第4話クレア男爵令嬢視点

「なんなの?!

 数を頼んで妾を襲うつもり?!」


「そんな不敬な事はいたしません。

 地位を笠に着て、臣下を嬲り殺すような乱心者とは違いますので」


「なんですって?

 この無礼者が!」


 私たちが全員で押し掛けたので、エミリー殿下は恐怖を感じているのでしょう。

 それでも強がって怒鳴るのですから、根性があると言うべきか?

 それとも怖いもの知らずの愚か者と言うべきか?

 カルロの噂は知っているでしょうから、愚か者なのでしょうね。


 貴族士族が対立して、ここまで大事になっているのです。

 今までカルロが何度も事故死の再調査を願い出ても、全て握り潰していた学園上層部も、今回は見逃せないでしょう。

 私を狙われて、カルロも本気です。

 必要ならエミリー殿下の暗殺もやりかねません。


「カルロ!

 男爵家の分際で、舐めた口をきくな!」


 アクセルです。

 エミリー殿下の護衛騎士アクセルです。

 王女を護るために、三十代で学園の生徒となっています。

 噂では、王女のベットの供もしているという話です。

 だからこそ、命懸けで仕えているのかもしれません。


 嫌な眼つきです。

 粘着質の眼です。

 父を騙して金を出させようと、家にやって来るモノの眼です。

 何か悪辣な事を考えているに違いありません。

 まあ、カルロなら、そのような事は十分理解しているでしょう。


「舐めているのではありません。

 真実を話しているだけです。

 ここでこれ以上騒ぎを起こせば、上層部もこれ以上の黙認はできませんよ。

 王女殿下にこれ以上の汚名を着せたいのですか?

 それでも護衛騎士か!」


「う!

 ……」


「男爵公子殿に殿下の事まで気にしてもらう必要はない。

 それは我ら護衛騎士が考える」


 カルロの言葉にアクセルは沈黙しましたが、もう一人の護衛騎士グレイソンは黙っていません。

 この男も三十代で学園の生徒です。

 王女殿下の護衛も辛い事でしょう。

 王家への忠誠を示すためとは言え、愚かな王女に仕えないといけないのですから。


「アクセル。

 世間知らずの若者に、本当の騎士の強さを教えてあげなさい。

 それが実戦を知る大人の務めです。

 妾が証人になってあげましょう。

 どうです。

 カルロ」


 王女殿下が唐突に無茶な事を言い出しました。

 いえ、最初からそのつもりだったのかもしれません。

 私一人を呼び出しても、絶対に一人で来ないのは分かっていたでしょう。

 一番目障りなカルロを殺す事で、また学園を支配するつもりなのでしょう。

 カルロが負けるとは思えませんが、どんな卑怯な罠を仕掛けているかもしれません。


「分かった。

 だが条件がある。

 証人は王女殿下ではなく、公平な人間に努めてもらう。

 決闘の場所も闘技場で行う。

 それでいいですね?!」

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