番外編:我らブレイブチーム!!

その1:戦え!ブレイブチーム!!

 ────この地球に、魔の手が迫る。


 太陽系を襲う謎の異星侵略体シュバルツの侵攻に対して、太陽系防衛軍SSDFは人型作業用重機ボーンを改造した人型機動兵器『バスターボーン』、BBにより反撃を開始。


 奪われた木星までの人類生存圏を奪い返した。






 そして今、


 さらなる太陽系外縁部を奪い返すために、


 地球では、新たな兵器の計画が動いていた───






          ***


 地球、極東地域


 日本 東北地方 福島県太平洋沿岸、


 旧双葉郡、SSDF第98基地。




 海の上を進む、三機のBB。


 いや、正確には少し違う人型兵器群。



『事前の作戦通りよ!

 今日こそ勝つわ!!』


『了解!!!私、先行きます!!』


 先頭を進む青と白と黄色のトリコロールカラーの機体が、専用近接ブレードを手に一歩前に加速する。


 目の前に現れるは、三機のヒポポタマス。


 突出した相手を迎撃しつつ、セオリー通り引きつけて孤立を狙う。


 だが瞬間、背後から突如攻撃を食らうヒポポタマス。





『うふふふー!!油断大敵なーのだー!!!』


 いつの間にか、青い胴体のまるで飛行機に手足をつけただけのような面妖な空戦機が、両腕の『シースルーヴァルカン』を乱射し近接航空支援を行なっている。


 なるほど、と迎撃しようとした瞬間、さらに別方向から撃たれるヒポポタマス。


『こちらもいるわ。単純だけど厄介でしょう?』



 その方向には黒い印象の強い装甲の、重厚でいかにも装甲が厚そうな機体が、それにふさわしい口径にシースルーマグナムライフルを構えている。


 突出した機体を囮に素早く3方向から固める。


 ありきたりだがなかなかバカにできず、態勢の崩れたヒポポタマスは、ミサイルを放ち水柱を煙幕に一度引き始める。



『大当たりだ!来ると思った!』



 瞬間、最初に突出した機体が胸を突き出す。


 胸部装甲が割れ、現れた砲口がまばゆい光を放ち始める。


『そっちは、射線上だ!!


 バスターノヴァ!!!』


 音声認識を受けた機体が、チャージされた特大のシースルーウェポンのエネルギーを開放。


 水煙ごと退路を吹き飛ばされ、ヒポポタマスが一気に光の中に消えた。






 ピピー♪


『訓練終了!

 今回は、ブレイブチームの勝利!!

 20戦目にしておめでとう!!』


 そんな通信と共に、イェイ、とカラフルな機体群がハイタッチ。


 そして、水煙が晴れると落胆した様子のヒポポタマス達が煙が晴れた海上に姿をあらわす。


『くそー!!

 もう模擬戦無敗なスペシャル野郎って名乗れねぇかぁ〜!!』


 そんな、気の抜けた声と共に全員が帰投を始め、実機訓練が終わる。



           ***








 さて、そんな訳でこんにちは!



 私、ユーナ・シャムロック14歳!!


 見ての通り日系だけど、両親がイギリス人のちょっと変わった家系なだけの普通の女の子……



 って言いたいんだけど……

 色々あってSSDFのBBパイロットをしている、ちょっと特殊な女の子!うんこれでいいか!


 私の乗っている『ブレイブ・ゼロワン』も、とっても特殊でカッコいいスーパーなロボットのBBだよ?


 胸からビームが出るなんて、昔の男の子向けアニメ見たい!


「ふぃ〜……今日も実機訓練疲れたよ〜……」


「はい、お疲れ様。まぁまぁ良かったわよ」


 あ、でこっちでクールに優しく私に飲み物を渡してくれている、ものすごーくふにふに抜群スタイルのおねーさんっぽい子が、パトリツィアちゃん!!


 一歳だけ年上っていうけどおっぱいもお尻も手足の長さも全部別物ってぐらい抜群の子!銀髪可愛い!!


 乗っているのは、あっち側に立っているものすごーくゴツゴツした『ブレイブ・ゼロツー』。ギャップがすごいね?


「あー!?二人だけずるいぞ〜!

