悪夢の村

最後の告白

　何も村ごと焼き払わなくてもと思いますか？

　でも、私には我慢できなかったんです。この現代社会に、私が生まれ育った、この日本という国に、まともな法治の及ばない所があるなんて。

　陽が当たらず、風通しの悪い場所では、悪いものが増殖して腐敗します。だから、定期的に曝気しなければなりません。それもできないなら、消毒しなければ。そういう潔癖さで私は凶行に及びました。

　実際、誰か一人が悪いだけなら、私はここまでの事をしようとは思わなかったでしょう。私が憎んだのは御座家だけではありません。その威光にすがり、恩恵を受けて、あの日まで御座家の狂った支配を支えて来た、薄暗いW村の全てを、私は憎んだのです……。

　私は裁判でも同じ主張をするつもりですが、気の狂った男だとしか思われないでしょう。証拠は何もありません。ケイが実際に何をされたのかも、この目で見た訳ではありません。ケイは最後まで何も言いませんでした。遺書も日記も残してはいませんでした。

　仮に証拠が残っていたとしても、今は全て灰の中です。あの村の澱んだ空気も、何もかも。それで良いんだと思います。

　裁判は遺族の要請により、非公開で行われるらしいですね。私の言い分が外に漏れると困る人が多いのでしょう。

　私は死刑になります。ただ……あなたが私の話を信じて、記事にしてくださるなら幸いです。

　果たして、あなたにできますかね？

　W村の生き残りは全員不幸になりますよ。それだけでなく、御座家と関わっていた者も。中には偉い議員さんもいるみたいですから、あなたの身も危うくなるかも知れません。

　無理にとは言いません。言えません。

　記事にしなくても恨む事はありませんよ……。