第31話『会合』



「ハグマさん、実はお話したいことがあるんです」



 いつもの交流の場にて、言語の勉強が一区切りついたところで、ルィルがハグマに向かってそう聞いて来た。



「話し、ですか?」


「はい。出来れば二人っきりで話したいんですが、いいですか?」


「ええ、私は構いませんが」



 ルィルはいつもと違ってしおらしい表情で頷くと、国防軍とイルリハラン軍が集まる場から少し離れた場所へと移動し、羽熊も座っている脚立から降りてルィルの方へと持っていく。


「……それで話とは何でしょうか。他の人には聞かれたくない話ですか?」



 普通にしゃべる分では他の誰にも聞こえないところで再び脚立に座りなおした羽熊は、ルィルに尋ねた。


 先日の日本観光の際のリィアみたいに、集団の前では話せない個人的なことでもあるのだろう。であれば異性ではなく同性の人にしてほしいのだが。


 ちなみに木宮は羽熊とは違うベクトルで多忙なので毎回交流の場に来てはいない。



「実は……はい」


 その恥ずかしみを帯びた表情と口ぶりから。何が言いたいのか大よその見当が付いた。


 異星人でも恋愛絡みだと似たような態度になるらしい。心理学者ではないが興味深い。相手は誰だろうか。羽熊が知る中でよく目にするのはリィアとエルマだが、基地か基地外に意中の人がいるのかもしれない。



「……前にハグマさんは恋人がいたと言っていましたよね? レヴィアン問題で別れてしまったと」


「は? ああ、はい。私としては最期の時一緒にいたかったんですけど、彼女は最期まで好きに遊びたい。あなたに縛られたくないと言ってそれっきりです。束縛とかなにもしてなかったんですけどね」



 意味合いとしては一人に絞らず色々な人と関わりたいと言うのは、別れてから少しして分かったことだ。


 五年以上付き合い、結婚を真剣に考えていたのにその仕打ちはひどいと言わざるを得ない。レヴィアン問題で未来がないとしても、最期は愛する人と言うのが普通だと思っていた。


 なのに彼女は羽熊に対して『一緒に死にたい相手』には思われてはいなかった。


 羽熊は羽熊なりに彼女にふさわしい男になろうと、仕事と並行して頑張ったのに。



「ひどい女性ですね」


「気持ちは分からなくはないですが納得は出来ませんね。国土転移して生き延びても連絡もありませんから、戻れないかよその場所で死んでるかもしれません」


「捜そうとは思わないんですか?」


「一方的に別れたので愛情はもうなくなりました。彼女から連絡が来てもあしらいますよ」


「そうですか。よかった」



 よかった?



 何やら雲行きが怪しくなってきた。


「それで話とは何ですか? 回りくどいのは良いので単刀直入でお願いします」


「はい。では……」


 ルィルは胸に手を当て、二度深呼吸をする。



「私、ハグマさんの事、好きなんです」



 意識するとか気になっているとかあいまいな表現をしないで本当に直球で来た。


「え……と、はぁ、それは……その…………ありがとうございます?」


 告白したことは幾度かあれ、女性からは初めての事に返事が変になる。しかも相手は異星人ともあって動揺が隠せない。


 沈黙が二人を包み込む。遠いところで聞こえる交流の声が羨ましくなった。


「あの、返事……聞かせてもらえませんか?」



「返事……ちょっとまって下さい。え、なんで俺? あのルィルさん、突然で驚いているんですけど、なぜ私のことを? 正直に言ってあなたとはそこまで想われるようなことをしたとは思えないのですが。それに生活圏の違いだって、日本観光で分かったはずです」


 まさかドッキリと思うも、そんなエンターテインメントがしあえるほど分かり合ってはおらず、最悪国際問題になりかねないからないはずだ。



「最初に思ったのは言葉が通じないのに、必死で伝えて分かろうとするところからで、あとは真面目にするところをみて……」


「それは、うれしいですけど、同じ人種ならそれでよくてもルィルさんと私は異星人同士ですよ? いくら考え方が同等でも異星人を好きになるのにそれはあまりにも緩いのでは? 第一、空に生きるあなたと、地で生きる私では違いがあり過ぎです」



