フェイル14 ライラとルカの狂気

 阿修羅会の2人を捕えた翌日の正午。今日は会社が休みだ。セレスとレベッカは最上階リビングにてチェスを楽しんでいた。


「チェックメイトです。レベッカ」

「くそ! 4連敗って姉さん手加減してよ!」

「それは、出来ない相談です」

「そうですか。さて、ライラとルカは、どうしているのかしら?」

「そうですね。行きましょうか」


 2人は、95階の拷問室に向かった。


「あら? 随分苦しんでいるのね?」


 拷問室では、監獄ような部屋であり、入口には観覧室という拷問を見るスペースがあり、その奥へ進むと最大で4人まで拷問できるスペースがある。

 さらに、ライラとルカの趣味なのか、ペンチやナイフなどが狂気の体現を現す物ばかりだ。


「ねぇー? まだ、話してくれないの? もう、教えてよ」

「はぁ……はぁ……知るかよ!」

「あらら、本当に往生際が悪いですね。黙っても、得はありませんよ」


 ライラとルカは、数人の騎士団員達と共に2人の拷問をしていた。

 ライラは、立ちながら2人の姿を見ており、ルカはパイプ椅子をまたいで、自分の胸を背もたれに置いて座って見ていた。

 2人の表情は、冷たく猿を下等生物として見ているような表情だった。


「ルカ。奴らは何か言いましたか?」

「セレス様。昨日届いたユダの電気揺りかごで一晩通して使ってみたのですが、中々口を割らなくて困っているのですよ」


 ルカは、髪の毛先を左手でいじりながら言った。ユダの揺りかごとは、中世ヨーロッパの拷問器具で体が動かないように縄で縛り付け、三角錐の台に座らせて、縄でつるし上げた後、そこから落下の衝撃で股間を刺すという恐ろしいもの。

 阿修羅会の二人は、さらに電気ショックが追加されたユダの揺りかごで普通なら死ぬはずなのだが、持ち前の生命力でなんとか持ちこたえている。


「本当に、ここまでしてでも情報を言わないとは、何がそうさせたのでしょうか?」

「こいつらは、この道具では言わないみたいなので、椅子に座らせて別の拷問器具にします。ライラ様、よろしいですか?」

「もちろんですわ」

「ありがとうございます。君達、手伝って」

「「はい」」


 ルカと騎士団員達は、2人を運んで木製の椅子に座らせて両手と両足を鎖で固定した。ライラとルカは、尋問を始めるが、2人は何も言わない。そこで、ルカはナイフで左の椅子に座っている阿修羅会構成員の手の甲を強く刺して動かした。

 彼は、激痛に悲鳴を上げ、隣の彼は、恐怖に染まる。


「ぎゃー!」

「あははは! 最高だね! ねぇ!? 話してよ! 何で僕らの名前を使ってぇ!? 若頭の店に入ったのぉ!?」

「ぎゃー! いたぁぁぁい!」

「ほらぁ!? もっと行くよぉぉぉ!?」

「すごいですわぁぁ! ルカ! ふふふふ!」


 ライラとルカは苦しむ彼の姿に興奮して笑った。その姿は悪魔を超える。いや、魔界を超える魔物だ。

 すると、ライラは右に座っている阿修羅会構成員を見て不気味な笑みを浮かべていた。それを見た彼は、恐怖の表情になっていた。


「そうですわ! 貴方に面白い物でサービスしてあげますわ!」


 ライラはそう言うと、近くの台に置かれた拷問器具の中から一つを取り出した。

 それは、刃先がかなり鋭い電動ドリルだった。


「ひぃー!」

「私、作業が好きでしてね。その穴の中を見て顔の構造が見るのが、とーーても興奮しますわ!」


 すると、ライラとルカに変化が起きる。手と顔、首の見える部分から緑の血管が浮き出て、眼の白い部分が黒くなり、瞳が濃い緑になった。その姿は、まるで魔物を超える得体のしれない魔物だった。

