問3-2 隣の席になりたい(メリット)


 メリットは、こうだ!


「渡る世間は鬼ばかり」であるが、どんな辛い境遇であっても、苦楽を共にすることができることである。


 高校二年生といえど、まだまだ多感であり、思春期の残り火がメラメラと燃えている時期である。なにをおいても大変なのは、――勉学であろう。

 授業中に難しい問題ぶつかった時は、隣の席で共に苦しみ、隣の席で共に悩む。問題を解決した時は、隣の席で共に歓喜し、隣の席で共に幸福を感じる。隣の席同士で苦楽を共にするということだ。

 

「これこそが学生の本分である!」


 また「白鳥さん、教科書の、114 頁の『問題、の鯛焼きを焼くスピードと枚数』を読んで」と数学の高峰先生に当てられ時、たまたま白鳥が「教科書を忘れてきた」と仮定しよう。

 そんな時は黙ってそっと、隣の席から教科書を素早く差し出す。すると、控えめな笑顔で「ありがとう」と小さな声を聞かせてくれるだろう。

 

 これは全て、隣の席だからなせるである。一応書き添えておくが、教科書に卑猥な落書きや、パラパラ漫画などを書かないように(いなかる事態にも備えておくこと)。

 ちなみに「教科書を忘れてきた」の教科書の部分を色々なものに置き換えると、無限大に可能性が広がることを付け加えておきたい。


 更なるメリットは、こうだ――!

 

「隣の席に座りながら、黒板というスクリーンを一緒に観て感動できる!」


 数学の高峰先生が、正体不明の「X」と「Y」を使い、スクリーンに(物語の問題)と、(物語の方程式)と、(物語の解答)を書いていく。


 真っさらな黒板(スクリーン)に映し出される、その白いチョーク(物語)。それはさながら、白い鳥のお姫様「X」と、主人公「Y」がに対峙しながらも、魔法のを使い困難を乗り越えて、を解き明かす物語。そして最初は離れていた「X」と「Y」が最後はくっついている。

 そうこれは、感動の物語、大スペクタル・ロマンス映画ではないか!


「隣の席で授業を受ける」=「隣の席で映画を見る」この方程式が成立する。つまり毎日、隣の席で映画を観ている恋人()とも言えないこともない、気もしないこともない。


 これが、――隣の席になるということだ!


「毎日、毎日、僕らは教室の、中で妬かれて、嫌になっちゃうよ!」と言葉にメロディーを乗せて話したいくらいの高揚感!


 正直、隣の席のメリットについて語り出すと、「席替え研究家」滝沢淳之介(馬琴ではない)はとまらない。やめられない。それだけで「高校二年生」が終わってしまいそうなので、ここで筆を置きたい。



 では僕の、いや僕たちの高貴な理想が、現実となる可能性を計算してみようではないか。




つづく






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