「愛さえあれば気にしません」


「いや、さすがに無理でしょ」


 普段とは違う感情をあらわにするルィルに、羽熊は冷静に切り返す。


「お気持ちはうれしいですが、お付き合いは出来ません」


「どうしてもだめですか? 嫌いですか?」



 なぜだろう。相手しているのがルィルと言うよりは日本の女性のような感覚がする。


「人としては好きですけど女性としては見れません。分かるでしょう?」


「分かりたくありません!」


 リィアはいないのだろうか。


「ハグマさん、私だけを見てください」


「ルィルさん、落ち着いて」


「落ち着けるもんですか! 真剣なのに!」



 と、ルィルは涙目になりながら叫んで、右手を腰に回す。


「ハグマさんは私だけを見てください。じゃないと、撃ちますよ?」


 取り出したのは地球のと大して変わらないオートマチック式の拳銃だ。その銃口が羽熊の腹へと向けられている。



「ちょ、ルィルさん、さすがにそれは冗談じゃ済まされないですよ」


「じゃあ付き合ってもらえますね?」


 笑顔なのに全然笑顔に見えず、拳銃を腹に突き付けられてどう反応すればいいのか分からない。しかし、決してOKは出せない。


「無理ですって。いくら銃で脅したって出来ません」


「腕時計を交換した中じゃないですか」


「仕事としてだろ」


 そこまで持ち出すのにはさすがに行きすぎと口調を変えた。



 瞬間。



 腹に衝撃が来ると同時に聞きなれない発砲音が響いた。


「もういいです。私を見ないハグマさんなんていらないです」


 ゆっくり。ゆっくりと視線を下にして、その後首も曲げる。


 痛みはまったくないが、腹からは円形に赤い模様が広がっていく。


「……うそ」


 羽熊は脚立から後ろに落ちた。



「っ!」


 バッと目を開けて体を起こす。


 まるで何キロとマラソンをしたかのように、大量の酸素を体内へと取り込んでは吐き出して周りを見渡す。


 額や背中には気持ち悪い汗がにじみ出る。


 目に見えるのは草原や狂気に満ちたルィルではなく、隊員寮の羽熊の部屋だった。


 窓からは日が昇ったのが木漏れ日が注いでうっすらと部屋を照らしている。


 腹に手を当てても痛みも穴も血もない。


 つまり今の出来事は……。



「夢かー」


 事実と思っていたアレが夢と気づいて、羽熊は長い長い息を吐き出した。


「夢でよかったああぁあぁぁ」


 羽熊は本気で安堵した。


 夢と言うのは凶悪だ。どんな荒唐無稽であっても当人は事実として受け入れてしまい、大抵は起きた瞬間に忘れてしまうと言うのに悪夢や強烈な印象の夢は忘れない。


「なんて夢を……」


 当分の間忘れなさそうな夢を思い出しながら苦悶する。しかし所詮夢だ。現実とは全く関係ないから悩んだところで何の意味もない。


「……忘れよう」


 羽熊はそう決めて朝の支度を始め、テレビをつける。



『一週間に渡り東京を観光しましたイルリハラン人男女十名は、接続地域から午後七時頃ラッサロン天空基地へと帰国していきました。異星人が日本を観光すると言う史上初の試みは、何のトラブルもなく無事に成し遂げられ、政府関係者は大変満足する結果となってホッとしているとコメントをしております』


 テレビでは遠方から撮影した、車いすに乗るイルリハラン人が映し出される。



『日本観光六日目は銀座を始め、複数の商業施設で買い物を行い、一人当たり約十万円相当のお土産を購入していきました。どんなものをお土産にしたのかは公表されておりませんが、関係者の話によりますと体に害のない化粧品や食べ物が主とのことです』


 他には女性だとワンピースタイプの服も買ったらしい。高身長の彼女らにとっては足首まで届くワンピースでもミニスカくらいしかならないが、それでも数少ない着れる日本の服だけあって色々と買ったとのことだ。


 買ったと言っても、土産代は日本が出したので買ったと言うよりは貰ったと言う方が正しいが、さすがにそんな表現をテレビでは出来ない。



「日本の土産、オークションに掛けたらどれくらい値が上がるかな」


 歴史価値があるものや希少品とは全く別の、異星の文化で製造された品物。国土転移や宇宙船飛来が無ければ絶対に手に入らない品物だ。


 まだ流通が出来ていない環境での出品であれば、例え消耗品であっても欲しいと思うのが人の性。おそらく定価の数千から数万倍の額になるかもしれない。


 そしてまだ確定ではないが、イルリハランの通貨であるセムの為替レートが定まって来た。



 大雑把に見て一セム=〇・五円。一万円をセムに両替すると二万セムになるようだ。


 単純に数字が倍になると考えれば早いだろう。


 ただ、それは日本がイルリハランの物価を見ての判断で、イルリハラン側との調整はしていない。なので向こうから見たら日本円はまだ無価値だから、何とかそのレートで価値を付けてもらわなければ金融は動かない。


 通貨の価値はそのまま国の信用になる。日本円が世界経済の危機的状況時に買われるのは、どんな状況になろうと日本円は信用できるから買われるのであって、それは日本が信用されているからだ。



