第73話 後日怪談


見守るカラス



「カァーカァー」


 いやー昨日の怪談大会は中々怖かったですわね。


 さくら様のお話の最後、本当に老婆が彼女の腕にしがみついてるんですもの。


 流石の私でも全身の羽毛が逆立ちました。

 

 まさに鳥肌ですわ。





 ……。


 …………。


 今日は主様、仕事終わるの遅いですわね。

 もうすぐ終電だというのに、こんな時間まで主様を働かせるなんて。


 あの上司、顔覚えましたわ。

 せいぜい夜道に気をつけなさい。





 あっ、やっと主様のお帰りですわ。やはり疲れた顔をしてますね。

 これはしっかりお見守りしなくてはいけません。






 駅のホームまで行くのも辛そうですわね。

 見ていて胸が痛みます——。


 主様、少しフラフラしていらっしゃいますけど、

線路に落ちないか心配ですわ。




 おや?

 主様よりも死にそうな顔したサラリーマンの方がいるじゃないですか。


 まったく……倒れたりして主様に迷惑をかけなければ良いのですが……。




『ファーーン』


 電車が来ましたわ。

 私もそろそろ到着駅に向かわなくてはいけませんね。


 バサッバサ……ッ!!


「カァァァアアアアア!!!!」






あのリーマン飛び込みやがった!よりにもよって、最高にお疲れモードの主様の横で飛び込みやがった!許せねぇ!主様の帰りが遅くなるじゃねぇかっ!!空気読めよ!人生諦めんなよ!まだまだ楽しいことあるよ!?




…………あら?





消えましたわ。






 なるほど。

 死んだような顔してると思いましたけど、すでに亡くなっていた方でしたか。


 良かったですわ。

 これで主様もちゃんと帰ることができますわ。



 まったく紛らわしいことする幽霊ですわね。

 さっさと成仏して下さらないかしら。



見守るカラス

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