第28話魔物退治

 朝が来る…… 

 久しぶりにベッドで眠れたから疲れは……全く取れてない。

 なぜか今回も桜とフィーネが俺のベッドで寝ているからだ。

 なんで狭いベッドでギュウギュウになって寝なくちゃならんのだ。


 昨夜、俺の部屋で今日の魔物退治の作戦を練っていたのだ。

 夜も更け二人に部屋に戻るように言ったのだが、二人はそれを拒んで一緒に寝ると言ってきた。

 強めに戻るように言い聞かせたのだが二人は目をウルウルさせた後俺のベッドを占領しやがった…… 


 やむなく俺がフィーネ達の部屋で寝ようとしたのだが、そしたら今度は俺をベッドに引き込みやがったのだ。


 なんでそんなに一緒に寝たい!? 

 いたた…… 変な体勢で眠ったから、なんか体の節々が痛む。

 俺は気だるさを感じる体に鞭打ってベッドを抜け出す。

 俺に絡みつくように寝てるフィーネを起こさないようにして…… 


 野営してる時に気づいたのだが、起きたらフィーネが俺の隣にいるんだよな。

 寝る時は桜が隣にいたはずなのに…… 

 まぁ桜は寝相が悪いからな。寝てる時にフィーネと入れ替わったんだろ。


 寝てる二人を起こさないようにして…… ほんと起きるなよ……?


 俺は息を殺して…… 


 まずは桜からだ。おでこにキスをする。



 チュッ



「ぐぅ……」


 よかった…… 気付いてないみたいだ。

 それじゃ次はフィーネだな。


 フィーネのおでこにかかっている長い金髪をどかして……



 チュッ

 


 キスをする…… マジで起きるなよ? 

 またビンタされるのはごめんだからな……


 今のは俺の新しい付与効果、来人のキスだ。

 バンシーとの戦いの後、なぜかフィーネが俺にキスをしてきた。

 後で分析アナライズしてみて気づいたんだが、俺のキスは致死攻撃から回復、状態異常回避、MP自動回復と中々のチート性能が付与される。

 今から危険な戦いに挑む。万全を期しておきたい。

 だが、桜ならまだしもフィーネにキスをするってのはね…… 

 フィーネが起きてる時にキスしていいかなんて聞けないだろ?


「んむぅ…… んふふ……」


 なんかフィーネが眠りながら笑っている。

 俺は急いでフィーネから体を離すと、ゆっくりとフィーネの目が開く。


「ん…… ライトさん? おはようございます」

「あ、あぁ。おはよ、フィーネ」


 よかった…… 気付いてはいないみたいだな。

 続いて桜も起き出す。


「ふぁあ…… パパおはよ」

「おはよ、それじゃ部屋に戻って準備をしてきてくれ」


「分かった…… フィーネちゃん、行こ…… って、フィーネちゃん朝からご機嫌みたいだね? 何かあったの?」

「ううん! 何でもないよ! ほらサクラ! 準備しなくちゃ!」


 フィーネは桜の手を引いて部屋から出ていった。

 俺も片隅に置いてあるレザーアーマーを装備する。

 見た目は貧相な鎧だが、これにはとある細工を施してある。

 俺の創造魔法でカーボンナノチューブを作り、それを鎧の中に通してあるのだ。

 これである程度の攻撃は防ぐことが出来るはずだ。


 準備はあっさり終わり、桜達も俺の部屋に戻ってくる。

 出かける前に俺は厨房を借りて味噌汁を作り、桜にはおにぎりを出しておいてもらう。

 さぁしっかり食べろよ。フィーネは味噌汁を美味しそうに啜る。


「ん…… このミソシルってスープ、本当に美味しい…… 毎日でも飲みたいです」

「はは、作るのは簡単だからな。また明日も作るよ」


「やった! 嬉しいな! ライトさん! 今度ミソシルの作り方教えてくださいね!」


 食事を終える。後は魔物を倒しに行く訳だが…… 

 その前にステータスを確認しておこう。

 ちゃんと付与効果が付いているか見とかないとな。

 あ、忘れてた。一応桜には踊ってもらおう。

 桜の踊りにはランダムだが付与効果が付くのだ。

 一通り桜に踊ってもらう。

 そんな恥ずかしそうな顔するなよ。


「もう…… 毎度毎度恥ずかしいよ……」

「はは、そんなこと言うなって。それじゃステータスを確認してみよう」


 分析アナライズはMPを消費するのでフィーネに水晶を用意してもらう。

 各々それに手をかざしステータスを見てみると……

 


名前:ライト シブハラ

種族:人族

年齢:40

Lv:20

HP:15249 MP:37001 STR:9985 INT:42333

能力:剣術5 武術10 創造10 料理5 分析4 作成3 

魔銃7(ハンドキャノン ショットガン ロケットランチャー)

亡き妻の加護:他言語習得 無限ガソリン 無限メンテナンス 無限コーヒー 無限タバコ

付与効果:幸運



名前:サクラ シブハラ

種族:人族

年齢:14

Lv:19

HP:11298 MP:35098 STR:7001 INT:41292

能力:舞10 武術10 創造10 分析4 魔導弓7(爆裂の矢 氷結の矢)