 私の分はどーこーだー!?」


 そして、こっちのなんだかタラップの上を───正確には空中をふわふわ飛んでやってくるのが園子そのこちゃん!


 当然のごとくクールにゼリー飲料を用意していたパトリツィアちゃんの腕に、いつものよーに蓋を開けてあるそれにかぶりつく変わった子だよ!

 ふわふわ浮いているだけあって、空戦機の『ブレイブ・ゼロスリー』に乗ってるよ!




 私達が、ブレイブチーム!!


 日々、宇宙の侵略者から地球を守るために、この最新型なすっごくカッコいいBB、『ブレイブバスターボーン』に乗ってるよ!


 まぁでも…………




「おーおー、さすが勝者の余裕は違いますな〜!」


 おっとと、通路の向こうからヨハン中尉さんの登場だー!

 今回の模擬戦方式の実機訓練の相手チームの隊長さんだよ?


「中尉さん、お疲れ様!」


「なにおう!?お疲れ様というほど腕は落ちてねぇや!!

 次は勝つからな!!お嬢ちゃんどもをコテンパンにしてやるよ!!」


 うーん……すごい人なんだけど、子供っぽいなぁ…………


「中尉、子供たち相手に大人気ないですよ」


「そっすよ、いい大人なんだから」


「いい大人がいいようにやられたから悔しがるんだろぉ!?

 お前らたるんでるぞ!!こりゃあ、訓練を倍にすべきかぁ、お前ら?」


「げぇ!」「そりゃねえっすわ!」


 はははは、と笑うヨハン中尉さん達のチームのみんな。

 こういう冗談を言ってくれるのっていいよね?


「はいはい、さっさとみんな戻りましょ?

 レポート書くのも軍人の努めよ」


「うへぇ……パトリツィアちゃん、クールにサラッと聴きたくないこと言う〜」


「魔女っ子の園子ちゃんは、レポートが何かも知りません〜」


「俺も、そういうのは勘でいいと思うので同じく〜」


「ガキ二人はともかく、大の大人が何をいうのやら中尉」


 大人でも嫌だと思うよぉ〜?ねー中尉??

 ほらー、何故か心でこの想いが通じる〜。


「はいはい、とっとと行く」


「「「はーい」」」


「やれやれ、かなわねぇや」


「俺もまだまだ青いけど、大人らしく行きますかねぇ」


 そんなこんなで、嬉しくない時間の始まりだー

 うぅぅぅ…………



         ***


 第98基地の士官用事務室……



「お勉強辛い……」


「文字書きたくなーい!」


「ぢぐしょう…………俺もやだ……」


 軍隊は、書類をその主敵とし、余力を持って敵と戦うべし…………



 やだー!!書類なんかと戦いたくないよー!!!



「思い出すなぁ……夏休みの宿題を9月1日にやっていた朝を…………

 あの頃は良かった……朝どころか夕方までは待ってくれてたんだ…………うぅ……!!」


「大人も泣くぐらいの事やりたくなーい!!」


「はいはい、こういうダメな大人になりたくないなら書類を済ませましょう。

 私達は士官なのよ、准尉や少尉でも」


 そう言ってクールにクールにレポートを書けるパトリツィアちゃんが羨ましいよぅ…………




「その通りなのじゃ!!

 諸君のレポートは物凄く重要だから、手を抜くではないぞ!?」




 突然、ドアをばーん、って開けて入ってくる小さな影。


『のじゃロリ博士!?』


「のじゃロリじゃなーい!?!


 野地屋のじや ルリ、って何度も言っておるじゃろがーい!!!」


 入ってきたのは、私より背の小さな白衣でメガネの女の子……


 じゃなくって、これでももうアラサーな鹿児島県出身の、のじゃロリ博士……じゃなかった、野地屋ルリ博士だ!


「じゃが今はそんなことはどうでもいいのじゃ!!

 ブレイブチームの諸君!!


 諸君らのレポートは、この地球を、いやこの太陽系を救う勝利の鍵なのじゃぞ!?


 諸君ら、『ピキュリアー』の能力を最大限に高めることで極限の性能を発揮する、ブレイブバスターボーン。


 それらの強化、改修には、精度の高いデータが必要なのじゃ!!」




 さてここでちょっと説明ね〜?



