第53話 友情
仲間意識。
ーーーー公園近くの路地裏。
誰にも見られてないのをいいことに、
女たちの不毛な舌戦が繰り広げられていた。
「さて、あなたは何の目的で先輩の後をつけてたんですか?」
「後をつけたなんて人聞き、いや鳥聞きの悪い。私は主様を見守っていただけですわ」
カラスに対し、仁王立ちで話かける女性。
どこからどう見ても不審者である。
「それに後をつけてたのは、貴方ではなくて?いくら主様が魅力的とはいえ、ストーカーはよくないですわよ」
人間に対し、羽を広げて威嚇しまくるカラス。
どこからどう見ても危険である。
「ストーカーじゃないです!先輩が気になったから、同じ方向に歩いていただけです。それよりも、あなたは先輩とどんな関係があるんですか?カラスですよね?」
「それは…カァカァしかじか…です」
カラスは丁寧に主様との馴れ初めを伝えた。
かなり美化して…
「なるほど…事情はわかったけど、先輩に迷惑だけはかけないで下さいね。普通のカラスは人間の後をつけて覗き見したりしないから」
「普通の人間はカラスと当たり前のように話さないですわ」
カラスの鳴き声と女性1人の話し声が響く路地裏。
心霊スポットの誕生である。
「なんで主様はこんな変態女に構ってあげるんでしょうか。やっぱり心が広くて最高に素敵ですわ」
「色々と聞き捨てならないけど、先輩が最高に素敵ってところは同感する」
「ですわよね。他にも朝の寝ぼけた顔とか本っ当に可愛いんです」
好きなものが同じだと一気に仲良くなる。
どうやら生物共通のことらしい。
「ずるい!!先輩の寝起き私も見たい!!でも、カラスさんは知らないだろうけど、仕事中の真剣な顔は見惚れるくらいカッコいいんだから」
「カァー、見たいですわ!!」
……
…………
路地裏で黄色い声が飛び交うなか、話題の男性といえば、、、
「よし!良いプレゼントもあったし、そろそろ帰るか」
目的を果たし帰宅していた。
なおストーカー共が意中の男性を探して街中を走り回るのはもう少し先になる。
ーーーーーーーーーー
「貴方なかなかわかってるじゃない。主様と親しくするのを認めますわ」
「ふふ。カラスさんこそ、ちゃんと先輩を他の変な女から守ってくださいね」
人と鳥。なんと美しい友情だろうか。
そのあとも話はどんどんと盛り上がっていった。
「そしたら主様の寝起きの顔写真は今度撮っておきますわ」
「ありがとう!こっちも会社で覗き見してもバレなさそうな場所を調べておきますね」
「「では先輩(主様)の見守りを再開しましょう」」
のちにこの2匹は「旦那様を見守り隊」として、数々の覗き見、ストーカー行為をしていくことになる。
仲間意識。
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