亡き母の加護:他言語習得 無限おにぎり 無限ラーメン 無限調味料 

付与効果:幸運 来人のキス(一度だけ致死攻撃から回復、且つ状態異常回避、MP自動回復)



名前:フィーネ・フィオナ・アルブ・ビアンコ

年齢:19

種族:アルブ・ビアンコ

Lv:39

HP:1035(5000) MP:1553(5000) STR:405(5000) INT:3231(5000)

能力:剣術4 武術5 火魔法7 水魔法7 風魔法7 空間魔法 生活魔法

付与効果:亡き母の加護(各ステータス+2500) 舞(幸運) 

来人の料理(各ステータス+2500) 来人のキス(一度だけ致死攻撃から回復、且つ状態異常回避、MP自動回復)


 

 よし、付与効果もちゃんとついてるな。

 どうか来人のキスには突っ込まれませんように……


「あれ? パパ、これって?」


 ドキッ! まさか桜は気づいたのか!?


「私達の能力だけど、気功ってあったじゃない? それが消えて創造に変わってるよ?」


 あ、ほんとだ。まぁ表記が変わっただけだろ。大した問題じゃないさ。

 それにしてもフィーネの付与効果だが…… 

 追加された能力値が五千に上がっている。

 これは俺達の能力が上がったせいでもあるんだろうな。


 当のフィーネは自分のステータスを見て驚いてるわけだが。


「本当にライトさん達の付与効果って、すごいですね…… あれ? うふふ……」


 フィーネが自分のステータスを見て…… 

 なんか顔が赤くなってる。まさか……? 

 一応ビンタされる覚悟はしておこう。


「あれ? フィーネちゃん、ご機嫌だね? 何かいいことあった?」

「ううん! ほら、サクラ、ライトさん! 行きましょ!」


 フィーネは嬉しそうに桜の手を引いて部屋を出ていく。

 よかった。どうやらバレていないようだ。

 俺も二人の後を追って宿を出ることにした。



◇◆◇



 ガロの町を出て、畑があると言われた場所に到着。

 町から四、五キロってとこだな。かなり広い畑だな。

 奥行が霞んで見えないぐらいだ。

 この広さの畑なら町の人の胃袋を十分に満たせるはずだ。

 作ってるのはなんだろう? 

 ちょっと土を掘り返してみる。そこに何だか見覚えのある野菜が……



「あー、パパ、これってサツマイモみたいだね」

「そうだな。そっくりだ」


 思い出すな。

 桜が保育園の遠足で一緒にサツマイモ掘りをやったんだ。

 その時は凪も元気でな。

 家に帰ってサツマイモを蒸かして食べたっけ。


「なぁフィーネ。この野菜ってどういう味なんだ?」

「バジャですか? それは野菜なのに甘味があってなかなか美味しいですよ」


「バジャっていうのか。俺の世界ではサツマイモって言ってね。魔物退治が終わったら売ってもらおうな」

「はい! サツマイモっていうんですね…… 覚えました!」


 さて、戦いが終わったらご褒美に二人にアレを作ってあげるかな。

 俺もアレは好きなんだよね。

 だがそれは仕事を終わらせてからだな。


「桜、フィーネ…… 来るぞ……」


 遠くから土埃を上げてこちらに向かって来る何かがいる。

 さてどんな魔物が来るのだろうか? 


 

 ドドドドドドドドドッ……



 魔物は近づいてくる。

 確か、宿の受付嬢は魔物は自ら傷を癒すことが出来るって言ってたな。

 魔法使い系なのか? 


 魔物はどんどん近づいてくる。

 だが俺達は到着を待っているほどお人よしではない。

 俺は魔銃ハンドキャノンを発動。手にズシリとした感触を覚える。

 FPSではこいつはいつだって俺の相棒だったな。

 俺はハンドキャノンを構え……


 トリガーを引く!

 


 ドンッ キィンッ


 

 低い発砲音と共に弾丸が射出される……が弾丸は魔物に命中した瞬間に弾かれ、明後日の方向に飛んでいく…… 

 ハンドキャノンが弾かれただとっ!?


 そんな馬鹿な! 

 フルメタルジャケットならいざ知らず、使った弾はホローポイント弾だ。

 着弾と共に弾丸は潰れ、体内にめり込み広範囲にダメージを与える……はずなのに。


 桜の魔導弓、フィーネの魔法も同じように弾かれる。

 俺達の攻撃が通用しないだと!?


 魔物は更に距離を詰め…… その姿がはっきりと見える距離に……? 




 ドドドドドドドドドッ! ズシャァッ!



 あれ? この姿は……? カニ?


 カニだ。俺達の前にはカニがいる。

 地球で見るのとそっくりだ。

 いやカニその物といってもいい。

 そのサイズを除いては…… 


 でかい…… 縦二メートル、横幅は五メートルはあるだろうな。


「デスハンド!」


 フィーネが叫ぶ。デスハンドか…… 

 その手に持つ大きなハサミでその名が付いたんだろうな。


 さて、攻撃が通じない敵を相手に俺達はどう戦えばいいのか……

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