 これは、ローズ状態というフェイル薔薇騎士団の特殊能力で全身の血管が浮き出て、それぞれの属性の色になり、身体能力、察知能力、知能、食欲が極限に上昇するだけではなく、脅威の視覚と聴覚を使い僅かな呼吸音さえも位置を知ることが出来る。

 再生能力も非常に高いうえに鋭い牙で敵を喰い殺すことが出来る。

 特にセレス達8人が危険かつ凶暴になる為、生半可な実力では殺される。


「ばば、化けもの!」

「そんな、酷いことを言わないでください。私とルカは、貴方達と話したいだけなのに」


 今のライラとルカの表情では、そういう目的ではないのがすぐに分かるが。


「おー! なんや、セレスはん、レベッカはん。セレスはんとルカは……おぉ! あれがローズ状態か。すごい殺気が経ってるなぁ」

「香川。お前、どうして幹部会での話を言わなかったのですか?」


 セレスとレベッカは、ローズ状態になり、香川を睨んだ。ちなみに、セレスは青。レベッカは赤だ。


「そんなに怒るなや。ただ、忘れていたやんか! そんな睨むと老けるで?」

「あんた死にたいの?」

「瀬山が、自分のに助けを要請していると聞きましたが、何か聞いていますか?」

「さぁ? 俺は、その時の幹部会で初めて聞いたからな。若頭も親交関係にあるらしいけど、はっきりとした事は、分からんや。ただ、そのが、お前らに挑むのは確実やろうな? すまんけど、ライラはんとルカが拷問するところ見ていいか?」

「勝手にしなさい」


 セレスは、呆れた表情で香川に言った。2人はローズ状態を解除すると、ライラが電動ドリルで彼の額を狙って掘ろうとする。

 最大の危機を感じた彼は、自分の知ってる情報を話す。


「分かった! 話すから!」

「では、お願いします。どうして、若頭の店に入って私達の名前を使ったのですか?」

「会長の指示や!」

「会長の指示? 阿修羅会の?」

「そうや、あいつの店にきて奴らの名前を使って大騒ぎすれば、フェイルの奴らの仕業だと勘違いして、抗争が起きる。そうすれば、互いに弱体化して支配できるきっかけになるらしい。正確には東京都知事の赤坂の指示だけど」


 それを聞いた香川は、彼の胸倉を掴む!


「なんやて!? 赤坂やと!?」

「そそ、そうや! 赤坂が、会長に「4の指示を受けて実行しろ」と」

「その中に、龍神会の瀬山との裏金について言わなかったか?」

「何の事や? そんなの知らねぇよ! というか、そんな話はしてないで!」


 レベッカは、その4について質問する。


「で? 4とは、どういう奴らなの?」

「顔と姿は見たことは無い。聞いた話では、あんたと同い年で青の貴公子サファイアオブプリンスとか呼ばれたことがあるらしい」

青の貴公子サファイアオブプリンス?」

「そうや」

「他に情報は?」

「確か、なんか龍神会の会長がスポンサーとして呼んでいるらしいけど、そいつら、赤坂と結託して、龍神会を潰すとか言ってたわ! 俺らの知ってるのはこれだけや!」


 ライラとルカは、全て話したと判断して拷問をやめることにした。


「セレスお姉様。2人が、知ってる内容は全てのようですわ。これ以上やっても無駄みたいですので」

「そうですか。では、ライラとルカ。こいつらを食べて良いですよ」

「「!」」

「そうでっか! では、ライラはんとルカの食事の邪魔にならんように出るわ」


 セレスとレベッカと香川は、拷問室から退室した。


「さぁーて! ルカ! 最高の昼食ですわぁ!」

「こいつらのお肉がぁぁ! 美味そうぉぉぉ!」


 ライラとルカは、鋭い牙を剝き出して涎を垂らしながら近づく!

 阿修羅会の2人は、絶望の表情をしていた。


「嫌だ! 嫌だぁぁぁー!」

「助けてぇぇぇ! 神様ぁぁぁー!」

「「いただきまぁぁすぅぅぅ!」」

 

 そして、切り裂く音と2人の悲鳴とライラ、ルカの狂気の笑いが拷問室に響き渡った。


 


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