第78話鬼

 ははは! 殺す殺す殺す殺す殺す殺すころすころすころすころすころすコロスコロスコロスコロスコロスコロス!


 殺す!


 俺はかつてはまったいたFPSのクラスの一つ、スカウトが持つ能力の一つである血の輪舞ロンドを発動している。


 これは近接戦闘用のナイフが高周波ナイフに変わり、自身も高速回転することで素早く動けるようになる。

 その動きたるや風の如し。PVPでこの能力を使われたら確実な死が待っていた。

 何度これに殺られたことか……


 だが今は俺の力として発動している。

 向かってくる兵士の首を落とす! 

 返す刀で背後にいた兵士の喉に刃を当ててから軽く引き裂く。

 喉を切られた兵士は口から噴水のように血を吐いて…… 

 自分の血で溺れたか。地上にいるのに溺死なんてな。


 さあ次はどいつだ? 

 出来ればフィーネに酷いことをした奴を殺したいんだけど…… 

 誰がやったのかなんて分からない。

 だからこの国で一番偉い奴に責任を取ってもらおう。


 俺を迎え討とうと兵士が階段からぞろぞろと降りて来るが…… 

 俺を一目見てから震え始める。


「う、うわぁ!? オーガだ!?」


 オーガ? 俺が? 馬鹿なこと言うなよ。

 ただの中年サラリーマンだ。少しばかり怒ってるけどな。

 少し怒りすぎてお前らを全員殺さないと気が済まないだけの普通のおっさんだよ。

 お前らだってそうだろ? 大切な誰かを傷つけられたら……



 人は鬼に変われるんだ。



「逃げろー!!」

「いやだー! 死にたくない!」


 蜘蛛の子を散らすように兵士は逃げて行く。

 別にいいよ。去る者は追わない主義だ。

 でも向かって来る奴は…… 

 あはは。容赦しないから。腰を抜かしてガタガタ震える兵士の横を過ぎ、階段を登っていく。

 ん? 階段の先から……



 ズシン…… ズシン……



 大きな足音を立てて、なんかでっかいのがこっちにやって来る。

 巨人だ。人の大きさではないな。

 四、五メートルはあるだろう。一応分析アナライズしておくか。



名前:ゴーレム

種族:鉱魔種

レベル:187

DPS:10752

HP:152082 MP:0 STR:15072 INT:0

能力:物理耐性



 この程度か。



 どけ。



 スナイパーライフルを創造。構えると同時に創造を重ねる。

 発動する能力はもちろんTLS、戦略レーザーシステムだ。

 スナイパーライフルが変形していく。構え……



 ブゥンッ ジュワッ


 

 極太の熱線が光の速度で飛んでいく。

 レーザーはゴーレムの体を蒸発させ、その後ろの大聖堂の壁にも大きな穴を開ける。

 あーあ、中々素敵な建物だったのにな。知ーらないっと。


 それじゃ行くかな。

 ルチアーニ、待ってろよ。今行くからな?


 三階にあるルチアーニの部屋に。ルチアーニは…… 

 部屋の片隅で震えている。いい子だ。俺が来るのを待ってたのかな? 

 ルチアーニは歯をカチカチ鳴らしながら……


「悪魔……」


 それはお前のことだろ? 失礼なやつだ。口の悪い子は…… 



 お仕置きだな



「ひいぃぃ!」


 部屋から逃げ出そうとするが……


 逃げられると思ってんの?

 


 ドドドドドドドドドドンッ バシュッ



「ぎいやぁぁぁー!?」


 ショットガンを発砲。

 あはは。弾を間違えちゃったよ。

 散弾じゃなくてスラッグ弾を装填しちゃった。


 スラッグ弾を足に喰らいルチアーニの両足が吹っ飛ぶ。


「ごめんな? 片足だけ狙ったんだけど、両足撃っちゃったよ」


 さて困ったな。この程度で死んでもらっては。

 フィーネと同じ痛みを与えなくちゃいけないからね。

 一応調べておくか……



名前:ルチアーニ

種族:人族

Lv:80

DPS:210

HP:241/5401 MP:7961 STR:114 INT:9051

状態:両足欠損 出血多量(スリップダメージ)



 へぇ? 中々高スペックじゃん。

 やべ、瀕死だな。こんなとこで死んでもらっては困る。

 回復してあげなくちゃ。


【障壁】



 ブゥゥンッ


 障壁を発動。光を放つ球体が俺達を包み……


「ぎゃあー! あ……? 傷が……?」


 ルチアーニは膝から下を失っているが、肉と骨が剥き出しになった箇所には皮膚が再生し、出血が止まる。


 障壁の中に入り…… ルチアーニのおでこにキスをする。

 おぇ、気持ち悪。でもこれでよしっと。



名前:ルチアーニ

種族:人族

Lv:80

DPS:210

HP:1241/5401 MP:7961 STR:114 INT:9051

状態:両足欠損 

付与効果:来人のキス(一度だけ致死攻撃から回復、且つ状態異常回避、MP自動回復)



 HPは回復してるし、何よりも一度死んでも復活出来る。

 なら一度殺してしまっても問題無いな。


 障壁を解除してからルチアーニを縛り上げる。


「や、止めろ……!」

「なんで? 止める訳ないじゃん。それじゃまずは……」


 高周波ナイフを使って小指を切り落とす。



 スパッ ボトトッ



「ぎゃあー!?」

「うるさいよ。まだ九本残ってるだろ? あ、間違えた。あと八本だったね」


 勢い余って薬指も落としてしまったか。

 フィーネはな、両手の指を全部失ったんだぞ? 

