天気の男

おむすびロコロコ

シロコト盆地に霧が出る

ここは『シロコト盆地』を見下ろせる山の展望台

今日も朝早くから、観光バスがお客さんを連れてきた


『今日は霧がでていないようね・・残念』

観光客の一人がいった


『そうですね、霧が出れば盆地に雲海が広がりそれは美しい景色になります』

ガイドは少し申しわけなさそう


そのやり取りを見ていたお土産用のテント販売の男が、

茂みの奥へ入っていった


ガサガサ

サガサガ


少しして男が茂みから出てくると、どこからともなく霧が立ち込めた

霧はそのまま盆地にダイナックに流れ込み

しばらくすると美しい雲海となった


その美しさに皆が息をのんだ

そして、観光客の間で歓声が上がった

『わぁぁ きれい!!』



噂以上の美しい雲海が登場して、みな大満足

テント販売のお土産もよく売れた

この町の名物である『霧の村大福』

ブドウやお茶、蜜柑なども人気が高い

この町にはよく霧がでる、そのおかげで品質もいい



この町には秘密がある

実はこの町の霧は自然のものではない

霧を操る男がいる



名前をゴリと言う

仕事はJAの職員で、臨時でよく観光客向けに特産物テントで販売をしている


『今日もお客さんは楽しんで帰ってくれた、よかった、よかった』

ゴリはそう言ってゴミ箱に丸めたティッシュを捨てた


ゴリが霧を操るには、ある行為をする必要がある


昔は毎日濃い霧が町に出ていた時期もあった

それは少し、みんなを困らせるた


しかし今は2日に1回程度

そして、霧は観光・農業・この町にはかかせない存在になっている



『先輩、イヤホンのジャックが外れてますよ』

そう言うのは、ゴリの後輩、名前を『コウ』と言う

コウもJAの職員で、とても空気のよめるイケメンだ

女性にも人気がある


ゴリは彼に秘密を話した事はない


『そうか すまん すまん』

ゴリはそう答えた



そこに、一人の女性が現れた

『今日もきれいな霧ね』

そのきれいな女性は、大きく深呼吸をした

彼女は農家の女の子で名前をユキという

テント販売所に商品を補充しに来てくれる

そして、ゴリはユキの事が好きであった



ゴリは自分の秘密を誰にも話していない

話すつもりもなかった

話せない事情もあった

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