 しかしこのフィリア社会においては日本の信用はないから、円は事実上の無価値となる。


 その無価値の通貨に国の信用をプラスして価値にしなければならないから、こうした交流や、観光に土産をして信用を作る必要がある。


 土産に価値が付けば少なからず生産国として国の信用を作ったこととなり、即ち円の価値に繋がる。


 観光の裏ではそんな策略があったのだ。


 その策略がどれだけ機能するかは分からないが、是非とも機能してくれることを願うばかりだ。



「今日の予定は……エルマ殿下……じゃなくて大使と会合か」


 イルリハランが日本を国家承認して以来、週に一度は必ずエルマと会合するスケジュールを組んでいる。


 と言うのも、現状両国の政府が会談をする場合、エルマや木宮が間に入らないと出来ない仕組みになっているからだ。


 その理由は不完全な国交状態であり、よくテレビで耳にする『パイプ』が構築されきっていないからにあった。



 日本とイルリハランはまだ一切の条約を結んでいない。軍レベルから行政レベルへと交流は上げられたが、政府レベルでは仲介人を挟んでようやく意思の伝達が出来ているだけで、政府同士の繋がりはまだなかった。


 その証拠に、過去の記者会見や参考人招致では羽熊と木宮が間に挟む形で、日本政府の意思をイルリハランへ伝えている。


 なぜこんな状態になっているかと言うと、日本は国家承認から数日待たずに国会でイルリハランを国家承認するか否かの議決を取り、全会一致で承認する決議をとった。のだが、承認しただけなのだ。



 つまり日本はイルリハランを国と認めますが、まだ国交はしたいけどまだしません。と言うことで、これはイルリハランも同じだった。


 答えは簡単。手続きや情報が不足しているからだ。


 相手と握手が出来るのは、最低限の情報を持っているからこそであって、相手のことを何も知らなければ出来ようもない。握った瞬間に拳ないし凶器が出てくる可能性もあるのだ。


 その最低限の情報を手にし、握手たりえる相手か見極めるためにも間を開ける必要があった。


 それが、不完全な国交状態である。


 本音であればさっさと握手をして完全な国交状態にしたいのだが、常識外の国交であるためどうしてもワンクッションおく必要があるのだ。



「多分今日の会合は観光の事が中心になるかな」


 あとは両国政府の意向や諸外国の動向、国内世論など意見交換だろう。


「……ルィルさん来るのかな」


 正直いまは会いたくない気持ちを持ちつつも、多分来るだろうと思って朝食までの間の仕事に取り掛かることにした。



      *



 今現在、日イで交流する場所は四ヶ所ある。


 ラッサロン天空基地に建設途中の在イ日本大使館。


 日本領ユーストルとイルリハラン領ユーストルの境界線上(名称協議中)。


 駐日イルリハラン大使館。


 接続地域から十メートルほど離れた位置に建てられた二階建てのプレハブ小屋。



 主に使われているのは日イユーストル境界線上で、その他のは用途に応じて使われる予定だ。日イ双方の通信機器も電源を含めて各施設に設置済みだからいつでも使える状態にある。


 通常であれば慣れた境界線上でするのだが、今回エルマは昨日プレハブ小屋を指定してきた。具体的な理由は明かされず、しかしどれも交流用であるため日本側はそれを受け入れた。


 午前九時。十キロ先にある大使館用四級天空島と、五十キロの位置にあるラッサロン天空基地からそれぞれ飛行車と巡視船がやってきた。



「ニホンの皆さん、おはようございます。今日は急な場所変更申し訳ありません」


 ルィルほどではないがエルマの日本語がかなりうまくなっている。


 それだけでどれだけ努力しているのが伺える。


 訪れたイルリハラン側はエルマを始め、ルィルにリィアといつもの交流組五名ほど。対する日本側は、新規参加で与党若手国会議員の若井修哉、外務省は木宮、羽熊に雨宮他三名の自衛官である。


 そしてエルマ側はなにやら箱を持って来ていた。一メートル四方の立方体で、段ボールのような紙製だ。



「お待ちしておりました。エルマ大使」


 木宮の案内により、二階にある戸からエルマたち三人が中に入る。


 二十畳のスペースを持つプレハブ小屋にはシンプルにパイプ椅子と長テーブル、通信機器程度しかない。本格的であれば足りなすぎるが、予算と簡易交流用からこんな形となった。


 エルマたちは慣れたようにパイプ椅子に腰かけ、向かい合う形で木宮たちが座る。


 ルィルやリィアも一週間滞在した日本から帰国したばかりだと言うのに、また来るとは大変だ。疲れも取れていないだろうに。


 と、ルィルと目が合った。お互い軽く会釈する程度で済ませる。


 今朝の夢のせいで、今までは何ともなかったものが妙に意識を持ってしまって困る。刷り込みでも言うのだろうか、夢で知っている異性から告白を受けると何とも思っていなかったのに疑似的な好意を覚えてしまう。


