第3話 光速のホック外し

 昼休み。私と波里はお弁当を食べ終わっている。しかし、何をやってもワンテンポ遅い星子はまだ食べ終わっていない。幸せそうに、もぐもぐとウインナーをかじるその愛嬌のある表情は、見ていて心が和むから不思議だ。今、波里は席を外している。この平穏なひと時には、何とも言えない幸福感がある。


 そこへ波里が戻って来た。トイレに行ってたようだ。

 眼鏡っ娘の有原波里。肩まである髪をおさげにしているし、大きめの、赤いセルフレームの眼鏡が野暮ったい印象を与える。しかし、こいつはその地味な見た目とは裏腹にスタイルが良いのだ。胸は86のCカップだと思う。星子よりは小さいが、ギリギリAカップの私よりは随分ふっくらとしている。そんな、女としてはイケている胸を持つ波里が、星子の胸にちょっかいをかけているのは気に入らない。自分の胸でも揉んでいろと言いたくなる。


 星子はお弁当を食べ終わり、弁当箱を仕舞っている最中だった。星子の背後にすっと近寄った波里が、星子の背を片手でちょこんと突いたのだ。油断した。 


「いやだ~。羽里ちゃんホック外さないでよ~」


 そう叫んで、星子は体をくねらせる。その度に星子の豊かな胸元が揺れる。波里はあの一瞬で、星子のブラのホックを外してしまったのだ。それはきっと世界最速。光速の指先と言っていい手際の良さだった。


「もう、いたずらは止めて頂戴」


 一応、抗議らしい台詞を言ってはいるものの、のん気な星子は笑っているではないか。星子、お前は恥ずかしくないのか? ブラのホックを外されたんだぞ。

 そして、教室内の視線は星子に集まっていた。特に男子連中は目が泳いでいるものの、星子に意識が向いているのが丸わかりだ。星子に視線が集まるのは面白くない。私の可愛い星子を見世物にするなんて、私には我慢できない。


 不味い。やはりあの計画を実行するしかない。

 今か? 今、速攻でやるべきか?


 しかし、弁当箱をカバンに仕舞った星子は、席を立ち教室を出ようとした。トイレへ行ってブラを付け直すのだろう。


「星子ちゃん。手伝おうか?」


 波里のその一言に、クラス中の視線が集まる。さすがにそれは露骨すぎるだろう。


「大丈夫、一人でできるよ」


 そう言って、笑顔で手を振りながら星子は教室を出て行った。少しむしゃくしゃした私は、気分を落ち着けようと教室を出て中庭へと向かった。

中庭へと向かった。

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