 ずばり、ピキュリアーとは!!


 私のことをちょっと特殊、と言ったけど……

 実は、どうも開拓歴を迎えるずっと前から、超能力を持った人間が何人か確認されてるんだって。


 まぁ大抵嘘か詐欺かトリックらしいけど、なんと私みたいに本当に変わった能力を持っている人間がいるみたい!


 ちなみに私の力は、電化製品を壊しちゃう力……じゃなくってぇ!


 えっと……『周囲のエネルギーを加速させて増幅させる力』なんだって!


 子供の頃は良くお父さんとお母さんを困らせてたけど、今は結構加減できるようになってて、


 電池切れかけてるテレビのリモコンの電池でもピッてリモコンが反応したり、

 旅行の時にバッテリーが上がっちゃったお父さんの古い車を動かしたりとか、


 結構、便利な能力になってるよ!



「そんなわけでも!ブレイブバスターボーン、BBBトリプルビーのレポートは必要なのじゃー!!!


 真面目に書けぇ!!こと詳細に書くのじゃー!!」



 ちなみに、のじゃロリ博士の言葉を聞いてないで真面目にただレポートを書いているパトリツィアちゃんは『特殊なエネルギー防壁を張る能力』を持っていて、今は多分うるさい博士の声を聞かないために耳の穴に使っているよ。


 そして私の隣で『重力場を変動させられる』能力でペンを浮かしたりして遊んでいる園子ちゃんは素で話を聞いていないよ!




「……あのー……」




 おっと、忘れちゃいけない人がいた!


 ルリ博士の背後からやってくる、結構可愛いちょっと大人な女性のこの方!!


 一応、私達ブレイブチームの隊長である、東雲しののめ まい大尉!


 ちょっと気が弱いけど素敵な美人さん♪


「博士……?言いにくいんですが、あの……」


「なんじゃい、東雲くん?」


BBBトリプルビーの略称は、すでにBHI社の新型のビルドバスターボーンが普及し始めている以上、混乱を避けるために使えません……」


「なんじゃあ、そんな話か!!フン!

 何がビルドバスターボーンじゃ!せっかくのロボなのに量産性に走るとは軟弱な!」


「実際性能も高いですし……」


「性能だったらこっちの方が上じゃあ!!

 ちょっと不安定な新型動力の『ジュピタードライブエンジン』がネックじゃが、データ上は紛れもなく上じゃろうて!!」


「でも、その……」


「量産性のことを言うとるなら、そもそもアレの目的は『コスト度外視の性能を持って、単騎による敵主力の撃破』が目的じゃし……」


「そうじゃなくって……」


「なんじゃい、モジモジ言いにくそうに!

 はっきり言えば良いじゃろ!?」


「………………


 ブレイブバスターボーンの内部フレームの大部分、それ以外に耐えられなかったからって、博士が泣きながらビルドバスターボーンの物を使っているじゃないですか」




 あ、博士が胸をビームで撃ち抜かれたアニメのロボットみたいに吹き飛んだ!


 どさり


 地面に倒れこんだ博士は…………えぐっ、えぐっ、と本気で泣いていた。



「そうじゃった……!!


 ワシの考えたフレームがことごとく……ことごとくが『例の機構』に耐えきれなかったのじゃった……!!


 う、うぐっ、うぇぇぇぇぇぇ!!!


 なんでワシの頭脳があんな品性を全部胸とかに回したみたいな女の会社の製品に負けるのじゃぁぁ!!


 ぶぇ、ぶぇ、ぶぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!!」



 あああ、泣いちゃったぁ……!!

 もう……こんな風にガチ泣きしちゃうから「のじゃロリ博士」って言われちゃうんだよぉ〜?


「流石にかわいそうね……」


「パトリツィアちゃん聴いてたの?」


「途中からね。悔しいでしょうね、博士も」


「博士〜、泣いちゃめーだよぉ〜??

 ほら〜、私も大好きなカスタードクリームが尻尾までたぁ〜っぷりなたい焼きあげる〜♪」


「うぅ、子供扱いするなぁ……!!

 でも餡子は苦手じゃからありがとぉ……!!」


 もぐもぐ、と受け取ったたい焼きを食べる姿が可愛いのじゃロリ博士♪


 これで少しはいたたまれない空気もマシになったかな?



