第6話 魔法

聖白龍の使徒の第1ビダであるオルキスと、七天龍の使徒の第1ビダであるヒラソルに、七海龍の使徒の第1ビダであるナルキッスの問題。

それは単独での創生が出来ない事。

不可能では無く、不完全なモノが出来てしまうのだ。


何度も創生を重ねても同様の結果で、当事龍とうじしゃの三体もかなりの衝撃でそれぞれの創造主である使徒達に泣きついていた。

勿論アルブマ達にも相談され思案を巡らせている。


それぞれの第1ビダはとても優秀で創生だけが出来ないのだ。

因みに第二ビダは別の目的が有った為に創生の能力が備わっていない。


さしあたって解決する方法も無く、それぞれの立場で困惑しスプレムスやテネブリスにも相談される。


(どうしたら良いのかしら・・・)

(いっその事、使徒にもう一体作らせる?)

(・・・)


アルブマとセプティモの念話にセプテムは無言だった。


(お姉様・・・)

(姉貴ぃ何か良い方法は無いのかよぉ)

姉貴と呼ぶのは気荒なセプティモだ。


(その事だけど・・・私に考えが有るわ)

(姉さん、是非教えてください)

生真面目なセプテムも、自らの眷族が心配らしい。


(だけどね・・・)

その方法に多少戸惑っているテネブリスだ。

(お姉様)

(姉貴)

(姉さん)

兄妹たちが希望の眼差しでテネブリスを見ている。


(・・・いいわ。だけど時間が掛るわよ)

「「「はい」」」


テネブリスの考えはこうだ。

それは単独での生命創生では無く、地上の生物と同じく交配で子孫を増やす方法だ。


(それは!)

驚くアルブマ。

(我らのビダは全て女型であれば、ロサに頼るしかない訳だ)

現実を冷静に受け止めるセプテム。

(やっぱ、もう一体作らせようぜ)

セプティモの念話に激怒するアルブマ。


(セプティモ! あなたはヒラソルがいらないって言うの! 新しい子が出来たらヒラソルはどうするの!?)

(そ、それは・・・)


軽々しく発した自分の考えに失望し意気消沈するセプティモだった。

それぞれの眷族は長い時を一緒に暮らし掛け替えの無い存在だ。

多少の不得手や個龍差は個性として長所を伸ばす様にテネブリスの指導が有ったからだ。


だがテネブリスの考えでは龍種の交配などではなかった。

それは自らの記憶の中にある行為だ。

その為にも全員に”あの魔法”を覚えさせて、スプレムスの計画を実行させる事が最優先だと考えた。


スプレムスの計画と、あの魔法とは一体・・・




※Dieznueveochosietecincocuatrotresdosunocero




それは、かなり昔の事だ。

ある時、創造主であり母でもあるスプレムスから宣言された。


(魔素の保管場所として、我らの国を作ります)

(我らの国? それはどこに作るのですか? お母様)

新たな問題提議を真摯に受け止めるテネブリス。


(今は無いわ。私の殻を土台にして国を作るのよ)

(殻?)

(そう。アレよ)

そう言って虹色に輝く爪が指し示す先は、遥か夜空の先を指していた。


(えぇっと・・・お母様? ソレはアレの事ですか?)

(フフッ。実はね、アレは・・・私の殻なのよ)


(えええぇっ!!)

衝撃の告白だった。

(衛星が卵の殻? 残骸?)


(こちらからは見えないわ。裏側に穴が有るの・・・私が出た穴が・・・私はこの星の意思が産み出した卵から生まれたの。生れた時は、もっと大きかったけど魔素を振りまいていたら小さくなってね、今の大きさになったのよ)


これらの事もテネブリスには初耳だった。


(もう、気にしないわ。お母様の秘密が1つや2つや3つや4つや5つ増えたとしても驚かないわ)

開き直るテネブリスだった。

側に居たアルブマは驚いた顔で聞いている。


(それでね、私の殻に行って国を作るわ。我らの国を。でもこれを思いついたのはあなたのおかげよ。テネブリス)

(私の?)

