アブソリュート・ワールド

ナオフミ

仮面の少女編

プロローグ

 弱いとは悪いことなのだろうか、確かに弱ければ世の中を生きてはいけないが弱いものいわゆる弱者がいなければ歴史が成り立たないだろう。弱いという言葉は世の中に絶対存在する、人が二人以上いればどちらかが強者となり弱者となる。弱いがあるから強いがあるのであって決して強いだけが凄いわけではない。

この物語は弱い主人公が世の中を変えていく話。強者に弱者とは何かを教える話。


「なんでこんな時間に呼び出したんですか‥‥‥」


 男は目をこすり、眠たそうな声を上げて言った。


「こんな時間とはなんだ、まだ三時だぞ?」

の三時をまだと言える、あなたに僕は心から驚きますよ」


 男は目の前に座っている女性にジト目を向けて言った。女は口元を上げなんとも楽しそうな表情をしていた。

「今回呼び出したのは、頼みたいことがあったからだ」

「頼みって今日‥‥‥いえ昨日はあなたの頼みでクタクタなのですが‥‥‥」

「大丈夫だ! 今回はとても簡単なことだし、喜ぶと思うぞ」

「喜ぶことですか?」

「ああそうだ!」


 女は自信満々に言ったが、男はものすごく不安を感じていた。


「それじゃあ、さっさとその喜ぶ頼みっていうのを教えてください、さすがに眠いです」

「うむ、頼みというのは、私の学園に編入してもらうということだ」

「‥‥‥‥」

「私の学園に編入‥‥‥」

「聞こえているから、二回も言わないでください!」

「てっきり聞こえてないかと」

「しっかり聞きすぎて、驚いただけです」


 男は自分の不安が当たり、ため息をついた。


「で、なぜ僕があなたの学校に?」

「お前も今年で十六になるだろ?」

「はい」

「だからだ」

「‥‥‥全然理由になってません」


 男のツッコミが止まらずどんどん疲労が蓄積されている中、女はどんどん話を進める。


「まだ自分が子供だということを自覚しろ。子供が学校に行くのは当たり前だ。」

「僕が自分自身を子供だと思ったことは、少なくともここに入る前には思っていましたが、入ってからは一切そんなことを思ったことはありません」


 男のその言葉を聞いて女は顔には出さなかったが悲しかった。


「だとしてもこの編入はもう決定したことだ、絶対に行ってもらうからな」

「俺が学校に行っている間の仕事はどうするつもりですか、俺の願いはあんたが一番わかってるでしょ。そのために休んでいる暇は‥‥‥」


『シャン』


 空間になんとも綺麗な鈴の音が鳴った、その音の正体は女がいつの間にか手に持っていた、先が天秤になっている錫杖だった。


「どうしても行かないともなれば、これを使うぞ?」


 女がそういうと、男はもの凄い勢いで頭を下げた。


「精一杯その頼み引き受けさせていただきます!」

「よろしい」

「それでいつから、学校ですか?」

「今日からだ」

「は‥‥‥」

「今日か‥‥‥」

「だから二回も言わないでください!」

 男はもう付き合ってられないと思い、すぐさま部屋を出て行った。

、楽しんでこいよ」


 女が言ったその一言は男には聞こえなかった。

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