 と、





『緊急警報!!全BBパイロット出撃待機せよ!!

 シュバルツ軍が地球防衛圏内に出現!!

 これは訓練ではない、繰り返す!!


 シュバルツ軍が地球防衛圏内に出現!!

 全BBパイロット出撃待機急げ!!』




 警報とともに響く音声。


 間違いない……出撃だ!!



「行くぞガキども!!今日は出番かもしれない!!」


「じゃな!!東雲くん!」


「はい!


 ブレイブチーム、出撃準備!」



「「「了解!!」」」


 やったね……出番!!



          ***


 普通のと違って、ちょっとカラフルで私たちに合わせた特殊なパイロットスーツを装着!


 両脇が羨ましいサイズだったのを堪能したオヤジっぽい私の心を満たしつつも素早く着る!


「いくよ!ブレイブ、」


「「オン!!」」


 ちょっと昔の割と楽しいロボットアニメっぽい合図と共に、みんなで格納庫のコックピットへ!




「ジュピタードライブ、ロック解除。

 プライオリティ、ユーナ・シャムロックへ移行!」


 音声認証で、コックピット内に備えられた網膜認証が起動。

 みんな安心2段階認証で、私のブレイブ・ゼロワンが起動する。


『セットアップ、エンジンスタート』


 木星の超重力下でしか作れない特殊な超重元素『ジュピター09』、だっけ?を超すごい科学でエネルギーに変える新型動力のジュピタードライブエンジンが唸りを上げて、シースルーウェポンっていうビーム兵器みたいな色の粒子が排気口から舞うように出てくる。


『反重力機構、正常作動ぉー!』


 実は、園子ちゃんの能力を異星人技術との併用で再現したらしい、今じゃ宇宙戦艦から何からまで付いている反重力浮遊装置が起動しているのを確認して、これでよし!!


『ブレイブチーム、ゴー!』


 そして、私達は、格納庫を出る───────











「まぁ、ここでずっと待ってるだけだけどね」




 基地の前の滑走路。


 それが私達ブレイブチームの定位置!!


 ………………



「今日出番あるかな?」


『面倒だからなくていいよー』


『ふぅ……愛しのお姉さまと同じ活躍はしたいけど、こればかりは仕方ないわ、だって……』





          ***





「何故じゃー、レイ君!!!

 なぜ我らは前線に行けないのじゃー!!」


 まだ年齢の若いレイ・ファルコム准将の胸ぐらを掴み、ルリはそう尋ねる。


「いやだって、不安定な上にだいぶ予算かかっているあの子達の機体を壊すわけには行かないって上がね博士……?」


「それじゃあ実験にもならんのじゃー!!

 お主なんとかせいよぉー!?!」


「そんなこと言ったってさぁ!!

 僕だってカッコいいスーパーロボットの出撃指示とか例のアレの命令もしたいけど……けどぉ!!」







 こんな不毛な会話を日本の福島県の浜通りでしている間にも、地球軌道へやってきたシュバルツの艦隊と、地球を守る地球圏防衛艦隊との熾烈な戦いが始まっている。


 太陽を背に現れるシュバルツ郡、


 コロニーや月からの援軍を持って相対するSSDF艦隊。


 今、地球をかけた戦いの火蓋が切って落とされ、幕が上がろうとしていた……!




          ***


「そして、という状況なのにここは平和でしたー」


『あー!流れ星ー!』


 おー綺麗だなー!

 今日は流星群の日だったのかな?


『あ、あれ多分撃墜されたどちらかの機動兵器ね。

 まって、あの大きさは多分巡洋艦よ』


 ワーオ、夢がない話だったー。


「みんな戦ってるんだなぁ……私達だけ平和で良いのかなー?」


『そういう、余計なことに気を配れる人間を守るために、今日も宇宙で戦っている人達がいるのよ』


『例えばどんな人だろぉ〜?』


『そうねぇ……じゃあ、我らがレディーエース、穂乃村ルル大尉はどう?』


「あー、またその人ー?」


『言葉を慎みなさい!

