既婚、子持ちの奪い方

心情

第1話

欲しい。欲しい。欲しい。欲しい。

あなたが欲しいーー。

「はぁっはんっ!んんっあっっ」

抱かれたい。抱かれたい。抱かれたい。

あなたに抱かれたいーー。

「んんっはぁはぁっ!小野さぁんっ!」

めちゃくちゃに僕を抱いてーー。

めちゃくちゃに僕を濡らしてーー。

めちゃくちゃに、めちゃくちゃに、

めちゃくちゃに僕を愛してーー。


ーーやってしまった。

グチョグチョに濡れた手、大きく火照ったあそこ、痙攣している穴。バイブの振動音が部屋中に響き渡り、濡れたシーツの冷たさが僕を現実に連れ戻す。

叶うはずのない恋の苛立ちは、自分の身体にぶつけることしかできない。

23時過ぎか。

あぁ、あの人は今頃、子供を寝かしつけたあとで、奥さんを抱いているのだろうか?

どうやって奥さんを抱くのだろうかーー。

また妄想が僕を快楽へと誘いだす。

きっと優しいキスから始まるんだ。唇が触れ合うだけのキスを繰り返し、口内に舌を侵入させる。舌を絡めて唾液が糸を引き、奥さんは吐息を漏らすんだ。その吐息に小野さんは興奮し、そして唾液を引いた舌は耳へと移動して、耳の穴へ舌をほじいれ、ピチャピチャといやらしい音を立てて、奥さんの名前を囁く。

囁く?奥さんの名前を?

ーー嫌だ。

ーー囁かないで。

僕の名前を呼んでほしい。

「小野さんっーー」

先程果てたはずのあそこは元気を取り戻し、またいやらしい汁を垂らし、触ってくれと僕を煽ってくる。

あの人の名前を呼ぶだけで、僕の身体は火照ってしまう。

あの人の顔を思い出すだけで、僕のあそこは我慢できずに、よがってしまうんだ。

小野さん、あなたの存在が僕を犯し続けるんだ。

さっきほぐれた僕の下の口は、あそこから滴り落ちるいやらしい汁が流れ、またヒクヒクとさせて物欲しそうに求め始める。

「んっんとあっんっ」

まとまりつく快楽が指を増やしていき、人差し指、中指、薬指と3本の指が、クチュクチュと音を立て、中をかき乱していく。

中指が高鳴る膨らみに到達すると、ピリピリとしたなんとも言えない快楽に堕ちていく。

「小野さぁぁんっ!はぅっあっん!」

指がふやけてしまいそうだ。

小野さん、抱かれたい。

小野さん、あなたに抱かれたい。

小野さん、あなたが欲しい。

中をかき乱す手とは別にもう一つの手は、ピンッと突き立っている乳首へと向かった。

乳首を強く引っ張り、こねくり回す。本当は小野さんに舐め回してほしい。自分の唾液を乳首に塗りつけ、目を閉じ、小野さんの舌を想像する。ピチャッピチャッと突き上がった僕の乳首を小野さんが、上へ下へ押し上げる。

「んんっ!やんっあっ!小野さんっ」

小野さんーー!小野さんーー!

「やっ!はんあっ、やっやっ」

かき乱す指が早くなり、快感が突き抜ける。

「小野さんっーー!」

白い蜜が力いっぱいに外に放たれた。

「はぁっはあっはんっっ」

またやってしまったーー。

快楽の後は決まって後悔が押し寄せる。

小野さん、

あなたで満たされたい僕を嫌いにならないでーー。


僕の名前は佐藤拓海。30歳の水瓶座。

僕の好きな人は男だ。

僕の好きな人は結婚している。

僕の好きな人には子供がいる。

僕は叶わない恋をしている。

出会わなければ、よかったーー。

出会わなければ、こんな苦しい思いはしなかったーー。


快楽が後悔に変わっても、朝の光がいつもの日常に僕を包み込む。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る