 それとは抜きに挨拶をしようと思ったがやめた。



「挨拶の前にまずはご紹介を。こちらの方は日本の国会議員の若井修哉と言います」


 木宮のあいさつで、座っていた三十代後半である中々のイケメンの男性は立ち上がる。


「お初にお目にかかります。私は日本国衆議院国会議員、若井修哉と申します。本日より私もイルリハラン王国の交流に参加させていただきたく思います」


「おお、ニホンの議員の方ですか。私は駐日イルリハラン全権大使、エルマ・イラ・イルリハランと申します。前職はイルリハラン軍軍曹をし、血筋では現イルリハラン王国国王の甥にあたります」


「若井議員は父も国会議員でありまして、官房長官の経験もあります。二世議員ではありますが、将来の大臣候補でもあります」


「いえ、私はまだまだ勉強途中の若輩者です。ですが、国会議員としての立場と責任を考え、日本とイルリハランの関係構築のために奮迅努力させていただきます」



 そして二人は名刺交換をする。


 フィリア社会も地球社会同様名刺の文化があるのだ。多少に差異はあっても流れとしては日本式と大きく違わない。


 羽熊も最初、名刺を出された時は目が点になったものだ。異星の文化で名刺が発祥するとは夢にも思っていなかった。


「ワカイ議員。シュウギイン、これは我が国で言う右院、左院でよろしいですか?」


「はい。我が国では衆議院、参議院と分かれていまして、両議院を通過することで法案などが成立されます」


 二人の名刺交換が終わると着席して話が始まる。



「まずは七日間、我がイルリハラン人十名をニホンに招待していただいたこと、あらためて感謝いたします」


「我が国の事を知ってもらうには、我が国を直接見ていただくに限りますので。残念ながら地上から離れた移動の徹底はできませんでしたが」


 答えるは木宮。


「それは全員覚悟の上です。強制ではなかったのですからお気になさらないでください」


「すでにニホンより持ち帰った土産の一部はラッサロンに配られ、異星国家の食べ物を喜んで食べたと聞かされています。五万人に対して十数人分ですので、倍率は数千倍となりましたが」



 そう聞かされて日本側は小さく笑う。


「いずれは日本の食べ物が流通するでしょう」


「そうなることを期待しています。ワカイ議員、ニホン国内ではこの観光をどう評価をされていますか?」


「良好です。心配されていた排除活動はほとんどなく、初めて直接目にする異星人に喜び、歓迎の意を表しておりました」


「報告通りで安心しました。皆さんを疑うわけではありませんでしたが、自分の意思で移動できず、異星国家の首都に武器も持たずに入国するのはさすがに……」


「お察しします。逆の立場であれば同じ心境だったでしょう」


「ですが、報告では全員、地に近い以外では一切の不遇を訴えておりませんでした。まあまた行きたいかと言われると例の理由から即答は少なかったですが、待遇に関して言えば文句のつけようがないと言っておりました」



 それは日本にとって最大の賛辞だ。


 証明するかのように共に座るルィルとリィアは頷く。


 日本側が心配するのはよい待遇をしたつもりが、実はよくない待遇だったと思われることだ。多少世辞があるにせよ、大使よりそう言ってもらえれば安心できる。


「それで本日なんですが、ある物を持参しました。それは会合が終わったときにお渡しします」


「物、ですか?」


「持参した物と理由につきましてはその時に。今日は一つ重要な話がありますので、そちらを優先させてください。世界連盟の動向です」


 その名前を聞いて、日本側は目の色を変える。



 国際連合と同等のフィリア世界最大の国際組織。


 世界各国の意思を統括する組織であり、その組織の意向次第では日本の未来が左右されるのだ。日本側としては軽く聞くわけにはいかない。


「お聞かせ願えますか?」


 若井議員が聞いてエルマは一度目を閉じ、何を話すのか考えてか数秒間を開けて話し始めた。


「アルタランではニホンが転移してきて間もなく、異星人対応委員会と言う委員会を立ち上げていました。とはいえニホンの冷静な活動とイルリハランが主導で対処しているにあたって、活発な活動はしていませんでした。ですがニホンが国家承認されたことによって、異星国家対応委員会へと改名。ニホンを国際社会はどう対応するべきかの議論を始めたのです」



 構成は議長国と理事国の七ヶ国、当事国であるイルリハラン王国、ユーストルと接するレーゲン共和国、さらに数ヶ国から選出された人員らしい。人数は二十人程度で迅速な意思決定を必要とするためその程度とのことだ。