(えぇ。あなたの変身の魔法で身体が小さくなるって動きやすいわ。しかも魔素の保有量はそのままで、消費量は物凄く抑えられています。流石、我が子テネブリスね」

(お褒め頂いて、ありがとうございます。お母様)

(それにあなた達の使徒やビダに龍人が街を作ってくれるわ)

(街を作るなら私がゴーレムを作ってゴーレム達に手伝わせましょう)

テネブリスが進言する。


(凄いわ、お姉様)

嬉しがるアルブマ。

(どんな街にするかは私達で相談しましょう)

(ハイお姉様)

(お母様? 宜しいでしょうか?)

(えぇあなた達に任せます)


(あの、お母様。質問が)

(なぁにアルブマ)

(衛星までどうやって行けば良いのでしょうか?)

(あぁ、それはね、転移魔法陣よ)

(えっ! お母様。転移魔法陣を扱えるのですか? しかも、衛星に直接・・・)

(フフフッ)


ドヤ顔の始祖龍スプレムスだ。

(では、一度行ってみますか?)

「「ハイ」」


(でわ、参りましょう・・・転移!)



一瞬で衛星の世界。

(私たちは呼吸をしなくても大丈夫なのよ)

自慢げに思念を送ってくる。

(でも、お母様。いずれこの場所にも酸素が無いと動植物や龍人達が住めませんわ)

助言するテネブリス。

(そうね、何か良い方法は無いかしら・・・)

(お母様、酸素の出る魔道具を考えますわ。あと、水の出る魔道具も)

テネブリスには考えが有った。

(お願いしますわ、テネブリス)

(凄いですお姉様)

喜ぶアルブマ。


そして始まる衛星での国作りと”あの魔法”。



それは転生前に最愛の夫から貰った魔法大全に出ていた”変身の魔法”だ。



その魔法だけが違う文明の文字で記載されていて、“小さく一文だけ”で要約されていたが大量の魔素の消費と共に全く異なる形に変身出来るらしい。

何故か、”今のテネブリス”には読む事が出来たのだ。

変化へんげの魔法は劣化版で、上位魔法である変身の魔法を使うことにした。

変化は部分的に変わる魔法で、熟練すれば変身に近い効果が有ると言う。

変身は全く違う姿形に変わるらしく、こちらの方が高度な魔法で龍種の魔素量で有れば容易だと考えての事だった。


勿論、習得するまでかなりの”時”が必要だったが今のテネブリスにとっては膨大な時の中の一瞬の出来事だった。

変身は身体の大きさも含まれる。

もちろん目指す理想は前世の姿だ。

自らが扱えるようになってからスプレムスに披露した。



スプレムスの一言。

(凄いわ、テネブリス。でも・・・何故二足歩行生物なの?)

(し、次第に地上はこのような生命体が多くなって行くようよ。それならば私達も合わせた方が、他の生物の事が解ると思ったの)

苦しい言い訳だがスプレムスは納得してくれたようだった。


(貴女がそう思うなら、それで構いません。早く私や子供達にも教えてくれる? その魔法)


そしてスプレムスが変身魔法を習得してから同族と眷族を集めて新たな魔法の説明を始めた。


(これから皆に覚えてもらいたい魔法が有ります。ただし、この魔法は成龍となった者を対象とするので、翠嶺龍の使徒であるオラティオ・プリムはまだ早いけど、いずれ覚えてもらうので見学するようにね)

(はい、解かりました)


全員に見守られる中で宣言した。

(まずは、私とお母様と一緒に”変身”するわ)


「「「「「ヘンシン?・・・ザワザワ・・・」」」」」

使徒達に眷族が騒ぎ出す。

同族のアルブマにセプティモ、セプテム、スペロは微動だにしない。

感の良いアルブマが母と姉が隠れて何かを企んでいる事を察知していたのだ。


当然ながら巨大な二体が隠れる場所など余り無い。

二体の行動はセプティモにも知れ、やがては全体に知れ渡る事となるがアルブマの一言で不問となった。


(お母様とお姉様が何か”新しい事”を始めた様ですが、私達は報告を待ちましょう)