 単一の、私のようにブーステッドですらない人間でありながら、200以上のシュバルツを撃破し、なんども敵の空母を拿捕した生きた伝説のBBパイロットよ!』


『パトちゃーん、数増えてなーい?』


『増えたわ。18歳って年齢本当かしら?

 ああ……我が心のお姉様、ルル大尉は今頃何をしているのかしら……?』


「案外、クマのぬいぐるみを抱っこして寝ていたりして!」


『ハッ!貴女か園子じゃあるまいし……』



          ***


「むにゃむにゃ…………えへへ、抱っこぉ……♪」


 その頃のルルは、スヤスヤとクマさん着ぐるみパジャマを着て寝ていた。

 案外あったかい上に柔らかく、テントで寝ていても熟睡できる代物な上に、ルルは可愛いのでよく着ている逸品だ。


          ***


『ありえないわ、そんなこと!』


 えー、でも案外女の子は可愛い物好きな生き物だし?





 そ ん な 会 話 を し て い る 間 に

 2 時 間 経 ち ま し た





「……今日も出番なしかなー?」


 何度目だ命の流れ星。


『無線だと、なんとか追い払ったみたいよ?』


『終わりかー……』


 うーん……出番もなく戦闘が終わるのかー。


「もう何度目かのこのパターンだねー」


『きっとのじゃロリ博士はまた泣くわね』


『泣いちゃうより博士は笑っていてほしいなー』


「そうだねー……そうだ、流れ星にお願いしようか!」


『ファンタジックね、発想が。

 あの流れ星は無念のまま散った友軍かもしれないのに』


「だったら願いを聞いてくれるかも!


 じゃあ……博士が泣きませんように博士が泣きませんように博士が泣きませんように!!!」


 やった!3回言えた!


 あのキラキラ光る大きな星のお陰か…………


 あれ?



「あの星……」


『……こっちに近づいてない?』


『うーん……大きくなってる?』


 その時、ノイズ混じりに聞こえる無線があった。


『────ちら……駆逐艦、ミユキ……!』


          ***


 もう、誰も生きていない。

 艦は今も大気圏の断熱圧縮に焼かれ、もうすぐ爆発する。


「はぁ、はぁ……私の、最後の通信だ……聞いて、くれ……!!」


 艦長らしき彼が、血を流しながら見る景色。


「敵の……目的は……地球に……これを……!!」


 外でプラズマの尾を引きながら、大気圏へ突入し始めるもの。


「一兆トン級の……………隕石だ……!!」


 それは、巨大な隕石。

 敵がわざわざ、運んできたもの。



           ***


「『『えぇぇぇぇぇぇ!?!?』』」


 びっくりした。


 あれ隕石!?



『まずいぞ!?あのサイズ!!

 冗談抜きで地球環境が変わるレベルじゃ!!』


『破壊は出来ないんですか!?』


『阿呆!!破壊なんぞしてみろ!!破片でやっぱり地球滅亡じゃ!!!』


 不穏な会話をしないで博士……!!



『どーしよー!?この世の終わりだー!?』


『どうするのこれ!?』


「分かんない!!」


 本当どうしよう!?




『───無線を聞いているものは聞いてくれ。


 こちら、地球軌道艦隊所属、新型戦艦のエクスキャリバー』


 ふと、そんな通信が聞こえる。



『我が艦のMAP-W、『ブラックホールキャノン』を使用する』



 えっ……!?


『バカな!?そんなことすれば、被害は小さいとは言えるが……!!』


 なんかやばいんじゃない……?


『余波のγ線バーストで、ああ、あの距離じゃこの日本地域は……!!』


 どうなるの!?なんでそこで黙っちゃうの!?


『被害の大きさはわかっている。


 だがこれより小さい被害にするすべはない。


 ───終わったら私にすべての責任を負わせてくれ』


 通信が切れた瞬間、博士が叫ぶ。







『ブレイブチーム!!


 すぐに『トリニティフォーメーション』を使えぃ!!』







「『『え!?』』」


「説明は後じゃー!!すぐ隕石に迎えー!!」


 あ、そっか!!

 何するかわかった



「隊長!!」


『はい!!パターンTV、プロテクト解除!!

 合体タイミングをパイロット権限へ!!』



 舞さんの手でシステムのプロテクトが解除される


 よし、と私達三機はここから飛び出す!