「そしてまだ議論の途中で確定はしていませんが、いくつかの方針が昨夜定まりました」


「……我が国にとって良い話ではなさそうですね」


「全くないわけではありませんが」


 エルマはルィルの通訳の手助けもあってその案を話す。



「一つ目は『現状維持』。イルリハランはニホンと国交を続けることを良しとし、必要であればニホンは他の国とも国交を結べます。


 二つ目は『国交権をイルリハランからアルタランへ委譲』。これは現在している国交を全てアルタランが引き継ぎ、以後イルリハランはニホンと交流が出来なくなります。


 三つ目は『完全隔離』。ユーストルの領有権をアルタランに無期限で貸与され、いかなる国であれユーストル内に入ることを認めない。


 四つ目は『チキュウへの帰還援助』。ニホンを可能な限り早くチキュウに戻すために全面的な援助を惜しまず行い、国土転移技術を確立してニホンをチキュウへ戻します。


 五つ目は『ニホン殲滅』。これは言葉通りですね。ニホンは害悪なのでユーストルから出る前に殲滅させてしまえと言う考えです。


 六つ目は……あるんですが、まあまず採択されることはないのでいいでしょう。


 今アルタランで議論されているのがこの五つです」



 言い切ったリィアは、失礼と言って日本側が用意した水のペットボトルを持って一口口に含む。


「何とも煮え切らない方針ですね。はっきりとしていない」


 アルタランが考えている五つの方針を聞き、木宮は顎に指で摘まむようにして考えるポーズを取りながら呟く。


「五つの内、良い話と悪い話、どちらでもないのがちょうどありますね」


 若井は腕を組みうーんとアルタランの方針を分析する。


 現状維持と帰還支援は良い話。隔離と殲滅は悪い話。どちらでもないはアルタランへの国交権の委譲だ。



「この隔離案は、日本の活動領域はどこまでか分かりますか? もし海までで自給自足ですと大変厳しいことになりますが」


「今のところユーストル内までは許容する考えが占めています。ユーストル内までは割譲するから、あとは自給自足でなんとかしろ。しかし外に出たりしたら排除すると言う考えです」


「それは、日本にとっては決して悪くないですね。それだけの土地があれば石油やフォロンが無くても、あることがはっきりしているレヴィニウムで国民の生命の維持は期待できます」


「もちろんユーストルは建国当時からイルリハランの領土ですので、その隔離案に賛同は出来ません。国内ではニホンの海から十キロまで割譲することも反対する意見がありますし」


「日本の理想としましては現状維持ですね。今ここでアルタランや他の国からの干渉は好ましくありません。国内の情勢が依然と厳しい中、他の国まで国交をする余裕はありません」


 地球の外交と違って、全て0からの国交だ。外交に使う体力が地球の比ではないため何ヶ国も相手に出来ない。



「イルリハランも同意見です。ニホンの国交を独占するつもりはありませんが、我が国の領土に転移した優位性はしっかりと確保をしたいのです」


「フォロンの確認もありますしね。アルタランではその可能性は議論されていないのですか?」


 考えてみれば、世界的戦略物質であるフォロンがユーストルにあるかもしれない可能性があれば、五つも案を出す前にその確認を優先してもおかしくない。


「まったく出ていないみたいです。いくら可能性の一つとはいえ、レーゲンの領有権に突然の主張にニホンの国土転移。ユーストルに何かがあると過ってもいいのですが、不可思議にも一切出ていないそうです」


「気になりますね。秘密裏に口裏を合わせている可能性もあります」


「エルマ大使、国際社会など政治の場では憶測を基準に物事を決めたりはしませんが、日本が転移してきた事実もあればその憶測にも信ぴょう性が生まれます。仮にあった場合、結晶フォロンが希少で莫大な価値があるのであれば、黙って見ている国は無いでしょう」


 さすがは政治に関わる二人である。どんどん話を進めていく。



「そうですね。フォロン結晶石は一キロ一兆セムもします。それが万トンもあれば全ての国が反応するでしょう」


 エルマはさらっと言ったが、その突然の発言に日本側は完全に沈黙してしまった。


 一兆セム。日本円にして五千億円。まず目にしない額なだけに具体的な例が挙げられない。


「フルスペックの米空母並みかよ」


 横に座る雨宮が呟く。フルスペックと言うことは、空母だけではなく艦載機も含めてだろうか。それがたった一キロで価値が釣り合う。


 まだ調査も始まっておらず、状況からの憶測にすぎないが、もし鉱脈がこの地にあって日本の手を借りて大量に産出、一気に流通したら世界経済は大混乱は必至だ。


 それこそ全世界のバスタトリア砲がここを襲うだろう。



「イルリハラン王国としましては、この地にフォロンの鉱脈が実在した場合どういたしますか? いくらなんでもそんな重大情報の隠匿は厳しく、露見した場合の非難は想像を絶すると思いますが」


「難しい判断ですね。歴代国王でもこのような重大な決断はしたことがありません。しかも憶測の域を出ていないので具体的な対策も難しいです」


 日本側からすると状況から考えられる憶測も、リーアン側からすると思い浮かばないのがフォロンの希少性だ。


 地球でも大型トラックくらいのダイアモンドが手に届くところにあったとしても、実在すると誰が思うだろうか。イチゴ粒くらいであればあるかもと思えても、それ以上の大きさは常識ではないと除外される。だからフィリア側のネットでもそうした憶測が出ない。