スプレムスが長い時間をかけて習得した魔法のお披露目だった。

(皆さん静かに。この魔法は地上の生命体の中でも、我ら龍族の身体が巨大な為、魔素の消費が多いので節約する方法です)


確かに始祖龍たちは巨大だ。

始祖龍スプレムス・オリゴー / 体長100km / 魔素量 100,000(仮定基準数値)

暗黒龍テネブリス・アダマス / 体長70km / 魔素量50,000(始祖龍の半分)

聖白龍アルブマ・クリスタ / 体長65km / 魔素量50,000(始祖龍の半分)

暗黒龍の使徒であるベルム・プリム / 体長20km / 魔素量12,500(始祖龍の8分の1)

暗黒龍の使徒の第1ビダであるロサ / 体長2km / 魔素量5,000(始祖龍の20分の1)

暗黒龍の使徒の第1ビダの龍人フィドキア / 体長100m /魔素量2,000(始祖龍の50分の1)


(それではこれから皆さんに見せます)

(これまで母娘で秘密の練習してきた成果を見せる時が来ましたねぇお母様)

(テネブリス・・・まだ自信が無いわぁ)

(大丈夫、この前はちゃんと変身で来たでしょ、お母様)

もじもじするスプレムスを連れだって全員の前に出る二体。


(さぁ、お母様)

(えぇ、では)

「「ギャオォォォォォォス!!」」

ヘンシーン!!と叫んでいる。

2体が発光しだす。

すると、見る見る内に小さくなり龍人より小さい10m位の龍になった。

同族からすると小さな砂粒の様な大きさだ。


テネブリスとスプレムスは飛んで皆の前に出る。


(いきなりこの大きさは難しいかもしれませんが段階を経て小さくなった方が変身しやすいと思います。まずは半分の大きさになり、また、その半分に。そして龍人の大きさを目指しましょう。最後に最近地上で進化している2足歩行の生物に似せて体型を変化させます。そして重要な事ですが、その口だと言葉を発する事が容易になります、地上の文明を真似て言語を使う事も可能なので、この事も今後の課題にしましょう)




※Dieznueveochosietecincocuatrotresdosunocero




身体を縮小させる事は、母であるスプレムスに魔素の節約と言って説明したがテネブリスには別の目的があった。

それは小さくなった者と他種を交配させて、地上の生命体を更に進化させる事。

これが第一の目的。

第二の目的は進化した生命体に魔法、魔法陣、魔導具の開発をさせる事だった。

更にテネブリスはその先へと計画を立てていた。

1、転移魔法陣と分裂分身魔法陣もしくは魔道具の開発。

2、龍族に必要な魔法の開発。魔素の集約や、結晶にする装置の開発。

3、いろいろな魔法の開発。


テネブリスは沢山の異種族の者達が意見を出し合い開発した方が多種多様な魔法が出来て、それらを発展させていくのが望ましいと始祖龍スプレムスに提案していた。

その為にも統一した言語の開発が必須だが、地上の文明を集約するのなら龍人達に任せるつもりだったテネブリスだ。


勿論、その胸に秘めた思いを隠してである。


地上の生物と比べると自分達龍族が巨大すぎるので、理性の有る生命体と同等の大きさになる必要が有ると考えていたテネブリスだ。


みんなの視線が集まる中、テネブリスは集中して最終変身と唱えた。

身体が発光し小さくなる。

スプレムスが二足歩行型に変身するにはテネブリスの見本を見なければ上手に変身できないので、まずは想像しやすいテネブリスが先行した。



発光が消えるとそこに現れたのは、2本足で立ち、手は長く伸び、尻尾が無くなり、身体は真っ白で鱗が無い。

そして黒く長い髪と、大きく黒水晶の様に輝いた黒い瞳。

そして、漆黒の角と爪だった。

勿論、前世と同じ体型と顔に変身した。

身体の凹凸感も前世と同様にしてある。

当然だが意図的にそのようにしたのだ。


一族が騒ぎ立てる中、テネブリスに負けじとスプレムスも変身を始める。


テネブリス同様に発光を始めたのちに現われたのは透き通るような白い肌に金色の長い髪だ。

そして虹色に輝く瞳と角に爪だ。

身長に肌の色は同じだ。

これも意図的に調整しての事だ。


と言うよりもテネブリスを手本に練習したので同じような肌と体型になったと言える。

しかも身体全体が”ぼんやりと発光”している。

2人で何度も練習した結果、”これ”は無意識による物としてテネブリスの一言で不問となった。それは・・・

(始祖龍として威厳が有って良いと思うわ、お母様)