『グラヴィティフィールド、オン!!』


 ブレイブ・ゼロスリーと園子ちゃんの力で、重力の竜巻を作り、私達の機体が巻き上げられる。


『合体システムリンク!!

 ユーナ!!』


「ジュピタードライブエンジン、フルドライブ!!

 音声ロック解除コード、行くよ!!」


 三機のシステムが連結。


 私のブレイブ・ゼロワンの三機の中でも一番高出力ジュピタードライブエンジンが、私の力でもっともっと強いエネルギーを生み出す!


 準備完了!!!








「『『クロス!!トリニティフォーメーション!!』』」








 瞬間、私のブレイブ・ゼロワン、ゼロツー、ゼロスリーが一直線に並ぶ!


 変形開始!ブレイブ・ゼロツーは下半身と両腕に!!


 ブレイブ・ゼロワンが両手をたたんで、胸と翼に開いて変形したゼロスリーが合体!!


 手足と下半身が上半身とドッキングして、腕が起動したら真上にある私の武器が変形したヘルメットを被る。







「─────ブレイブトリニティ!!

 ここに見参!!!」




 これが、この三機の最大の機能!!


 天下無敵のスーパーロボット、ブレイブトリニティへの合体機能!!




「そしてぇっ!!」


『早速到着ぁーく!!』


 ブレイブトリニティは、私達3人の力で普通のBBじゃ出来ない動きとパワーが出せる。


 私のなんでもエネルギー強化で園子ちゃんの重力操作を強化して一気に加速して、例の隕石に近づいていく!


『ユーナ!

 私の力と機体のEシールドジェネレーターで!!』


「OK!!





 トリニティバリア───────ッッ!!!」





 今度はパトリツィアちゃんの力と機体のEシールドジェネレーターを思いっきり強化!!!

 

 そこに展開したシールドと、全く同時に放たれるブラックホール。



『来た!!みんな衝撃に備えて!!』




 ズドォォンッッッ!!


 ゴォォォォォォォ……!!!




 ブラックホールって言うから真っ暗かなと思ったけど…………


 目の前で起こったのは、真っ暗な何かに、凄まじい光がまとわりついていたり、吐き出されていたりするものすごく綺麗で…………ものすごく怖い現象。


『あの光なぁに〜???なんか怖い〜……』


『ブラックホールは、この世の事象の中でも、質量のエネルギー転換効率が最も良いわ。

 あの光が、その過程で起こった大量のγ線バースト。

 人類も……いえ全ての命も電子機器も全て焼き切る凄まじい火力の……!』


「だから……!こんなに防ぐのが辛いのかな……!?」


 なんだか……物凄い疲れちゃう。

 ブレイブトリニティのエネルギーも、すごい勢いで減って行って…………


 でも、やがてまばゆい光は収まって、

 後に残るのは、静かな空……


「やった……!!」


          ***


「いよぉし!!

 流石なのじゃブレイブトリニティ!!」


 地上基地でガッツポーズを取るルリ博士。


「でも本当に良かった……まさか大気圏内であのMAP-Wを使うことになるなんて……」


「東雲くん!」


「は、はい!?」


「つまりは、地球もすでに後方とは言えないということじゃろう。


 上層部が何を考えているかは知らぬが、すでにここも戦場じゃあ」


 意外なほど真剣な顔で言うルリ博士に、思わず心配な顔になる舞。


「……あの子達も、戦場に……?」


「何を今更!

 ほんの少し変わっているだけの子供に無理を強いているのは我々大人じゃろうて!」


「う…………」


「どこもかしこも少年兵だらけ…………

 いくら異星人の襲撃が来たといえど……見境がなさすぎる。

 ワシは……いやこの星のそれを強いている大人全てが、死ねば地獄に落ちるじゃろう」


「…………」


「だからこそ、せめてあらゆる手段を使わねばならん。


 未来あるものが死なないための……あらゆる手段を……!」


 やがて、二人は空を見る。


 遠くに浮かぶ……ブレイブトリニティを見上げる。


「願わくば、あれが手段として最適であるように……」


          ***




 巨大なγ線バーストとやらを、私達の機体は完璧に防ぎきった……


 やった……何よりも……!



「私達、出番あったよ……!」



          ***

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