第24話 相性


良いコンビ。




「いらっしゃいませー。1名と1匹様ですねー。ご案内いたしますー」


 いつもの商店街の一角に店を構える、とある居酒屋。

安定のカワウソ受け入れ態勢である。


なんだ1匹様って…聞いたことないぞ。




 たまには外食も良いかと思い、色々なメニューがあるという理由で居酒屋に行くことになったが、相変わらずこの商店街の奴らは変だ。



 さくらさんと横並びで座って、メニューを選んでいると、


「御通しです」

俺の前にはナムルみたいなものが。


「いつものです」

さくらさんの前には魚肉ソーセージが。



いつもの!!?



「キュイ!キュー」


 俺が驚いている隙に、さくらさんが何かを注文していた。

俺も何か頼まないとな…。


 注文しようとすると、何故かさくらさんが止めてきたので、とりあえずさくらさんの頼んだものを待つことにする。



「お待たせしましたー」


目の前に料理と飲み物が置かれる。



『サバの味噌煮』

 普通のサバの味噌煮とは違い、サバの身をあらかじめ骨や皮をはずして細かくほぐしてある。


 なるほど…。身をほぐすことによって、すぐに味も染み込み時短にもなる。よく考えられている。

 上に添えられた、白髪ネギが良い感じだ。



『日本酒』

 聞いたことのない銘柄の日本酒。ほのかに柑橘系の風味がある。やや甘め。




まずはサバの味噌煮…


パクッ


そして日本酒…


チビ…ゴクリ。





おぉ…す、素晴らしい。


 まるで運命の人同士の結婚式。

サバ味噌と日本酒。

互いを支え合いながら歩む姿はまさに理想。

 そして、柑橘の香りが、ドレスを彩る鮮やかな花のように新婦を引き立てている。

 最後に白髪ネギのブーケトスをすれば、受け取ったものを笑顔へと導く、すなわち幸せの連鎖。


美味しい…完璧なマリアージュだ。



「さくらさん、ありがとう。凄い美味しいよ」




「キューキュキュキュキューキュー」

(味噌煮特有の味の濃いクドさを、この甘めの日本酒が良い意味で打ち消してくれるのよ)


「キュイキュー、キュキュ、キューキュー…………」

(ここのサバ味噌は生姜が入ってないの。その代わりと言ってはなんだけど、この日本酒に含まれる柑橘の風味が、口の中でサバの生臭さを消してくれて、さっぱりして食べやすくなるわ。)


「キュキュー、キュキュキュキュ、キュー」

(そして最後に、あえて生のままにしてある白髪ネギを食べることによって、そのピリリとした刺激が、口の中にある甘さや柑橘の爽やかさを流して、再び味噌の濃さが欲しくなるの)




「へー、そうなんだ。へー。すごいね。さくらさん」


 何言ってるかわからないけど、とりあえず癒されるから良しとしよう。







こうして楽しい夜が更けてゆく…。






良いコンビ。

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