第7話 高2・春・男の子・後編

『…今日はありがとう』

人に面と向かってお礼を言うのに照れてしまっていたのか、あの子の顔は少し赤くなっていた。

「~~っ」

あの子と一緒に帰った日の夜。

僕は世界で1番幸せだった。

僕は今日の夕方のことを何度も何度も脳内でリピートしていた。

あの子にお礼を言われたのなんて、いつぶりだろうか。

お礼を言われたということは、少しは彼女の気持ちを慰めることができたのだろうか。

…まあ、彼女の気持ちが落ち込んだ理由には、僕にも責任の一端があるのだけど。

だけど、この先また彼女が他の男を好きになったらどうしよう。

また彼女と他の男が上手く行かないように邪魔をして、また彼女が傷ついて、また僕が彼女を慰める。

…ダメだろ。

彼女を慰める以前に、彼女の心が傷つかない方法を考えなければ。

…どうすればいいだろう?

そもそも、彼女が他の男を好きにならなければいいのに。

彼女が他の男を見なければいいのに。

どうすれば、他の男を見ないでいてくれるだろう。

できれば…僕を見てくれるようになればいいのに。

どうすれば、僕を見てくれるだろう。


…告白すればいいんじゃないか?


そうだよ。

10年以上傍にいたけど、僕は彼女に思いを伝えたことが1度も無い。

僕が彼女に思いを告白すれば、僕達は幼馴染から恋人になる。

そうなれば、僕という恋人がいるんだから、彼女は他の男を見ることは無くなる。

そうだよ。

告白すれば、全てが上手く行く。

さすがにキッパリと振られることは無いだろう。

今はまだ彼女が僕に対して恋愛感情を持っていなくても、一応は彼氏にしてもらえるはず。

だって、僕以上に彼女を好きな男なんてこの世にいないんだから。

そのことを精一杯伝えればいいんだ。

それでも振られたら―

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