悪夢の村
@odan
W村焼き討ち事件
真相を追って
平成三十一年十一月一日
W村焼き討ち事件
【概要】
本件は十一月一日の未明、X県Y郡W村で発生した。
犯人は午前二時頃、村内に灯油とガソリンを撒いて放火。当日は乾燥した風が吹いており、火は瞬く間に燃え広がった。
火災は村内のほとんどの家屋を焼き払い、早期に火災に気づいて村から脱出した者は助かったが、村内に留まり自力で消火活動を試みた者は大半が死亡した。
結果、W村村長御座良多郎をはじめ、二十五人もの村民が死亡する大惨事となった。
事件後に二十三歳の若者がX県S市A警察署に自首。犯行動機は御座家に対する怨恨とされている。
【事件関係者一覧】
店方章希(たなかた・しょうき)
N県D市F町出身。N県O市の会社に勤めていたが、事件前に退職。二十三歳。本件は彼の単独犯とされている。
店方閨(たなかた・けい)
店方章希の妹。N県立大学の学生。十八歳。長期の休学後、事件の前月に自殺している。
御座良多郎(みくらい・りょうたろう)
御座家当主。六十四歳。御座家は代々W村の村長を務めていた名家で、地元では知る人ぞ知る大富豪。政財界とも深いつながりを持っていた。自宅で就寝中、火災に巻き込まれ死亡。
御座乃撫子(みくらい・のぶこ)
御座良多郎の妻。六十歳。夫と同じく自宅で就寝中、火災に巻き込まれ死亡。
御座託家(みくらい・たくや)
御座良多郎の一人息子。R製薬会社勤務(*1)。二十七歳。火災に気付き自宅から脱出したものの、重度の火傷で死亡。
和取総護(わどり・そうご)
W村生まれ。御座家に住み込みで働いていた私的警備員。三十歳。いち早く火災に気付き、消火活動を行っていたが、そのために逃げ遅れて死亡。
下露彩利(しもつゆ・あいり)
W村生まれ。X県S市内の食品店のパートタイマー。二十二歳。自宅で就寝中、火災に巻き込まれて死亡。
*1……週刊誌の報道によると勤務実態はなかった様子。
◇
【あるジャーナリストの日記】
十一月十二日
W村焼き討ち事件の犯人である店方ショウキとの面会許可が下りた。
この事件にはナゾが多い。怨恨ゆえの犯行と言われているが、一見して店方ショウキと御座家に接点はない。店方ショウキの両親は健在だが、二人とも事件後に引っ越しており、現在の住所は不明。マスコミが大挙して押しかけたせいだと言われている。被害者側も口が重く、事件のことはそろって「分からない」「知らない」と言う。
検察の動きもおかしい。当初検察関係者の話では店方ショウキは積極的に聴取に応じていると聞いていたが、ウラを取るのに苦労しているのか、一向に事件の詳細が公表されない。今回の面会でどれだけ事件の真相に迫れるか。
検察が情報を止めているなら何か聞き出せると思うので期待は大きい。ただレコーダーの持込を許可されなかったのが不可解。
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