 前例や前代未聞、空前絶後がまさにそれだ。


 日本の国土転移も今までなかったから異星人の概念は空想の枠に収まっていて、結晶フォロンも例がないからあったらいいなと言う空想の枠に収まり、例を作ってようやく現実の枠に収まる。


 結局のところ、事実を確認するまで認めないのが人なのだ。



「……いえ、ユーストルは古来よりイルリハランの領土です。その領土内から産出した資源はイルリハランの物なので、発見すれば公表して厳重な管理をするでしょう」


 否定的だったエルマは、数秒間を開けてその否定的な考えを否定する。


 理屈から言えばエルマの言う通りである。希少だろうが高価だろうが、その資源をどう扱うかはその国が決めることであって、他の国やアルタランが手を出すことではない。


 それは内政干渉に他ならない。


 が、一グラムで五億円もする超高価な物質となったとき、超法規的措置を取らないか心配だ。



「エルマ大使、日本はイルリハランの選択を支持します」


「ありがとうございます。ふふ、あ、失礼。不思議ですね。異星人を相手に話をしていると言うのに、外国人と話をしているのとほとんど変わりがないんですから」


「同感です。我々も時として異星人と接していることを忘れる時があります」


 それは羽熊も同意で静かに頷く。


 さらにルィル達も頷いた。全員時として異星人を相手にするのを忘れるらしい。


「と話が変わってしまいましたね。えーと、異星国家対応委員会でフォロン結晶石の鉱脈の可能性ですが、可能性でも出さないのは不思議なところではあります。いくら常識外でも、ニホンが国土転移してきた以上は、その可能性は過っても笑われはしないはずです」



「そもそも、フォロンは転移的な現象を起こす物質ですか?」


 交流の場では機密情報なのではぐらされてきたが、ここぞとばかりに若井が問いかける。


「いえ、フォロン結晶石は特定の電流と水溶液、熱を流すと力場を展開しまして、その展開した力場と大気中のフォロンが干渉して宙に浮きます。しかし力場を展開、流動させる以上のことは私は存じていません」


 意外にもレヴィロン機関の原理を話し始め、自衛官たちはすぐさまスマホの録音やICレコーダーを断りを入れて用意する。


 その特定の電流と言うのが、人体を流れる生体電流で百から二百マイクロアンペア。さらに間質液と言う体液に近い液体と三十℃から四十℃の熱を常時与えることで、フォロン結晶石は力場を生み出して反重力に近い飛行を可能とするらしい。


 つまり機械的に体内と同じ環境を作り出せれば空を飛べる。


 馬力やスピードは電圧に比例するらしく、原理さえ分かってしまえば日本の科学力でも作れるだろう。



「……大量のフォロンがユーストルにある可能性が高いと言うのが共通の認識ですけど、他にも新物質として転移物質の考えもまた持った方がいいですね」


「それは、はい。既存の物質で起こせるとしたらフォロンなのでその考えが定着しただけですからね。他の未知の物質があっても不思議ではないかと」


「固定した考えは持たないことにしましょう。とまた脱線してしまいましたが、委員会で議論がされないのは、状況からあると思うだけで数字や学術的根拠が全くないと議論するのが厳しいのだと思います。日本とイルリハランは特殊な状況下なので根拠のない可能性でも真剣に議論していますが、アルタランはそうは行きません。地球の国連でも数字上の可能性では動いても、心情の可能性では動きませんし」


 木宮の説明はもっともだ。例えば北の国が核兵器開発しているのも、衛星写真など確かな根拠があって国連の安保理は議論をする。決して核兵器を開発している『かも』しれないでは動かないのだ。


