その男、猟犬につき

無文書

猟犬、異世界へ渡る

「ここはどこだ……」


「ようこそ世界最悪の犯罪者瀬島 狡也さん」


 一体どこで、これはなんだ。俺は確かにゴミを捨てて、そこで俺も……。

 状況が全く掴めない。それにこれの背中……非現実的すぎる。


「私は神……と言っても信じないだろうね君は。それに説明とかするのも面倒なんだ」


「どういう事だ? 俺は死んだはずだぞ」


「はー……少しは察して欲しいんだよねー。はいはい、君は死んだけど、私の力で復活しましためでたしめでたし」


 こいつふざけてるのか。いちいち癪に触る話し方だ。しかし、ここで下手に動くわけにはいかない。まずは情報を集めなければ。


「とまぁ、そういうのは置いといて。私は私のすべきことをしなきゃね。それじゃ、行ってらっしゃい瀬島 狡也さん。貴方が本来いるべき場所へ」


「それはどういう……どうなってんだ……」


 一瞬だった。俺が瞬きをした瞬間、世界は変わった。

 さっきまでいた謎の空間ではない。確かに地面もあるし、空もある。しかし、地球のものじゃない。地球のどの地域にもこんな場所はなかった。


「何なんだよ。まるでここは……別の世界みたいじゃないか」


 現実味がないことは嫌いだ。しかし、これは紛れもない現実。夢はここまで鮮明に物事を捉え、理解することはできない。つまり、これは現実だ。


「全身改造しまくって、自分の奥さんや子供を殺しその皮を繋ぎ合わせたような奴もいたしそれに比べればまだ順応できそーー」


 グギャァァァァァッ


 突然の咆哮に空を見上げた。


「おいおいマジかよ。これは順応するのには時間かかりそうだ」


 翼を広げたその姿は前の世界で一度は聞いたことのある生き物そっくりだった。巨体で空を飛び、火を吐く幻想の生物ーードラゴン。


 どうやら俺が本来いるべき世界はとんでもないところのようだ。

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