっちは大丈夫か!?」


 俺に襲い掛かってきた分の闇カワウソを全て倒し、パーティーメンバーである後輩の方を見た。


「先輩ーー助けて下さい!!無理です無理です無理です!!数が多すぎますよぉ〜……。きゃあ!ちょっとやめて下さい!いやん!どこ触ってるんですか!ちょっ……何して、やめてーーーー」


 あぁ……あれはダメだ。後輩は酷い有様だ。もう助からない……。


「「「「「「キューキュキュキュキューキュキュキュキュ」」」」」


 3桁を超えるであろう闇カワウソたちに身ぐるみを剥がされて、奴らの装備している"赤マジックペン"で全身に落書きされている。


「くそっ!後輩へのヘイト値が高すぎる!あいつは確か女盗賊の職業で敵からのヘイト値は低いはずなのに……」




 ちくしょう。負けたくねぇ!……ゲームで負けるなんて絶対嫌だ!!






「キュー」


「ん?何だ?……ゲーム?」


 朝仕事に行くときに、さくらさんから玄関であるゲームを見せられた。


『レイド・バトル・オンライン〜社会人の貴方へ〜』


 最近流行っているオンラインゲーム。

 時間のない社会人向けに、冒険はせずに、いきなりボスとのレイドバトルを楽しむゲーム。

 ゲーム開始時にいくつか質問をされ、それの回答により職業やレベル、ステータスがきまる。

 最後にスキルを選択して、簡単なチュートリアルの後に、オンラインでパーティーを組みボスバトルへ突入だ。

 育てるという概念がない為、与えられた条件だけで知恵を絞り、チャットや通話機能を使い、パーティーで力を合わせてボスを倒す、かなり高難易度の社会人向けゲーム。




「じゃあ帰ったらやろう」


「きゅっ!」


 ……

 …………


 こんな楽しそうなイベントに後輩が参加しない訳がない。


 帰宅後、それぞれ手に持つゲームのスイッチをいれた。


 そしてキャラメイクのための質問が始まった。




——あなたの好きな動物は何ですか?

「カワウソだ」

「んー猫ですかね」

「……キュ!」

 さくらさんが後輩をすごい目で睨んでる。


——あなたの特技を教えてください。

「仕事だ」

「んー料理ですかね」

「キュッ!」

 俺とさくらさんが後輩をすごい目で睨んでる。


——恋人はいますか?

「いないな」

「……まだ・・いないです」

「きゅう」

 後輩が悲しそうな目でこちらを睨んでる。


その後も質問は続き……


——最後の質問です。カワウソをどう思いますか?

「可愛い。天才だ」

「えっ、ちょっと!さくら先生何かしましたよね!?こんな質問おかしいじゃないですか!?改造しましたよね?ねぇ!?」

「……キュ!」


——ありがとうございます。ではステータスを確認して、スキルを選択して下さい。


——————。



「ふぅ。チュートリアルも終わりか。あれ?さくらさんのキャラがいない!?」


「あ、先輩、ここを進めばすぐにボスバトルですよ。さくら先生のことだから、きっと……」


「あぁ……なるほど。ボス側か……」



続く

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