 アルタランでも何の根拠もなく、日本が転移したから、レーゲンがしつこく狙ってくるから、では動くわけにはいかないはずだ。


 そんな噂に惑わされては世界最大の国際組織の名が泣く。



「噂こそ知ってはいても、確たる証明が出来なければ公の場で話はしないでしょう。議事録も残りますし、我が国も議論をする時は確たる物があって行われますので」


「キノミヤさんの意見がもっともですね。いやはや、この環境化で毒されてしまったのですかね。そんな単純なことを思い付かないとは」


「いえ、常識は時に足かせになります。当たり前を敢えて考えないことも大事と思います。特にここユーストル内は」


 国土転移する時点で常識なんて当てにはならない。だからこそ今こうして会合が出来ているのだ。



「ハグマさん」


 と、突然名指しで呼ばれた。


 呼んだのはルィルだ。


「なんでしょうか」


 朝の事もあって少しばかり動揺するも、顔には出さないよう平常心を保って聞き返す。


「ハグマさんは一番我々と長く交流をしています。政治の目線ではなく、一般市民の目からのハグマさんの意見も聞かせてはもらえませんか?」


「私は言語学者です。政治のことは何もわかりませんよ」


「その分からないからこその意見をお聞かせ願えませんか?」


 エルマもルィルの問いかけに便乗する。


「アルタランが地下資源の可能性に触れない理由……思い浮かばないこともないですけど」


「お願いします」


「でも今思い付いたことですし、アルタランを悪役として見てしまいますが……」



 そう言ってもエルマたちは羽熊の目を見て頷くので、仕方なく話し始めた。


「では……そのアルタラン内の委員会のメンバーや、その参加国の政府上層部はフォロンの噂は知ってると思います。でも言わないのは我々を泳がせるためじゃないですかね」


「泳がせるため?」


「この地には結晶フォロンか転移物質があり、あった場合全ての権利はイルリハランが持ちますよね。つまり全世界が欲しいと思う資源の独占状態。そんな状況を各国は嫌がるはずです。大量に出てしまえば経済は混乱するし、かといって価額を下げない程度で輸出しても、イルリハラン内ばかりに溜まって国内では破格の価額まで値下がりする」


 それでは大量の外貨が流れ込み、贅沢にフォロンを利用した物が製造できてしまう。


 関税など貴重な資源の輸出入には色々と方法はあるが、羽熊は一番単純な思い付きを話す。


「それじゃ結晶フォロンの供給バランスが崩れる上に、日本も絡んでどんな結果になるのか分からない。じゃあ世界各国の意思を統合する組織はどう考えます?」


「…………ユーストルをイルリハランから切り離す、完全隔離案ですか」



 ルィルの返事に羽熊は頷く。


「ユーストルをアルタランが管理して、我々を使って採掘したフォロンを平等に広めるほうが世界のため、と当事国以外は考えるでしょう。日本やイルリハランからすればふざけるなですが、世界規模で見ればそうしたいはずです」


「なるほど。ユーストルを合理的にイルリハランからアルタランへ移すため、敢えてその噂には触れず、実際に発見したら様々な危険性を主張して候補の一つを取る、と言うことですか」


 羽熊の考えに気づいたエルマが続けると頷いて返した。


「なので日本対策の案の一つに隔離案があるんだと私は思うんです。何もないのにいきなり隔離案を出せば非難が出るかもしれませんが、最初から候補の一つとして出していれば受け入れやすいですし」


 フィリア社会にとって、異星国家にフォロンなど有能な資源が流れるのは脅威なはずだ。


 地球に置き換えたって、地球の資源や技術を取り入れて想定外にして強力な兵器が生まれると思うと夜も眠れない。



 日本からすればそもそも法的に自衛以外出来ないのだから「なんでそんな心配するの?」でも異星人にそんな事情は知ったことではない。かもしれないだけで十分軍事行動は可能だ。


 そして最初からフォロンがある可能性を盛り込んだ議論をすれば余計な動きをイルリハランと日本はするかもしれない。それでは困るから敢えて動かず、予定した動きをするまで待つ。


 それが羽熊が思い付いたアルタランのシナリオだ。


 であれば五つの方針に日本の国家承認がないのも頷ける。


 国家承認の有無を盛り込むと完全隔離案に必要なフラグが立ちづらくなるからだ。


 とはいえ、法が支配する社会でそんな暴挙がまかり通るはずがない。いくら貴重な資源が大量にあるだけで安易に動けるのであれば法の意味がなく、国の尊厳を踏みにじることになる。



「もちろん、鉱脈の有無、日本がいつ地下資源採掘を始めるか不明や、公表の仕方と言った不確定要素が多数あるので可能性の一つと思ってください」


「それでも十分ありがたいです。本国でも可能性を考えているでしょうから、百の可能性と対処を考え、そのうち一つが当たればそれで構いません。完全無策で突入するのが避けられるなら、荒唐無稽の私見でも歓迎します」


 レーゲン及び多国籍軍の相手から、今度は世界最大の国際組織。次第に相手がスケールアップしていくのはどこのバトルマンガと思ったりする。


 さすがに世界軍を相手に世界大戦に発展しないと信じたい。地球でも世界大戦を経験し、この異星でもまた世界大戦に入るなんてまっぴらごめんだ。


「アルタランに求めるイルリハランの方針は現状維持ですね。フォロンの有無は関係なく、ニホンとは友好的な関係を続けていきたいですので」



「それは我々も同じです。書面の準備の不備から二国間条約や信捧式は行えていませんが、すでに事実上の国交状態と言えます。その流れは止めたくありません」


 これは両国がしないようにしているのではなく、単純に文字の習得がまだなので出来るまで待ってほしいと言う判断だ。


 二国間条約や信任状捧呈式は、お互いの書面・書状を相手国に渡すことを必要とする。その内容は自国の文字で綴られるのだが、その文字が読めないと厄介なことになりかねない。