 俺はルチアーニの指を全部切り落とす。


「ひ、ひぃぃっ!?」


 うるさい! ムカついたので、ナイフを目に突き立てる。



 グサッ グリィッ



 何、軽くだ。死にはしないだろ。

 あ、悪い悪い。ナイフを抜く時に手首捻っちゃった。

 ナイフの先にルチアーニの眼球が刺さってる。


「目がー!? 目がー!?」


 どっかの悪役みたいな悲鳴を上げる。

 その後も俺はルチアーニの鼻を削ぎ、死なない程度に切り刻み…… 

 他なんかあったっけ? あ、耳を忘れてたわ。両耳を切り落としてっと。


 ルチアーニは悲鳴すら上げられず、なすがままに俺の拷問を受け入れる。

 どうした? 急にいい子になったじゃん? 

 そうだな。これでフィーネと同じ痛みを与えることが出来た。

 少しは気が晴れたかな。それじゃ楽にしてやる…… 


 ん? 待てよ? もしかしたら交渉の余地があるかも? 

 はは、交渉じゃなくて脅迫かもしれないけどね。

 俺は芋虫みたいになったルチアーニを見下ろして……


「一週間後にまた来るわ。俺達を迎え入れる準備だけしておけ。いい子にしてりゃお前の傷は治してやる。お前が嫌いな魔女の力を使うがな」

「…………?」


「もう一度言うぞ。一週間後にまた来る。だがもし俺達を騙そうとしたら…… 今死んだ方が良かったって思わせてやる。本気だから。分かったか?」

「…………!」


 言葉も無く首を縦に振る。

 それじゃまたな。俺は部屋を出ると…… 

 兵士が剣を持って待ち構えている。どの兵士の顔も絶望的な顔してるな。

 俺を殺すことは出来ないと判断したのだろう。

 いい判断だ。命は大事にだ。


 兵士どもに見送られ地下にいるフィーネの元に。

 彼女は俺の障壁に守られている。体力も……



名前:フィーネ・フィオナ・アルブ・ビアンコ

年齢:19

種族:アルブ・ビアンコ

Lv:72

HP:1204/8951(50000) MP:9817(50000) STR:1753(50000) INT:10824(50000)

能力:剣術5 武術6 火魔法7 水魔法7 風魔法7 空間魔法 生活魔法 結束

付与効果:付与効果 来人のキス(一度だけ致死攻撃から回復、且つ状態異常回避、MP自動回復)

状態:欠損箇所多数



 完全にHPは回復してないけど…… 

 もう大丈夫だよ。優しくフィーネの顔に手を触れる。


「フィーネ……」

「ん……? ライトさん……? いや…… 見ないで……」


 指の無い手で顔を隠す。

 その手を優しくどけて……


「大丈夫…… 綺麗だよ……」

「ライト……さん……」


 キスをする。生きていてくれて本当に良かった。

 彼女を抱いて大聖堂を出る。テロは大成功みたいだな。

 町が炎に包まれている。


「ライト様!」


 ノアとアーニャが俺達を出迎えてくれた。無事だったか。


「ライト様! その方がお連れのお方ですか!? 酷い傷…… 早くアジトへ!」

「あぁ。そうしよう!」


 ノアがキリンを連れてきてくれたが…… 


「ライトさん…… これを……」


 フィーネは弱々しい手付きで収納魔法を発動。

 俺の前方に…… 

 はは、しばらく乗ってなかったからこいつの存在を忘れてたわ。


 俺の愛車のビックスクーターが。

 俺は片足を失ったフィーネを後部座席に優しく乗せる。

 俺もバイクに跨がって……


「行くよ?」

「はい……」


 キーを回しエンジンスタート!



 ドッドッドッドッドッ



 エンジン音が鳴り響く! 

 アクセルを回し、バイクが走りだす! アジトに戻れば桜がいる! 

 桜の回復魔法を使えばフィーネは元通りだ! 


「急ぐぞ! しっかり掴まってろ!」

「…………」


 言葉は無い。だがフィーネは指の無い手だが力強く俺の腰に抱きつく。

 その手を撫でながら……


 

 フィーネ…… 生きていてくれて……



 ありがとう……

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