第4話 復活のコタツは四次元仕様
その日、俺は死にそうだった。コタツで眠ってしまい、風邪を引いたからだ。それなのに出社して仕事をこなした。鼻水を垂らし、怠くて仕方ない体に鞭を打って踏ん張った。
今日は金曜。仕事を土日に持ち越したくなかった俺は、それこそ死ぬ気で取り組んだ。幸い、チームの皆が奮闘してくれたおかげで、何とか片付ける事ができた。
軽くめまいがするが、我慢して帰途につく。
家に帰ればあの暖かいコタツが待っている……。
マテ。
コタツは今朝、破壊されたではないか。
すっかり忘れていた。
更にめまいがする。足取りがおぼつかないが、自宅までの辛抱だ。今夜は何もせず、おとなしく寝てしまおう。あの、美少女ゲームの続きが気になるが、それは明日にしようと心に誓う。
そんな事を考えながら自宅の玄関にたどり着く。ドアを開けると、中からにぎやかな声が聞こえてくる。玄関には、見慣れない女物の靴がある。
知子の友人か。
今夜は女子会なのか。
気になって眠れないかもしれない。
いや、無視して寝よう。
そう思って靴を脱ぐ。
リビングへ行き驚愕した。
何と、コタツがあるじゃないか。
そしてそのコタツに入ってはしゃいでいるJKが三人いた。妹の知子と知子の友人二人だ。
この二人には見覚えがある。
尊大な妹に付き合ってくれている奇特な友人だ。名前は確か、
この二人には良くしてやらなければいけない。あの、人間関係が苦手な妹の貴重な友人である。妹に良くしてやる気はないが、その友人となれば話は別だ。
「やあこんばんは。今日はお泊りかな。ゆっくりしてね」
精一杯の愛想笑いを浮かべる。
「お兄ちゃんお帰りなさい」
「お兄様~何時も凛々しいですわ~」
星子と羽里に声を掛けられる。
コタツに未練があった。しかし、妹たちに占領されていては、俺の居場所はない。俺は手を振りながらその場を離れようとした。
しかし、右手を強くつかまれた。
この冷たい感触は……。
そこにいたのはガンメタリックの肌と、ルビーの様な赤い瞳を持つトラントロワ型自動人形だった。
「お兄様。今朝は大切なコタツを破壊してしまい申し訳ありませんでした。代わりのコタツをお持ちしましたのでご堪能下さい」
あの暴力的な自動人形が恭しく礼をした。
更に追い打ちをかけるように、星子と羽里が俺の手を取る。
「お兄ちゃん。一緒におコタに入ろ」
そう言って星子が胸を押し付けてくる。この娘はまだ高二だと言うのに非常にけしからんサイズの胸を持っている。妹の貧相なそれとは大違いだ。
俺は星子に引っ張られ、コタツに入ってしまった。星子の隣だった。
コタツに足を入れた瞬間、またまた驚いてしまった。
そう、何故かはわからないのだが、このコタツは掘り
いつの間に、リビングに穴があいたのだろうか。
不思議に思い、コタツの中を覗こうとしたら、背後からトラントロワ型に頭を小突かれた。
「お兄様。うら若き乙女がその御脚を秘めている空間を覗こうなど不届き千万でございます。死にますか?」
ヤバイ。このトラントロワ型はヤバイ。
勿論、覗く気など最初からなかったから速攻で言い訳をする。
「待て待て。俺は覗こうとしたのではない。この、このコタツは何で掘り炬燵になってるんだ? 我が家のリビングにそんな穴はなかったはずだ!」
「お兄ちゃん。これは、ミミ先生の発明品で『四次元掘り炬燵』なんだよ」
そう言いながらも俺の腕に胸を押し付けてくる星子。俺は混乱しながらも聞き返した。
「四次元掘り炬燵って何だ?」
「それはね。四次元なんだよ」
意味が分からない。
「馬鹿だな星子。そんな説明じゃわからないだろう」
そう言って説明を始める我が愚妹であった。
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