 いくら口頭で言質を取ろうと、力を持つのは文字なので、読めないからこそ不都合な文字を混ぜられては国際問題になりかねない。よってお互いに文字が読めるまでは待つようにするのが両政府の判断で、羽熊達言語学者が習得に躍起になっている理由の一つだ。


 実のところ両政府共に握手を握り合う意思はあるのだが、どうしても政治的心配をしてしまう。いや、国の存続がリアルに関わる以上、心配し過ぎで丁度いいのだろう。



 そこからさらに政治的なことを中心に進み、休憩や昼食で時折離れ、あっという間に午後五時を迎えた。


 集中次第で体感時間は変わると言うが、こういう会合だと一時間が数分で過ぎていく感覚だ。



「ワカイ議員、本日はありがとうございました。大変有意義な会合が出来ました」


「私もです、エルマ大使。本日初めてリーアンの方々とお会いしましたが、異星人と話している感覚がまったくありません。我々の中にある異星人の概念が良い意味で変わりました。今日の事はいつまでも忘れないでしょう」


 社交辞令と本音が混ざり合う挨拶をして握手をしあう。


「エルマ大使、アレを」


 ルィルが囁くように声をかけ、ハッとエルマは気づく。


「ああ、そうでした。大事なことを忘れていました」


 話に夢中で忘れてしまっていた、持参してきた箱をテーブルの上へと置く。


 そう言えば渡すものがあると言っていた。


「これは国王陛下から許可を得た、先日のニホン観光の礼の品々になります」


「礼、ですか」



 これは日本側は少し考えることがある。


 決めつけはよくないが、こういう時の礼は日本側の人間がイルリハランの都市に行くことを考える。それが等価交換として適当と思うからだ。


 しかし観光の礼が物と言うことは、ある事を考えさせられる。


「エルマ大使、一つお伺いをしてもいいですか?」


 その意図を察して若井は聞く。


「なぜニホン側の人を招待しないか、ですね?」


 意識レベルが似ているからか、言葉足らずとも通じ合う。


 もうツーカー通じ合うような気がしてきた。


「これは無礼とも捉われてもしかたないのですが、現状、ニホンの人をユーストル外に出すことは国王を含めて許容されていないのです」



 エルマはやや落ち込んだ口調で説明をする。


 イルリハラン王国は、ユーストルへの立ち入りは厳しく制限している。例外的に記者会見時や軍艦、食料や燃料など物資の移送は立ち入りを認めたが、国内外問わず立ち入りは出来ない。


 よって日本人をユーストルに出すことは出来ないとのことだ。


 そこは例外措置が取れるはずだが、もう一つは国民世論が揺れているのもあるらしい。


 イルリハラン議会は日本を国家と認め、日本と国交をする意思を持っていても国民の実に七割は不安を抱いているとのことだ。


 日本とイルリハランは『異星国家』への捉え方が違う。


 日本は元々小惑星レヴィアンで死が確定した国で、ならフィリアの病原菌で全滅しても不思議ではないと思っている。言ってしまえば腹をくくった状態だ。逆にイルリハランは突然の転移で困惑し、万が一疫病を含め厄介な問題が収拾不可能な状態で広まっては、国民世論は一気に日本殲滅に向きかねない。


 簡単に言えば、日本人を守るために日本人をユーストル外に出さない。それがイルリハラン政府の判断だ。


 しかもその判断は権威的な例外はなく、全権大使、内閣総理大臣、果てには天皇陛下でさえ出さない判断とのこと。これは護衛をする確信が作れないのもあるらしいが、恐らく半々だろう。


 ちなみにラッサロン天空基地は五万人を収容する大型軍事基地なので、一週間滞在しても十分な施設はあるが、基本軍事施設なので機密関連から無理とのことだ。


 なので、日本観光の礼が物となって返って来たわけである。



「そういう事情でしたら日本としても受け入れるしかありません」


 事実上国家規模の軟禁状態だ。けど日本はイルリハランの温情で主権を持っているので、ある程度のことは容認しなければならない。


 とはいえ言いなりにもなれない。せっかくアメリカの同盟と言う名の首輪が外れたのに、今度はイルリハランに掛けられるわけにはならないからだ。


「出来ればまた記者会見や動画配信をイルリハラン向けに行いたいですね。不安なのは知らないからですので、政府が発表する資料だけでなく、民間人が発表する映像を流せれば印象も変わりましょう」


 現状出来ることで食らいつく。ただ言いなりになっては飼い殺しをされるだけだ。


 それは日本と言う国のプライドを傷つけ、地球人としての尊厳を奪うことにもなる。


 異星国家と言うことで立場が弱かろうと、培ってきたプライドまで弱めてはならない。


「そうですね。いずれはニホンからフィリア社会に向けてネット配信が出来るでしょう。で、これが最初の一手ですかね」


 ようやくエルマは朝から気になっていた詫びの品々が入った箱を開けた。



 出てきたのは――。

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