スプレムスは、かなり練習していたのだ。

龍族に性別は無いがテネブリスが”この方が良い”と言い張り、スプレムスも真似をしたのだ。

2体とも身長2mほど。

大分前世に近づいてきたと満足げなテネブリス。


テネブリスは元の成龍になり皆に問いかける。

(さぁ我が一族に眷族達よ。さっき見たとおり、少しずつ始めましょう)

そう念話すると各々が練習しだした。


(さぁアルブマ、貴女はどうしますか?)

(勿論私も練習しますわ)

(私は使徒、第一ビダ、龍人を育てましたが全てお母様の計画の為です。あなたが変身の指導を出来る様に、私が付きっきりで見てあげるから。フフフッ)

(解りましたわ。お姉様)


その後、変身した後に龍人創生の方法をテネブリスから同族の使徒達に言い渡される事となる。

その事が使徒から第1ビダに伝わり真剣に練習を始めたのだった。




※Dieznueveochosietecincocuatrotresdosunocero




変身に成功してからは龍族が住む場所を変えていた。

地上の生物を真似て家を作り眷族別で住む事にしたのだ。

一族にとっては短い期間しか住まないのだが、知性ある生命体からは”巨人の住む場所”として恐れられていた様だ。




重要

前世において最愛の夫から貰った魔法大全に記載されていたのは小さく一文だけで変身の魔法と言う。

魔法大全は様々な言語で記載されており”当時の夫”は読めなかった。




成長日記

暗黒龍・・・テネブリス・アダマス(女型)・・・・体長70km、成龍。

暗黒龍の使徒であるベルム・プリム(女型)・・・・体長20km、成龍。

暗黒龍の使徒の第1ビダであるロサ(男型)・・・・体長2km、成龍。

暗黒龍の使徒の第2ビダであるテンプス(男型)・・体長2km、成龍。

暗黒龍の龍人であるフィドキア(男型)・・・・・・体長100m、成龍。


聖白龍・・・アルブマ・クリスタ(女型)・・・・・体長65km、成龍。

聖白龍の使徒であるベルス・プリム(女型)・・・・体長20km、成龍。

聖白龍の使徒の第1ビダであるオルキス(女型)・・体長2km、成龍。

聖白龍の使徒の第2ビダであるルクス(女型)・・・体長2km、成龍。


七天龍しちてんりゅう・・・セプティモ・カエロ(女型)・・・体長67kmの成龍

七天龍の使徒であるフォルティス・プリム(男型)・・・体長22km、成龍。

七天龍の使徒の第1ビダであるヒラソル (女型) ・体長2.2km、成龍。

七天龍の使徒の第2ビダであるシエロ・・(女型) ・体長2.2km、成龍。


七海龍しちかいりゅう・・・セプテム・オケアノス・・・体長67kmの成龍

七海龍の使徒であるリベルタ・プリム (男型)・・・体長22km、成龍。

七海龍の使徒の第1ビダであるナルキッス(女型) ・体長2.2km、成龍。

七海龍の使徒の第2ビダであるマル・・・(女型) ・体長2.2km、成龍。


翠嶺龍すいれいりゅう・・・スペロ・テラ・ビルトス・・・体長65kmの成龍

翠嶺龍の使徒であるオラティオ・プリム(男型)・・・体長2km、もうすぐ成龍。



龍の使徒とはそれぞれの龍が力を与え創造した生命体(性別無)

使徒の第1ビダとは、使徒が創造した最初の生命「Primero Vida」の意(性別有、人化になり交配も可)

第1ビダが創造した龍人とは、龍、使徒、第1ビダの使命を実行し他種族との交配する者

(性別有、交配のみ)

注・尺度は目安です


龍達がこの先どうなるの?

と関心を持って頂けたらブクマお願いします。

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